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転移666  作者: 清鳳
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戦いの跡

施設内の警報音が鳴りやまぬ中、 バタンッ!と施設長の部屋が勢いよく開かれる。


「失礼します! 緊急事態です!」

警備を行っていた職員が息を切らして入って来る。


「そんな事は、この警報を聞けばわかる! 何があった?!」

初めての警報音に施設長のマトウも焦っていた。


「侵入者です! 管制室と監視室の職員が襲われて負傷! それと…」


報告を聞いたマトウの目の色が変わり、職員が伝えにくそうに一瞬、言葉に詰まる


「それと何だ! 早く言え! 」


「千里眼の能力者と、地下に幽閉していた怪力の男が姿を消しました」


「なんだと?!」

報告を聞いたマトウの血の気が引く。

(貴重な被験体を逃しただと?なんたる失態!こんな事、上にどう報告すれば・・・下手すれば私が処刑される・・・)

マトウから冷や汗が流れる。


「侵入者はどうしたっ!テンラが地下に向かったはずだ!何をしている⁈」


「それが・・・」


その時、「俺は、ここにいるぜぇ」とテンラが部屋に入って来る。


「テンラ! 何をしていた!?」


「何って。どんくせーテメーらの代わりに侵入者を撃退してやったんだろうがよ」


テンラはズカズカと中央へ向かいソファーに腰掛ける。


「戦ったのか?! それで、侵入者と被検体は?」


「あと一歩で逃げられたよ。 奴は転移の能力者だ」


「転移…だと?———そんな、バカげた力…」

マトウは驚きを隠せずにいた。


「俺の目の前で何度も使ってたぜ。最後は跡形もなく消えていった。だからもう探しても無駄だ。分かったら、このウルセー警報をさっさと止めろ」


「・・・ぐっ・・・」

マトウの表情は、焦りと苛立ちに包まれていた。




転移でアジトに戻ったジンとオニ。だが、ジンは深い傷を負い、張り詰めていた緊張の糸がぷつりと切れた瞬間、その場に崩れ落ちるように意識を失った。


それからジンは、一週間もの間、目を覚ますことはなかった。


8日目の朝。ジンが目を覚ました時、すぐ隣でライラが眠っていた。


「イテテっ」

ジンが体を起こそうとするも、テンラの一撃は想像以上に深く、今も胸には包帯が巻かれていた。


左腕を使い、何とか体を起こす。静かな寝息を立てるライラの姿が妙な安心感を与えてくれた。


だが、ジンは施設での事を思い出す。


残酷な政府の実験。

救えなかった少女。

テンラの圧倒的な戦闘力。

怒りのままに突っ込んだ自分の甘さ。

無敵だと思ってた自分の能力がまるで通じなかった。

悔しい思いと後悔の念がジンの胸をさす。



その時、「あっ!やっと起きたー!」

アヤネの声が聞こえた。


「おにぎり〜!ジン起きたわよー」


「おにぎり言うな!オニでええわい」

オニが悪態とともにトコトコ駆け寄ってきて、ベットに飛び乗る


「おはようジン。気分はどうや?」


「ああ悪くねえ。右肩はまだ痛いけどな。」


「そりゃそうや。あと2週間は安静や」


「あと2週間…。俺、どれくらい寝てたんだ?」


「1週間まるまる寝てたわよ。その間、その子がずっとアンタの面倒見ててくれたんだから、感謝しなさいよね」

アヤネが隣で寝てるライラを見ながらジンに伝える。


「そうか…。」

ジンはライラに視線を移し、ライラが握りしめるように持ってたオリーブのペンダントに手を添える。


「ライラに救われたな…。」


その時、ライラが目を覚ました。

ゆっくりと起き上がるライラにジンは優しく微笑みかける。


ジンの姿を見たライラは、みるみると目に涙が浮かんでいった。


「ジンさんっ!!」

ライラはジンの体に飛びつくように抱きついた!

「良かったぁ、よかったよぉ。。。」


「イテテ。———心配かけたな。約束通り、ちゃんと帰って来たよ。ライラのお守りのおかげだ。」


「うん。信じてたよぉー。」

ライラはジンの体に顔を埋めながら泣いた。


ジンはしばらく、ライラを安心させるように、頭を撫でていた。


ライラは顔を上げ、手で涙を拭うと、「ジンさんお腹空いてない?」と尋ねてきた。


「グゥ〜ッ」

ライラの言葉にジンの腹の虫が返事をした。


ライラはニコッと笑って「早く治るように美味しいモノたくさん作ってくるね」と明るく返し、どこか嬉しそうに台所へと向かっていった。


その様子を見届けたあと、ジンはアヤネを見て口を開く。

「あれから施設はどうなった?」


「アンタが帰ってきた後、割とすぐに騒ぎは落ち着いたみたい。でもあそこは解体されたみたいね。何台もの車が出入りして、今はもぬけの殻よ。」


「あの少女は?」


「分からない。あの子の姿は、ずっと視えないし、車が多すぎてどれがあの子を乗せたのか…」

千里眼の能力でも視えない。研究施設にはそれを封じる装置が既に開発されていた。


「…そうか」

アヤネを責める事は出来なかった。ジンは、あの時救えなかったのが、自分の力不足だったせいだと痛感しているからだ。


「あの時、俺が冷静に行動してれば…ッ。やりようはまだあったのに…ッ」

ジンが悔しさを漏らす。


「チャンスは必ずくる。ワイとアヤネで絶対に居場所を突き止めたる…。だから今は体を治す事に専念しろ」


「・・・」

オニの言葉にジンの返事は無かった。





暫くして、「あっ!」と何かを思い出したかのようにジンの口が開く。


「どないした?」


「怪力のおっさん!アマゾンに放り出したまんまだ!」

ジンが暴走する能力者を仕方なく密林に転移させたのを思い出す。


「やべーな!1週間も放置しちまった。おっさん生きてるかな…」


「ああ…それなら心配ないわよ。」

アヤネが何か知ってるように口を開いた。





その頃アマゾンでは。


密林の奥、木漏れ日の中。

そこには、野鳥を肩に乗せて、静かに瞑想しているようなおっさんの姿。

周囲には見慣れない鹿や小猿まで寄って来て、まるで“密林の仙人”。


「ふぅー。今日は何を食べようかな。」






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