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転移666  作者: 清鳳
33/33

夜叉丸1号

「・・・このスーツがあれば、もう誰にも俺を止める事は出来ない!」


拳を握りしめながら、ジンは確かに感じていた。

これなら、あの時の無力さを味合わずに済む”と。


―――そう確信したとき、ジンの脳裏にふとよぎったのは、数か月前のあの日だった。

王宮の金塊を奪い、すべての始まりに立ったあの日のこと


———


「この能力を得て、金が入ったら──絶対に手に入れたいものがあるんだ」


――ジンはノートに描かれた一枚のページを、無言でオニに差し出した。


そこに描かれていたのは、彼が構想したスーツ──その名も《夜叉丸1号》の草案だった。


ページいっぱいに、鉛筆で走り書きされた人体のシルエット。

全身を覆うように、パーツ名や素材のメモが矢印で散りばめられている。


「頭部:耐熱&防弾。バイザー、赤く光るとカッコいい」


「胸部装甲:セラミック?いやチタン合金? → 強い方にする」


「ワイヤー射出装置:射出して敵を捕え、超速で巻き取る仕様。→ 電撃ビリビリ」


「背面ブースター:転移後に空中で静止。上空から敵を叩く」


「スモーク内蔵:煙と一緒に現れたら最高」


「腕部:強化パンチ。拳は鋼を砕く超合金、掌からビームも出したい!」



描線は荒く、寸法もデタラメだ。

だが、ページのすみずみまで──命を賭ける者の熱と恐れが滲んでいた。


中でも目を引いたのは、中央に赤ペンで殴り書きされた文字。


《銃弾も刃物も通さない無敵スーツ》


その言葉だけが、四角で囲われ、太く何度もなぞられていた。


オニはページをじっと見つめ、小さく呟いた。


「・・・ジンがやろうとしてることを考えれば、コレは必要やな。けど、最低でも数千万は掛かるで」


その声には、否定ではなく、覚悟を共有する者の響きがあった。




——ジンの草案をオニが具体的に設計図へと書き上げ、あらゆる闇ルートを駆使して大金を注ぎ込み、遂に出来上がったのが《夜叉丸1号》だった。


「ダッサい名前やな」


「うるせー!カッコいいだろうが!」


———


そして、今──


「次はそのビルの屋上、南西の角や。その位置からやと、上に15.3m、南に7m。」


オニからの通信がジンに流れる。


「南ってどっちだ?」


ジンの問いに少し呆れたようにオニが返す


「…窓に向いて左の方向や」


オニの指示を受けてすぐにジンは飛んだ。



2人目——屋上にいたスナイパーは、通信から聴こえたさっきの悲鳴から、ジンがスナイパーを攻撃しているのが分かっていた。

そのため、銃を持って周囲を警戒していた。


そして屋上に現れた黒い影に、すぐに気付く。


「——来たッ⁉︎」


スナイパーは怯えながら、ジンにライフルを構える。


「どうして位置が分かるんだッ?」


恐怖にひきつった顔を見せながら銃を向けるスナイパーに対し、「さぁな」とだけ答え、じりじり詰め寄るジン。


更に焦りを募らすスナイパー。


「化け物がッ」


「パァンッ」


引き金を引くスナイパー。


ジンは避けようともせず、その銃弾は頭部をかすめて、「キンッ」という金属音とともに弾かれていく。


「ッひぃ」


恐怖のあまりに声を漏らし、ライフルを捨て、背を向けて逃げ出すスナイパー。


——次の瞬間、一気に詰め寄ったジンの拳が振り下ろされる。


「ドゴォッ」


スナイパーの体が屋上の床に叩きつけられ、鈍い音を放つ。


「ッぐはぁっ」


呻き声とともに、動かなくなるスナイパー。


「これで2人目。…あと何匹だ?」


「補足できただけでも、後3カ所。次は向かいのビルの屋上にある塔屋の上や。」


「——了解」とジンはまた姿を消していく。



ジンの強襲を受けた部隊は、次第にパニックへと変わっていく。


一人、また一人と沈黙するスナイパー班。

通信からは断末魔と衝撃音が断続的に混じるだけ。


「どうしたッ⁈ 一体何が起こってる⁈」


次々と切れる回線に、指揮官・天羽は怒号を上げる。

だが誰も正確な状況を報告できず、ただ恐怖と混乱だけが広がっていた。


──まるで“何か”に狩られているように。




一方その頃、アジトのモニタールーム。アヤネが不思議そうに呟いた。


「ねぇオニ、なんでスナイパーの位置が分かるの?

