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転移666  作者: 清鳳
17/33

能力者研究施設編①

「今回はワイも一緒に行くで」


「危なくねーか?いつもみたいに遠隔で指示した方がいいんじゃね?」


「いや、今回は制御室の造りがどうなってるか分からんからな。USBが簡単に刺せるような制御盤になってるとも思えん。」


「確かに、それだと俺じゃ分からねーな。」


オニとジンは研究施設潜入の前の作戦の最終打ち合わせを行なってる。


ライラは机に向かって木のペンダントに糸を通してる。何かを作っているようだった。


「それともう一つ、潜入するにあたってやる事がある」

オニは前足の指を一本立てて改まったように話す。

「なんだよ。」


「それは…」




〜30分後〜




「ブッ、ハーッハッハッハハハッ」

ジンの爆笑する声がする


「オニちゃん可愛い!」


そこには真っ白だった毛並みが、黒彩スプレーによって真っ黒に染まったオニがいた。

その姿はまるで、夜の闇に溶ける影──でも、妙にツヤがある


「白は目立つからな、最低限これくらいしとかんとな」


「ハーハッハ、ヒィハッハハハ…腹が……くるしい……」


「お前、笑いすぎやぞ!」


「…ワリィワリィ。フフッ…フゥー。」息を整えるジン。


「とにかく、これで準備はできた。」

オニは猫サイズのリュックを背負いながら話す。


「ああ、あとは倉庫で武器を揃えるだけだ。」


「ほな、行こか!」


「ちょっと待って!」

ライラが声と共にジンに駆け寄ってくる。


「どした?ライラ」


「2人とも、これから危ない事するんでしょ?・・・だから、コレ。」

ライラは少し照れくさそうに木のペンダントをジンに差し出す。


「これは…」

手に取ったジンはペンダントを見つめる。


「オリーブの木か」

横で見てたオニが声をかける


「わたしの故郷に伝わるお守り。ジンさんいつも無茶するってーーー無事に帰って来れるように、お願い込めたから」


ジンはライラの無垢な優しさに、心温まったように笑みをこぼす。


「ありがとうな」

ジンはすぐさまペンダントを首から下げ、服の中に大事にしまい込んだ。


「絶対帰ってきてね」

ライラの祈るような声に、「ああ。必ず戻ってくる!」とライラの頭を優しく撫でた。


「行くぞ。オニ!」

ジンの目は、より一層強く輝いてるように見えた。

「オウ!」

オニはジンに飛び乗りると、静かに転移して行った。










月明かりが陰る曇天の夜。

政府の研究施設の制御室に、音もなく二つの影が現れた。

ジンは転移能力を使うごとに、その精度は増していた。

あたりは静寂に包まれており、制御盤が稼働するファンの音だけが静かに鳴り響いていた。



「ここで間違いないか?」


「間違いなさそうや。マオの情報は正しかったみたいやな」


マオの紙には施設内の構造が書かれていたが、能力者が捕えられてる場所までは記されていなかった。


ジンは素早く辺りを見渡し、銃を構える。すぐ隣には、黒光りするスプレー染めのオニが着地していた。


制御卓の前には男がひとり。コーヒーを片手に、ゆるく背を向けている。


ジンは一歩踏み出し、ポケットから取り出したスタンガンを手のひらに隠し、足音を立たず背後に近づく。


──パシッ!


「ぐっ……!」


電撃が男の首筋に走る。反応する暇もなく、男は机に崩れ落ちた。


「うまくいったな。」


「まだや!もう一人、ドアの向こうにおるぞ。」


感度のいい猫であるオニの警告にジンがうなずく。


ガチャ──


ドアがわずかに開いた瞬間、向こうの男が眉をひそめる。



「……おい、何の音だ──」


──パシュッパシュ!


