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転移666  作者: 清鳳
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能力者研究施設編⑥

「ちょっと落ち着けジン。無闇に突っ込むな!」


ジンは地下へ向かっていた。転移しながら最短で男の示した場所へ向かっている。その肩にしがみつきつつ、ジンを諭すようにオニが話しかける。


「俺は冷静だ。」

ジンの表情は硬直したままだ。冷たく凍ったような怒りを秘めている。


「嘘つくな!さっきの男が“檻の部屋“って言ってたのも気になる…能力が使われへん可能性が高いんやぞ」


「だったらその部屋の装置をぶち壊すまでだろ。武器はある」


ジンの返した言葉にオニの言葉が詰まった。

今のジンは止められない。短絡的で破壊的だが、それも一つの方法だと思っていたからだ。


地下一階に辿り着くと、男の言った通り、通路は一本しか無かった。広く長く伸びており、壁際には一定の間隔で通路を遮断させるような装置が付けられている。


厳重すぎると感じたオニは、この先で囚われている能力者が施設にとっても特別であると理解した。

(恐らく能力は不死身、若しくは再生。——どんな実験でも耐えられるなら、研究者にとってこれほど都合の良い存在はない。)オニは心の中でそう思ったが、今のジンの前で口に出す事は出来なかった。


ジンは既に銃を右手に構えていた。視界の先まで転移しながら通路を進む。


———しかし、一つ目の角を曲がった時、その男は居た。


赤と黒を基調にした派手なロングコート。

腰で太いベルトを締め、そこからコートが垂れ下がるように広がっている。

生地には獣を思わせる荒々しい模様が入り、動くたびに揺れ、野生の猛獣のような危険な雰囲気が漂わせた男は、壁際にもたれ掛かるように腕を組み立っていた。

そして、その手には刀を携えている。テンラだ。


ジンとオニは直ぐに気付いた。アヤネの言っていた男だと。

余りにも異質な気配にジンが立ち止まる。オニはジンから飛び降りて全身の毛を逆立たせていた。


「ジン、こいつヤバいぞ!」

猫の野生の勘がテンラを激しく警戒する。


ジンに気付いたテンラは壁から離れジンの方を向く。

「やっぱ、ここに来るよなぁー。待ってたぜぇ。侵入者。——ああ⁈なんだその猫」

笑みを浮かながら、鋭い視線がジンに突き刺さる。


「何モンだお前。俺は急いでるんだ!邪魔するなら容赦しねーぞ」

ジンはテンラに向けて銃を構える。


「おーおー、おっかねぇ!何が出来んのか、見せて見ろよ!」


嘲笑うかのような言葉に、ジンは構えた銃の引き金を引いた!


パシュパシュンっ!!


ジンから放たれたゴム弾がテンラに向かって真っ直ぐ飛んでいく!

——だが、テンラは体を逸らし鮮やかに躱した!


「ッ避けた⁈」

男の動きに驚き、ジンは目を見開いた。


「ゴム弾か…随分と、お優しい侵入者だなぁ」


余裕の笑みを浮かべながら、左手に持っていた刀を鞘から抜いていく。


「舐めてんじゃねぇぞ」


ジンは銃を持ち替え、実弾の入ったマグナムを握りしめ、再びテンラに向けた。

実弾を人に向けるのは2度目。——ジンの右手は少し震えていた。それでも、震えを抑えるように左手を添えて、力強く握りしめ狙いを定める。


テンラは銃口を向けられているにも関わらず、平然と間合い詰めていく。


当たれば頭が吹き飛ぶ、ジンは怒りの中でも葛藤していた。だが、目の前に迫る狂気がジンに引き金を引かせる。


バンバンッ!!


放たれた2つ銃弾!!

——だが!テンラは頭を逸らして1発目の銃弾を避け、右手で持っていた刀を振り下ろし、もう1発の銃弾を切り捨てた!!


「なッ⁈」

人間離れした動きをするテンラにジンは驚きを隠さず硬直する。


「能力者や!」

戦闘を警戒して、ジン達から距離をとっているオニの言葉が通路に響く。



——その時!テンラが地を蹴り、一気にジンへと間合いを詰める!!


「速いッ…!」

ジンは慌てて転移を発動しようとする!


猛烈な速さでジンに近づいたテンラが、ジンの体を間合いに入れた瞬間、ジンの体目掛けて刀を振り下ろす!

…だが、刀は空を切り。テンラの視界には誰もいない地面が映っていた。


「…消えた…?。いや…」


テンラが顔を上げ通路を見ると、そこから10メートルほど離れた場所にジンが銃を構えていた。


「瞬間移動…⁈いや、転移か・・・!面白れぇ!!」

テンラは目をぎらつかせながら笑っていた。

「転移能力か!凄えなぁ、おい!——それならあのバケモンを逃がせれたのも納得だぜぇ!」


攻撃が当たらなかったのにも関わらず、嬉々とした言葉を放つテンラに、ジンは不気味さを感じていた。


「お前も能力者なのか!何の能力だ⁈何で俺達の邪魔をする?」

間一髪でテンラの刀を避けたジンは、額に汗が流れていた。能力者であるなら囚われているはず、なぜ自由に動き回っているのか、なぜ逃げないのかジンには疑問だった。


「俺が何の能力かって?当ててみろよ…それが醍醐味ってモンだろ!」

テンラは言い切ると同時に、再び地を蹴りジンに向かってくる。


「チィ…ッ」

まるで殺し合いを楽しんでるテンラに、ジンは狂気を感じていた。


バンバンバンッ!!


ジンは向かってくるテンラに3発の銃弾を放つ!———しかし、テンラは構えた刀の切先を動かして3発とも弾き、ジンに距離を詰めていく。


だが、刀の間合いに入る直前には、ジンは再び転移で距離を空けていた。


「転移で逃げて撃つだけかぁ?そんなオモチャじゃあ…俺はヤれねーぞ⁈」


テンラは刀の柄を軽く肩にポンポンと当て、ジンを挑発するように笑っている。


「ああ…そうみたいだな!」


ジンはポーチに手を突っ込んだ。

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