アーシの千里眼でも見つけるの時間かかるのに……」


「音や」

オニは軽く指を鳴らしながら答えた。


「ワイがスーツに取り込んだ《音響追尾システム》。

複数のマイクロセンサーをスーツの各所に仕込んであってな、

発砲音の時間差から三次元座標を逆算して割り出す。名付けて──」


胸を張って、指をピンと立てる。


「〈ネメシス・サウンド〉システムや!」


アヤネは真顔で返す


「…よく分からないけど、名前はダサいわね。」


「はぁ?カッコええやろが!ネメシスやぞ!」


「なんか厨二病くさい…」


「かーッ!これだから雌はあかんのや」


白の雄猫のオニは静かに嘆いた。





その頃、施設の屋上にいたテンラが、無線を手に取っていた。


「テンラだ。天羽、聞こえるか?」


テンラからの通信が、 車で向かっている天羽に届く。


「無事だったか! いったい何が起こっているッ?そっちの状況は?!」


天羽の焦った声が早口に通信に流れる。


「転移野郎が鋼鉄の装甲を身にまとい、空から爆弾ぶちまけて地上部隊は、ほぼ壊滅。 スナイパーのライフルは歯が立たねぇ。一人ずつ、狩られてる。」


爆音の残響のなかでも、テンラの声は冷静で、妙に静かだった。


「地上部隊が壊滅ッ?! ――それにライフルが効かないだと?!」


天羽の声が揺れる。これまで想定されていた“戦闘”の枠から、完全に外れていた。


「ああ、スナイパーどもが全滅する前に退かせろ。 通常の兵器じゃ・・・多分アレは倒せねぇ」


天羽は言葉を失う。

重装甲。空襲。転移能力。

――そんな敵をどうやって止める?


「――お前はどうするつもりだ?」


「決まってんだろ。 ここで野郎が降りてくるのを待つ。」


「...やれるのか?!」


「俺に殺れない奴なんていねえよ。…野郎が降りてきたら、逃げられねぇように仕掛け発動させろ。」


「――それだと、お前の能力も制限されるぞ?!」


「俺の力は、内部型だ。 外に干渉する能力とは違って影響を受けにくい。 問題ねえよ。」


「——分かった。 私もすぐそちらに向かう」


通信を切ったテンラは、「てめえが来ても意味ねえよ」とテンラは、嘲笑うようにつぶやく。


「降りて来い。次は逃さねーぞ」


爆炎に包まれた場内を屋上から見下ろしながら、テンラは――前よりも獰猛な、獣の笑みを浮かべていた。




「コンコンコンコンッ‼︎」


強引なノックが、総理執務室の扉を揺らした。


「……入れ。」


「失礼しますッ!」

勢いよく扉が開かれ、慌てた様子の秘書官が駆け込む。


「一体どうした?」


「たった今、例の施設が襲撃を受けたとの報告が入りました!正体は不明ですが、敵戦力は不明数。急いで総理に……!」


(来たかッ…ジン)と大槻は内心、直ぐに勘づいた。


秘書が驚いた顔を見せる間もなく、大槻は即座に命令を下す。


「第2級特別警報を市内に発令。警察を総動員して施設周囲の住民を避難させろ。半径500メートル以内は立入禁止区域だ。誰一人、近づけるな」


その声は明確で、どこか待っていたかのような冷静さを湛えていた。


「……襲撃犯の対応は、どうなさいますか?」


「それは天羽君に任せてある!一般人への被害が出ない事だけ最優先に考えて行動するんだ。いけッ!」


「かしこまりました!ただちに手配いたします」


秘書官は急かされるように執務室から出ていく。


「これで無用な目撃者も減るだろう。」


大槻は机に肘を立て考える


「……国のトップが、テロリストに賭けるなど滑稽だな。

——さぁ、舞台は整えたぞ。ジン。後は君次第だ。」


総理であるにも関わらず、自らの仕掛けた政府組織への挑戦。

決意と不安の眼差しが大槻を包んでいた。



ジンはオニの指示を受けて、 次のスナイパーを狩ろうとしていた。


だが、転移した先にはスナイパーの姿は見当たらず、ライフルの脚と薬きょうが転がり、 焦げた金属の匂いだけが漂っていた。


「いねえ・・・」

警戒と落胆が交じるような声が、通信越しに静かに漏れた。


「逃げたな。 まぁ当然やな」


「そいつ、いまライフル持って階段走って降りてるわよ!!追う?場所教えるけど?」


アヤネが千里眼で追跡していた。


「いや、撤退したならもういい。一一次は下の部隊を片付けに行く。 まだ残ってんだろ?」


「ええ。まだチラホラ。……それに、いるわよ。あいつも」


「あいつ?」


「アンタをぶった切った奴」


ジンの表情が一変する。


「テンラか...ッ!」


先の襲撃で敗走を余儀なくされた相手・・・。 斬られた肩の傷が疼く。


「あの野郎。」







「ぶっ飛ばしてやる。」


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