表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
転移666  作者: 清鳳
6/33

動きだす

「この能力を得て、金が手に入ったら絶対に欲しい物があるんだ」


金塊を無事に換金したジンとオニは、新しく用意したアジトで今後の計画を話し合っていた。


「なんや?ベンツか?マクラーレンか?それともクルーザーでも欲しいんか?」


そう返すオニは、豪華な皿に盛られた大トロを、前足の爪をフォークのように使って一切れずつ器用に口に運んでいた。


「ちげーよ!高級車とか贅沢をしたくて金が欲しかったんじゃない!俺は自由になりたくて、大金持ちを夢見てたんだ!」


「自由?」


「そう!人生の大半を金を稼ぐために費やしてる時点で不公平だろ。持ってるやつは生まれた時から、人生100回遊んで暮らせるような金を与えられる。なのに貧乏人は1日8時間以上の仕事を40年以上強いられる。俺はそんな労働の牢獄から抜け出したかったんだ!」

勢いよく話すジン。


「なるほど。金と時間の縛りからは自由になれたな。。それで、ほしい物ってなんや?」


「コレだ!!」

そう言ってジンは、ノートに描かれた一枚のページをオニに見せる。


「・・・ジンがやろうとしてることを考えれば、それは必要やな。けど、最低でも数千万は掛かるで」


「そうだろ!1億でも2億でもいいよ!オニの分も作ってやるからな!最高の品質で頼むぞ!」


「頼むぞって、わいに発注させるんか?猫やぞ?」


「オニなら遠隔でどうにでもできるだろ?そのために最新のネット環境を整えたし」


「・・・」


金塊強盗の件でオニが精密機器を扱えると知ったジンは、オニならネット送金やメールのやり取り、もしかしたらハッキングも可能じゃないかと思い、相応のスペックを搭載した設備を購入していた。


「それじゃ俺はちょっと出かけてくるから!何かあったら連絡してくれ!」


「え、おい!」


オニが否定しないのを見て、ジンはそれをYESと受け取り、そう残して出て行った。








「コツコツコツコツ」


壮麗な宮殿の廊下を進む二人の男の姿

煌びやかなシャンデリアの光が、長大な廊下の壁に装飾された彫刻を照らし出し、その光は深い影をつくり出している。

壁には荘厳なタペストリーが飾られており、宗教的な象徴や神秘的な模様が描かれている。その重厚な布地は、静かに揺れていた。


中央を歩くのは漆黒のスーツを身に纏う男、肩まで流れる長髪が綺麗に整えられている。色白で、美しくも整ったその顔に見える深い紫色の瞳には、冷酷さと自信に満ちていた。彼の足元には高級感あふれる革靴が音を立て、その足音は宮殿の広い空間に微細なエコーを生んでいる。


隣を歩くもう一人の男は、眼差しには覇気がなくどこかくうを見るように歩いていた。


宮殿の天井からは、広がる模様が織り成す神秘的な光景が目に映り、

その上には巨大神殿の屋根を支える梁が天に向かって伸びている。


廊下の終わりには、大きな扉がそびえ立っていた。

扉の彫刻には神聖な図像や聖典の一節が刻まれており、その奥には何が待っているのかを感じさせる。


「こちらでございます。イワン様」


どこか力のない声で、付き添いらしきの男が扉に手をかけゆっくりと開く。

長髪の男は無言で扉が開くのを待ち、怪しい笑みを浮かべ静かに入っていった。








深夜の静寂が辺りを包む中、少女は自分の部屋で一人、絶望の中に座り込んでいた。

月明りでほのかに照らされた銀色で少し乱れた髪に、透き通るような白い肌の幼げな顔は涙に歪んでいた。

心の中に渦巻く悲しみと苦しみが、頭の中で巡り少女の心を蝕んでいた。


『ほら、そっち抑えろ』『キャハハ丸見えじゃーん』


『お願い・・・もうやめて・・』


『便器は黙ってろよ!』『親とか警察にチクっても無駄だかんな。こいつの親大臣だしw』



複数の男女が少女を取り囲み凌辱される記憶。



「もう、いや・・・」

少女は静かに震えながら呟き、机の引き出しから鋭いナイフを取り出した。


手が震え、涙が頬を伝う。


「これで、終われる…」


少女はナイフを手首にあてがい、深く息を吸った。

そして、力を込めて一気に切り裂いた。


鋭い痛みが走り、鮮やかな血が飛び散った。

彼女は苦しげに息を吐き、意識が遠のいていくのを感じた。


「お母さん、ごめん。。」

彼女は朦朧とした意識の中でそう思った。




しかし、次の瞬間、彼女の体に異変が起こる。


傷口のあたりから光の粒子が現れ、彼女の手首を覆い、みるみると傷口が塞がっていき出血も止まっていった。


「え、なに、、これ。。あの時の光?」

少女は戸惑いながら、七夕の夜に身投げしようとした崖で突然降ってきた光を思い出していた。



傷口が修復される様をみて、少女が感じたのは希望ではなく絶望だった。混乱し、逃げられない地獄を想像し少女は更に泣いた。


「どうなっちゃったのあたし、死ぬこともできないの?」


少女は泣いて泣いて泣き疲れて眠った。













評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