王室金塊強奪作戦①
「やっぱ最低限の武器が要るよなー。マグナムとー、連射式のアサルトライフルとー、消音銃とー、スナイパーライフルも欲しいなー!手榴弾や催涙弾も外せないよな!」
「おいおい、何するつもりやねん。スナイパーライフルなんか素人が当てられへんやろ」
ここは深夜のアメリカ。転移した銃器売り場の中で、ジンとオニは必要な道具を集めていた。
犯罪を犯す以上、法は自分達を守ることはない。それに、転移能力者と人語を話す猫なんて、いつヤバい組織に狙われてもおかしくないからだ。
「いいじゃねーかー!何処かで使うかもしんねーし、何回も盗みに入るのはリスクだろ?」
そう言ってジンは手当たり次第、銃器、火薬、弾薬、防弾スーツなどの装備を両手いっぱいに抱えて、次々と転移していく。
家に戻ったジン達は、家賃3万5千円のアパートの室内にビッシリと銃火器と装備が並べられていた。
「壮観だなーっ!」
「こんなん警察に見つかったら1発でアウトやで」
「隠し場所は用意してるさ。日本には誰も住んでない空き家やゴーストタウンなんていっぱいあるからな」
「そんなんで大丈夫かいな」
「安心しろよ。金塊が手に入ったら南の島で別荘でも作ってやるからよ」
そう言ってジンは盗んだ装備の大半を別の所に転移させた。
「よし!作戦も練った。武器も揃えた!後は決行時刻を待つだけだ!」
「ところで、作戦って?どうやって金塊の隠し場所探すんや?」
当然の疑問に、ジンは意気揚々に答える。
「国王の寝室に忍び込んで、適当に痛めつけて金塊の場所を吐かせる!それが1番手っ取り早いだろ!」
その言葉に唖然とするオニ。猫ミームで見た顔だ。
「そんなことしたら、すぐに包囲されて無理やり転移で逃げることになるやろ!」
ちょっと怒っているオニ。
「ええか!転移能力の存在はなるべくバレへんようにするべきや。王室の金塊が何者かに盗まれたと、転移能力者によって盗まれた、とではこれからに大きく違ってくる」
「じゃあ、どうすんだよ」
「ワイに考えがある。一石二鳥、いや三鳥かな。ちょっと派手に行くけど、かまわへん?」
「何する気だ?」
ちょっと楽しそうに悪そうな笑みを浮かべて返すジンに、オニは作戦の内容を伝え始める。
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「ゴォ〜〜」(風を切る音)
ここはヨーロッパのバラの宮殿と呼ばれている場所。その遥か上空である。
現地時間午後7時前。まだ日が沈みきっていない薄明かりの空に、ジンの姿があった。パラシュート無しでダイブするその姿は、まるで壮大な冒険を始めたかのようだった。
「ふぉおおーーっっ!!すっげぇーーっー!!」
真下に見える宮殿とその周囲を囲む庭園、そして公園の景色に、ジンは初めてダイブした高揚感と絶景を楽しんでいた。それと同時に、今からその景色がなくなることを惜しんだが、人の血で染められた栄華だと思えば躊躇はしなかった。
「さぁ、パレードの始まりだ!」
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「ドカァアーーンッ」
突如、宮殿の頂上で爆発が起こり、破片が飛び散った。
周囲の人々は悲鳴をあげる者、爆発を見に近付く者、スマホで撮影を始める者、反応は様々だったが、次の瞬間から状況は一変した。
「ドカァァアーンッ」
「ドカァアーーンッ」「ドカァァアーンッ」
「ドカァアーーンッ」
「ドカァァアーンッ」
宮殿のてっぺんの屋根から始まった爆発は、段発的に付近の庭園や公園のあちらこちらから大きな音と光を上げて爆発していった。
ジン達があらかじめ人けの少ない場所に仕掛けた爆弾だ。
近づいていった者たちも、次々に起こる爆発音と閃光に恐怖して逃げていく。
「ドカァアーーンッ」「ドカァァアーンッ」
「ドカァアーーンッ」
「ドカァァアーンッ」
段発的に、不規則に、それは次の爆発がいつ起こってもおかしくないように思わせる様だった。
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「絶景だなぁーっ!!」
満面の笑みを浮かべるジンは、自分が上空からミサイル攻撃しているような気分になっていた。
「おいジン、遊んでる場合ちゃうで!人がいなくなったところから次の爆弾をセットして行くんや!」
耳に付けた無線からオニの声がする。
「分かってるって〜」
そう言ってジンは空中で光の中へと消えていった。
宮殿内部や周辺は大混乱になっていた。
次々と段発的に起こる爆発に、警備も対処のしようがなく、爆発に追われるように人々は外へ外へと逃げていった。
「ドカァアーンッ」
「ドカァアーンッ」
周囲で爆発が起きる中、人の気配がなくなった所から、ジンは新たに爆弾と装置を仕掛けていく。
オニに渡された図面通りに次々と転移し、指定された場所に爆弾を仕掛けていった。
周囲一帯に人がいなくなり、最後の爆弾が仕掛け終わった後、転移でオニの居る仮アジトに戻った。
「これでいいんだな?」
「バッチリや!ほな行くで!」
オニは左前足を大きく振りかぶって、赤いボタンをタップした!
「「ドドドドドドドドッカァアアーーンッッ」」
仕掛けた無数の爆弾が一斉に爆発し、周囲は大きな爆発音と振動と衝撃が走った。燃え上がった木も含めて辺り一体で黒煙が舞い上がる。その姿は王国の栄華の終わりを物語っているようだった。
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「ヨシッッ!!分かったで!!」
「ホントか?!」
オニの言葉に驚きながらも喜ぶジン。
「間違いない!ここに大きな地下室と、重金属のような反応がある!」
そう言ってオニはモニターに映るポイントを指差した。
どうやらこの装置は、地面に大きな振動を与えることで、その反響を調べ、地下の状態を調べることができるらしい。同時に大きく広範囲に爆発させたことでも、広範囲の地下情報を調べることができた。宮殿内にあるとは限らないからだ。
装置を使いこなすオニを見て、ジンはオニが与えられた能力は高い知性なんじゃないのかと感じていた。
「オニ、お前すげーな」
「喜ぶのはまだ早いで!褒めるんは金塊を持ち帰ったあとや!」
オニの言葉に笑みを浮かべるジン。
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「じゃあ、お宝とご対面といきますか!」