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10.『悲愴の水滴に問う』
かつて「じゅう」だったもの
降り注ぐ水滴にどれほどの悲愴が込められているのか。
雨夜にむせび泣く女に目を向ける人もいない。
降り注ぐ雨粒は数えきれない涙の物語でもある。
水の旅は、時に豪雨となり、時に水蒸気へと姿を変えながら、感情の波と共に形を変え続ける。
彼らは誰かの怒りであり、悲しみであり、影である。
一粒ずつ、透明な涙をじっくりと観察すれば、その表面の微かな傷も見えてくる。
そして、その割れ目から染み込む光が内部で散乱し、虹のように美しい光景を生み出す。
球体の内面に記憶が埋め尽くされている。
個々の涙にはその瞬間の感情が宿っている。
それにも関わらず、私たちは忙しさにかまけてそれぞれの涙に意味を見出さない。
人々が群衆となり、国民となるとき、個々の水滴を拾い上げることは一層困難となる。
これは批判ではなく、再認識の促しである。