王室金塊強奪作戦②
ジン達は宮殿から公園を隔てるように真っ直ぐに伸びる一本の道の真ん中に転移した。
「ドカァーーンッッ!」
「ドカァーーーンッッ!」
辺りはすでに暗く、人の気配はない。オニが仕掛けた時限式爆弾が、時折爆発音と閃光を上げていた。
「こんな所で本当に合っているのか?」
「間違いない。反応があったのはこの真下や。地下11m付近に飛ぶで!」
ジンの懐に入っていたオニが顔を出して答える。
ジンはオニと一緒に転移することができる。人との転移は試したことはないが、両手で抱えるくらいの荷物も一緒に転移できるし、動物のオニができるなら人でも問題ないだろうと考えていた。
ジンはゆっくりと地面に手を当て、ここから真下の空間をイメージした。下へ下へと潜るように、11mという距離を正確にイメージする。4階から地上を見下ろしたくらいの位置だ。上下方向や地下へ飛ぶ実験もしていた。問題ないはずだ。そう思いながらジンは集中する。
すると、光がジン達の体を包み始める。
「キタな!着地に気をつけろよ!中はどうなってるか分からんで!」
オニの言葉に少し動揺しつつも、光はジン達を飲み込み消えていった。
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真っ暗な地下で、粒子の青い光が薄らと周囲を照らし始める。
「ドスン」
地下室の空中に転移したジンは、周囲の暗闇に焦り、前のめりで倒れるように地面に着地した。懐に入っていたオニは寸前で飛び出していた。
「いててて」
「大丈夫かいな。だから気をつけろって言ったやろ〜。ほら、ライト照らして」
オニに催促されて、ジンは装備していた軍事用ライトを点けた。
すると、ライトの明かりに映し出されたのは、地下室と呼ぶにはあまりにも大きな長いトンネルと、両脇にズラリ並べられた棚の上いっぱいに金のインゴットや金のコインなどの金塊が、眩しい光を放っている姿だった。金塊の並べられた棚は延々と奥まで続き、ライトの明かりではどこまで続いているのか分からないほどだった。
「すげぇえぇえ〜」
ジンとオニは驚嘆と至福の喜びを感じ、目を黄金に輝かせていた。
「これ、いったい幾らあるんだ?!」
ジンの問いに、少し鼻息の荒くなったオニが答える。
「1キロのインゴット一個で約1200万円、それがこんだけの数やと…少なく見ても数百兆円、下手したら1000兆円はいくで!」
「1000兆円ッッ!?」
余りのスケールの大きさに、実感できずに立ち尽くすジンだが、その両手とポケットにはすでに金塊が隙間なく入っていた。
「こんな量の金塊、さすがに置き場所考えてないぞ」
戸惑いながらも喜びを隠せないジンにオニは答える。
「今は全部持ち帰る必要はないんちゃうか。とりあえず目立たへん所から必要な分だけ持って帰るで。位置情報も分かったことやし、こんだけの量が多少減ったところでしばらく気付かれんやろ。折を見てまた今度全部運び出すで」
「アイアイサーッ!」
そう言って意気揚々にジンとオニは、棚から少しずつ金塊を集めて次々と転移で運び出していった。
数百キロの金塊を運び出した頃、時折聞こえる地上からのオニの時限式爆弾の音が鳴り止んでいた。
「そろそろ時間切れや。すぐに警備やら消防やらがここら辺を包囲するぞ。この地下にも来るかもしれん、誰かに見られる前にズラかるで!」
オニの言葉に、ジンは名残惜しそうに、ポケットと両手いっぱいの金塊を抱えてオニと一緒に転移した。
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オニの言葉通り、爆発が止んでしばらくすると消防や警察車両が雪崩れ込んできていた。すでにマスコミと思われるヘリが上空を飛び回り、あちらこちらで立ちこめる黒煙の物々しい雰囲気が宮殿の周辺を包み込んでいた。
盗難された金塊を含まずとも、その被害総額は数百億円にのぼった。世界一豪華と言われた宮殿の姿は消え去り、多くの謎を残したまま「バラの宮殿連続爆破テロ事件」として瞬く間に全世界のトップニュースとなった。
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「金塊♪金持ち♪金塊♪金持ち♪金塊♪金持ち♪ダーッ♪!!」
「金塊♪大トロ♪金塊♪大トロ♪金塊♪大トロ♪ニャーッ♪!!」
家に戻ったジンとオニは部屋の真ん中に集められた金塊の周りをグルグルと、自作のリズムに合わせて謎の歌を歌いながら作戦成功の喜びを分かち合っていた。
「やっぱすげーよオニ!作戦大成功!全部計画通りじゃねーか!」
「へっへーん♪ジンの転移能力さえあれば、このくらいは余裕や!感謝の気持ちは大トロで示してや~ハッハー♪」
流石に嬉しいのか、珍しく浮かれているオニ。
「それにしても、あんな装置の使い方よく知ってたな」
「説明書みたらだいたい分かるで。あとは調べたい地中の範囲から計算して爆弾の位置と爆発の規模を調整し、一気に揺らすだけや」
「簡単に言うけど、そんな計算、俺には一生できそうにねーよ」
一般人とはかけ離れたオニの高スペックにジンの予感は確信に変わりつつあった。
「次はこの金塊を現ナマに換えないとな!」
「それに関してもワイに考えがある。もちろん裏ルートで、最初の接触はジンにも危険が生じるかもしれんけどな」
そう語るオニの言葉は、金塊を換金してくれる極道のギンジさんとの出会いの始まりになるのであったが、それはまたいずれ話すことにする。