焦燥
能力者を保護する政権放送から1週間が経とうとしていた。
オニの能力をもってしても、政府の最新の研究施設を割り出すのは困難であり、時間だけが過ぎ、ジンは徐々に焦りを感じていた。
ジンはオニが怪しいと目を付けた政府のいくつかの拠点に定点カメラを仕掛け、その動向を伺っていたが決定的な動きが掴めずにいた。
郊外にある政府施設を遠くから監視していたジン。
時折り車の出入りは確認できるものの、誰が乗っているのか、何が運び込まれてるのかは確認できない。
中の状況を見たいが、施設内に転移すればほぼ確実にカメラに映る上に、警戒度が跳ね上がるため、作戦決行まで不用意な侵入は厳禁だとオニからうるさく言われていた。
「こんなとこで眺めてても何も分からねーっつの。いっそのこと適当に爆破して動き見てやろうか!」
痺れをきらし始めたジンが苛立ちを込めてぼやくが、一度にアジトに戻り作戦をオニと練り直そうと転移を始める。
アジトの中にはオニとライラがいる。オニは相変わらずモニターを熱心に見つめながらキーボードを叩いており、ライラはまだ所々に包帯が巻かれた状態で、サラダの乗った器を運んでいた。
アジトの一角に六芒星の模様が入ったカーペットが敷いてある。
ジンは基本的にその六芒星の模様の上に転移して帰ってくる。六芒星に意味はない。単なるジンの厨二心からくる趣味であった。
「あっ!ジンさん!おかえりーっ!」
ジンの姿が見えるとライラが満面の笑みで駆け寄ってくる。
「ただいま。ご飯の用意を手伝ってくれたのか、ありがとうな。」
優しくライラの頭を撫でる。
「でもケガがちゃんと治ってないんだから、無理しなくて良いんだぞ。」
「ううん!ヘーキ!今日はオニちゃんに教えて貰ってオムライスって言うの作ったの!」
「へぇ〜!ライラが作ったのか!」
「教えたら一回で覚えたで。器用で賢い子や」
マウスを動かしながらオニが答える。
「どれどれ。へぇー!美味そう!」
ジンはテーブルの上に並べられたオムライスを覗き込みながら、スプーンを手に取った。
ほんのりと湯気が立ちのぼり、ケチャップで描かれたハートマークがなんとも言えず可愛らしい。
ライラはどこか照れ臭そうに、でも期待を込めた目でジンを見つめる。
ジンが一口すくって、口に運ぶと——
「うまっ!」
目を見開いて素直に驚くジン。
オムライスのふわふわの卵と甘めのケチャップライスが絶妙にマッチしていた。
「やったー♪嬉しい♪」
ライラの顔がぱあっと明るくなる。
「ライラは料理の才能あるな!さぁ、ライラも食べなっ」
「はい!いただきまーす」
包帯の巻かれた小さな手でスプーンを取り、オムライスを口に運ぶライラ
「んん〜♪オムライス美味しいね♪」
少し体を震わせながら嬉しそうにオムライスを堪能する。
ライラの幸せそうな姿を見て、ジンは考え事をしていた。
これからジン達がやろうとしてる事は、国を、世界を敵に回す事になる。沢山の組織が自分達狙ってくるだろう。
アジトだってこれからも安全とは限らない。
この子を巻き込みたくない。。。
けど、戦争の終わってない紛争地帯にライラを帰すのも不安だった。
ライラをただの戦争孤児とは見れなくなっていた。
「どうしたの?ジンさん」
表情に出てしまったのか、少し心配そうにジンを見るライラ。
「なんでもないよ」
優しく微笑み答える。
(今はまだ決断するべきじゃないな。ライラのケガがちゃんと治ってからだ。)
「ごちそーさま。美味しかったー♪私片付けするー!」
ライラは直ぐに立ち上がり、食器を片付けていく。
「ありがと。急がなくていいからな!」
ジンの言葉にハーイとだけ返事をし、少しずつ食器を流しへと持っていく。
ジンはオニの方へ向かい、モニターに視線を移す。
「どうだ?何か新しい情報は見つかったか?」
「全然や。ハッキングも仕掛けてるけど新たな情報なし。そもそも研究所自体が電波の遮断されたところにあるかも知れん」
「それじゃあ、外から見つけるのは、ほぼ不可能じゃねーか!?」
「・・・」
だまりこむオニにジンが焦りと苛立ちを見せ始める。
「どんな能力者が捕らえられるかも分からないんだぞっ!もしかしたら、俺たちの居場所を見つけ出す能力者がいるかも知れない!グズグズなんてしてられねーぞっ!!」
「分かっとるワイ!」
オニが珍しく感情を昂らせる
ジンとオニの間に緊張が走り、静寂に包まれる。
遠目でライラも心配そうに見つめている。
「・・・分かった。もういい。」
ジンが呟くように声を出す。
「オニのやり方で見つけられないなら、俺のやり方で見つける。」
「お前のやり方って、どうするつもりや⁉︎」
オニ言葉を無視して、ジンはオニに背を向け離れ、転移を発動していく。
「おいっ!待てっジン!!」
「ジンさんっ」
2人の言葉を後にジンの姿はアジトから消えていった。
「あのバカっ!無茶する絵しか思い浮かばんッッ」
オニは頭を抱えてうなだれていた。




