第四話†結成!魔法少女隊
3年前の話を聞いて、いてもたってもいられなくなった
『悪の組織を倒したい』
『手に入れた魔法をみんなのために使いたい』
そんな思いに身を任せて、魔術師連合に入ったみのるなの!
「とりあえず、うちらの宿室は船の中でも下の方にあるんよ」
エレベーターホールへと歩きながら、沙奈は実流に言った。
「そうなんだ?」
エレベーターはデッキにあったようだが、呼び出すといとも簡単に下りてくる。
「おや、もう話は終わったんですか?」
ドアが開いたエレベーターから降りて来たのは、セルジュだった。
「はい、…あの!……」
実流はセルジュに呼びかけたが……
「どうなさいました?」「あ……いえ、何でもないです」
セルジュの笑顔を前に、実流は結局言えずじまいで、セルジュが艦長室へ向かっていくのを、ただ見送ることしかできなかった。
「無理はしないでくださいね」
とびらを開けたセルジュは、軽く口を動かし、実流に伝えるが、実流はそれを聞こえていたかは確認せず、そのまま艦長室へと入っていった。
「うちらの宿室は32階にあるんよ」
エレベーターの開ボタンを押しながら、実流に言う。
実流ははっと我に返り、足早にエレベーターに入り、閉ボタンを押してから沙奈に微笑んだ。
「ねぇ、みのるんお姉さん、うちら2人でギルド興さない?」
「ギルドって興せるの?」
「申請すればギルドは興せるんよ~」
沙奈は満面の笑みで実流に説明する。
「手続きも簡単な物で、直属の上司、うちの場合は今所属中のギルドのリーダーであるセルジュさんに言って、艦長に伝えてもらうんよ。
でも、みのるんお姉さんはまだ直属上司が居ないから、二人の共通直属上司である、艦長に言うだけで良いんよ」
実流と沙奈の二人は、エレベーターが32階に着くまでの間、新ギルドをどんな物にするかを考えて話し合った。
「さて、着いたね」
「なんというか……すぐに申請したくなったね」
そう言いながら、実流は貰ったばかりの通信装置を起動する。とは言っても、イメージするだけで自然に発動するタイプの物である。
『あぁ、ディアスだ』
ほんの数秒で通信装置に応答する艦長。
「あの~、新ギルドを設立したいのですが……」
実流は遠慮がちに通信装置に語りかける。
『そっかぁ、分かった、申請は受理しよう。
とはいっても、総督が受理しなければ、ギルドは興せないけどね。
やる気があって大歓迎さ!今日か明日、また俺の部屋に来てくれ』
「はい、分かりました!」
実流は満面の笑みでこたえると、通信を切断する。
「やったなぁ、みのるんお姉さん!」
「うん、沙奈ちゃんが教えてくれたおかげだよ!」
喜びを分かち合う二人はハイタッチ。それを見た通行人は心なしか嬉しさが伝わったように、微かな笑みを零した。
「とりあえず、今夜7時に艦長室に行こうよ」
「うん!……お母さんとお姉ちゃんが心配しそう……」
実流は喜んでいたが、一つ気掛かりができた。家族には何て説明しよう、正直に言うか、でも信じてもらえないかもしれない。クラブが長引くことになったと言っておこう。
「お母さんか……」
「あ、沙奈ちゃん、どうしたの?」
暗い顔をした沙奈を心配そうに見つめる実流。
「いや、お母さんを思い出して……」
実流は優しく、母が実流にしていたように、沙奈を撫でた。
「じゃ、とりあえず、宿室行こか」
「うん!」
沙奈は安心したように実流に言うと、実流は微笑みながら頷く。
……同時刻、何処かの城……
「で、星の涙を逃したと?」
「す、すみません、ジュリア様!」
「お前は二度目だからな……レフェメルに報告する前に、私からの罰を受けてもらう」
ジュリアは、人差し指をラティオに向けると、電撃を放つ。
「す、すみません、ジュリア様…お許しをっっ!」
一度目は沙奈の時、同じように現れた連合に邪魔をされた。
二度目は今回。
「三度目は無いと思え。もし三度目の同じ過ちを犯したら……」
「ノワールに……」
「そう。ノワールにする」
……リヴァイアサン艦隊一号艦にて……
「ここがうちらの宿室なんよ。
うちが最年少だったこともあって、他の人とは違う部屋にしてもろてたんよー」
沙奈はカードキーを使って扉を開く。
「わぁ、綺麗にしてあるね……」
「うち、連合に保護される前も一人暮らしやったさかい、掃除も洗濯も料理も一人でこなしてたんよ」
「そうなんだぁ!」
実流は感心する。
二人は時計を見る。
午後の6時半。
「そろそろ行こうか」
「せやな、そろそろや」
二人は再び艦長室に向かった。
「おや、二人とも、何処に行くんですか?」
「あ、セルジュさん、新しいギルドを二人で興して良いですか?」
沙奈は廊下で出会ったセルジュに言う。
「あ、はい。良いですよ、提督にも言ってきてください」
セルジュは笑顔で返した。
艦長室に到着した実流たちは、一度ドアをノックし、「失礼します」と入る。
「おや、実流ちゃん、沙奈ちゃん、早かったね。
新ギルド結成の件だね」
ディアスは艦長席に座っていた。
「はい……」
と沙奈。
「ギルド名とリーダー名を言ってくれるかな?」
「ギルド名は魔法少女隊でリーダー名は……」
沙奈は一目実流を見た。
「私です」
「実流ちゃんだね」
ディアスは、本を読みながら自動ペンで資料を書きはじめる。
「総督にも報告しなきゃいけないけど、総督には自分で言う?それとも俺から言っとこうか?」
「あ、直接言います」
「そうか。……本部に居るレイアン総督に繋いでくれ」
モニターに『通信中』と表示され、しばらくの間……
『ディアス、どうしたの?』
「新ギルドの結成申請。
リーダーから直接聞いて」
モニター越しに移る、レイアンの美形な顔。
「ギルド名は魔法少女隊でリーダーは私、渚砂実流です」
『はい、受理しました。
実流ちゃん、沙奈ちゃん、これからも頑張ってね』
それだけ言うと、レイアンは通信を遮断する。
「魔導士協会に繋いでくれ」
再び通信中の3文字としばらくの間。
『こちらは魔導士協会です。
魔術師連合ディアスさん、どうしました?』
「新ギルドの結成。後ほどレイアンから通信行くと思うから頼む」
『分かりました』
ディアスは通信を切り「とりあえず、時間が時間だから家に帰った方がいい。
テレポーターは、実流ちゃんが71番、沙奈ちゃんは72番を使ってくれ。
おやすみ、また明日も頼むよ」
ディアスは微笑みながら、期待の新星『魔法少女隊』を見送った。
非日常と被らず交差するように過ぎていく日常。
実流の学校はもうすぐ運動会!
実流が出る競技は何だろう
次話へ続く!