11.『儀式の先に炎の祭壇』
かつて「じゅういち」だったもの
古びた石造りの祭壇に置かれた髑髏を、一人の男が静かに砕き始めた。
その仕草は儀式のように丁寧で、まるで時を止めたかのように、彼の動きは空間を支配していた。
次第に砕けた粉が空中に舞い上がり、巨大な団扇で仰ぐたびに白い粉塵が男の鼻腔を刺激する。
彼はくしゃみを一つすると、喉の奥に詰まっていた異物を勢いよく吐き出した。
その光景を見守る者たちの中から、誰かが言葉を投げかけた。
「唾液をつけるとは何事だ!」
その声は怒りとも困惑ともつかない調子だったが、男は振り返ることもなく、黙々と手を動かし続けた。
見物人たちは、皺一つない顔を歪め、理解不能な奇声を発しながら、その儀式を遠巻きに眺めていた。
彼らは同じ布をまとい、統一された姿をしていた。
自ら作り上げた虚構の偶像を崇める姿は、まるで涎を垂らして餌を待つ獣のようだった。
そんな彼らに向かい、男は赤い泥を煎じて差し出した。
「これが良い薬になるだろう」
彼は低い声でそう言うと、赤い液体を飲み干すように促した。
次の瞬間、男は祭壇の硝子を砕き始めた。
続いて壁に穴を開け、その奥に潜む妄想と執着の象徴を破壊する。
その行為にはためらいがなかった。
油を撒き、火を放つ。
燃え上がる炎が城を覆い尽くし、崩れ落ちる城壁の向こうに巨大な花が咲くような火柱が立ち上った。
彼は燃え盛る街を眺めながら呟く。
「パンは焼けるが、この熱ではワインが苦しむな」
彼の目には、壮絶な炎の向こうに、消えゆく運命を受け入れた静けさが宿っていた。
それは輪廻の一端に過ぎない、滅びの儀式だったのだ。