ジンの撃ったゴム弾が男の腹にヒット。呻き声と共に、男がその場に倒れた。


辺りがまた静寂に包まれる。


「もういないか…?」


「…いけそうやな。」

警戒を解いたオニはピョンと制御卓に飛び乗り、猫サイズのリュックを下ろして中から機材を取り出した。


ジンは床に倒れた男の手足を、テープで縛り上げた。

「意識が戻って暴れられたら面倒だからな……」

最後に口に布を詰めて固定し、男を壁際に転がすと、監視卓の前に向き直る。


「ちょっと時間もらうで」

そそくさと作業を始めるオニを見て、ジンは制御室にあるカメラモニターに視線を向ける。


施設の外から侵入者を監視するモニター。入り口。屋上。通路など、様々な所を映していたが、肝心の能力者が映っている気配は無かった。


「どうやら能力者の情報だけは、この施設内でも更に機密のようやな」

キーボードを叩き、マウスを動かしながらオニは告げる。


「見つかりそうか?」


「場所の断定は出来んけど、こんだけ情報あれば大体の推測はできる。」


ジンはモニターの一つを見つめ、眉をひそめた。


「おい、これ……なんか動いてないか?」


映っていたのは、薄暗い通路の映像。誰もいないはずのそこを、床を這うように移動する影。


「ロボット……?」


ジンが目を凝らすと、それはまるで四足歩行の小型動物のようにも見える、黒光りする機械だった。


「警備用ドローンやな。さすが政府の最高機密施設。赤外線と音響センサー搭載。近づいたら即バレや。」


「チィ。面倒だな…」

ジンは悪態を吐きながらも、手持ちの装備でドローンを無力化する方法を考えていた。


「よし、カメラ映像のハッキング完了。これで外部からは異変に気付かれる事はないやろ。」


「で、能力者の居場所は?」


「あせんな。この建物、通路の作り、警備の巡回からして……、恐らくココか、ココや。」

オニはモニターに映し出された施設内のマップから2つのポイントを指差す。


「転移で飛べそうか?」


「いや、流石に距離感が掴めない。もう少し近づかないと変な所に飛んじまう。」


「仕方ない。直接、近づくしかないな。ワイがナビする。こっからは別行動や」


「分かった。どこに行けばいい?」


「まずは・・・」









薄暗い施設内の通路は、無機質な静けさに包まれていた。

床は金属製で、定期的に並ぶ白い照明が足元を不気味に照らしている。


その静寂の中、カツン、カツン、と硬質な音が響いている。


四足歩行のドローン。

光沢のある黒い装甲、無音に近い滑らかな動き。

脚部は関節が逆に折れ曲がった構造をしており、まるで昆虫か、捕食獣のような不気味さがある。


頭部に当たる部分には、二つのセンサーライト。

それが不規則に瞬きを繰り返し、通路の奥へとスキャンを走らせていた。


「あれが警備ドローンか。」

ジンは通路の角から顔を出し、奥の様子を伺っている。


「その奥の部屋や。いけるか?」

無線からオニの指示が届く。


「とりあえず扉前まで飛んでみるしかねぇ」

ジンはドローンが扉から離れるのを待っている。


カツン、カツン。


通路の巡回するドローンは一定の規則的な動きをしており、奥へと行くと反転し、ゆっくりとこちらに向かってくる。


カツン、カツン、カツン、カツン。


徐々にジンの方へ向かってくるドローン。ジンの緊張が高まり、鼓動は早くなってくる。


カツン、カツン、カツン、カツン。


ドローンがジンのいる角に近づいた時ーーー


「いまだっ!」


ジンは一気に扉の前へと転移した!


すぐさま扉を開けようとしたその時!


カツカツカツカツンッ!


明らかに今までとは違う機械音にジンはドローンに視線を向けた。


「ピピッ!イーーーン」

ドローンがジンの方を向き、ピタリと足を止めて、センサーが赤く点滅を始める。


「認証失敗。登録外個体──侵入者確認」


ドローンの双眼のようなセンサーが赤く光り出す。カチャリ、と金属音。

背部から伸びる小型アームが、何かの装置を構えるようにせり出してきた。


「ヤベッ!」


次の瞬間、ジンは扉前から消えていた。


突如、反応が消えた事にドローンは一瞬動きが止まる。


ーーーバチバチバチィィッ!


一瞬でドローンの背後に転移したジンは持っていたスタンガンで、ドローンの首らしき部分の配線を焼き切った。



「……グギッ……」

金属が痙攣するような音を立てて、ドローンが床に倒れ込む。


「オニッ!」

気付かれたかもしれない焦りで、急いでオニに確認を取るジン


「…セーフや、施設内に異常はない!」


「フゥー。…使えるなコレ。」

手に持ったスタンガンを見ながら吐息を吐く


ジンはゆっくりと扉へと近づく。

扉の前には暗証番号とカードキーを差し込むような電子施錠がされていた。


「カギが掛かってる…中に飛ぶか。」


「いや、ワイ任せろ。」


数秒後、ピピッと言う音と共に、UNLOCKという文字が緑のランプと共に表示された。


「さすがだな!ーーーさぁ、入るぞ。」


ジンはゆっくりと扉に手をかけた。

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