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第三話†リヴァイアサン艦隊・後半

それは、まだ沙奈も魔術師連合に入る前の話……

一人の少女が魔術師連合のリヴァイアサン艦隊を襲った『白銀の閃光事件』

大量の人がそれで亡くなり、大きな損失を受けた魔術師連合の話……

 時はおよそ3年前のある日。

 ウェルファンプールから星の涙を回収したリヴァイアサン=フォルテス艦隊。

「これより魔導エネルギーの補充のため、ウォルテスプールの補給施設へと向かう。各艦は補給後に俺の指示を待ってくれ」

 当時1号艦の艦長にして、提督であった、ディアスの兄、ユウト=フォルテスの声が通信機を通して全艦へと送られる。

「了解!」

「……航路よし。ディアス、初めて艦長としての仕事はどうだ?」

「まだ自覚がないよ、兄さん」

 この日は、ちょうどディアスが2号艦の艦長に就任した日であり、その初仕事である。

「とりあえずあとで話がある。補給中に1号艦まで来てくれ」

「了解」


 銀色に輝く一筋の光が前から現れ、艦の間を縫うように後ろへと行く。

「……何だ、今のは……」

 ディアスはひとりごちた。

『612号艦より緊急(SOS)通信』

「何だ、どうした?」

『何かが船の甲板に憑いたらしい』

「何が憑いた?」

『それは現在……(ノイズ)中! ……ん?通信回……(ノイズ)……(ノイズ)しい!』

「どうした!? 応答しろ!」


  612号艦の甲板では……

「通信を開始……612号艦と1号艦へ」

『誰だ!』

「仮面舞踏会、仮面魔戦士団リーダー、ジュリア・レクイエム」

 銀髪を靡かせた少女はそう名乗った。

『仮面……舞踏会……?何故我らの艦を襲う?』


 ユウトは通信相手に問う。

「私の目当ては船そのものではない。船で運搬されている、星の涙。渡してくれるのならばそのまま立ち去るつもりだ」

 少女は光の無き瞳で通信の先にいるユウトを見つめながら、抑揚のない声で言った。

「私には星の涙を置いてある船がどれか見えてる。隠しても無駄よ」

 ジュリアは勝ち誇ったような笑みを浮かべている。


  1号艦の内部では……

「ディアスがレプリカを積んどく方が良いと言った理由はこれか……」

「どうします?提督……」

「そうだな……。レプリカを10個くらい渡して泳がすことにしよう」

  612号艦甲板にて

「これが、612号艦が預かってる星の涙です……」

 勿論レプリカの、である。

「……アルテマ・レイジ・バインド……」

 ジュリアは袋を開けてから、青年にバインド魔法を掛けた。

「こ、これは……?」

「本物じゃなかったら許さない」

 ジュリアは袋の中身を取り出しながら言う。

「偽物には用はない」

 ジュリアは手に持った星の涙のレプリカを握り砕きながら呟いた。

「……我らが邪魔をする奴は許さない」

 バインドに束縛された青年は一度の蹴りで吹き飛ばされ、612号艦の縁に何とか捕まり、何とか無事だが……

「手が離れたら大変ね」

 ジュリアは青年を見下すように悪戯な笑みを浮かべていた。それはまるで悪魔の様な。

「な、何をするつもりだ!」

 青年は手を踏み付けられながら、声を上げる。

「偽物掴ませたら許さない。警告はした」

 それだけ言うと、ジュリアは踏んでいた足を退け、彼の手を軽く反対の足で押した。

 手より強い足の力を受け、彼の手はいとも簡単に離れてしまう。

 そのまま流され、彼が次元の彼方へ消えていくのを、仲間たちは見送るしかできなかった。


『残念だけど、今ので魔術師連合を敵対組織として認識した。星の涙を持つ船を攻撃する』

 ジュリアの足元に魔法陣が現れ、そこから何本もの線が伸びて……

「612号艦の制御が取れなくなった!舵も、攻撃砲台も全部だ!」

「どうした、何があった!?」

 通信越しに612号艦の異変に気づいたユウトは声をかけた。

「612号艦の制御が完全に取れなくなったんだ!提督、助けてくれ!」

『我等に敵対と見られた時の恐ろしさを見せてあげる』

 612号艦の攻撃砲台の照準は星の涙の本物を積んでいる862号艦に向いている。

「やばっ、862号艦、逃げてくれ!」

 612号艦の照準を見た艦長は声を荒げた。


「現在起動中の通信をこの艦隊全てへ」

『何を考えてやがる!』

『こんなことをしてただで済むと思うな!』

『612号艦ごと沈めてやる!』

『自首してくれ!』

 通信を繋いだ瞬間、ジュリアに浴びせられる罵声である。

「しゃぁぁぁらぁぁぁぁっぷ!

容赦しないよ、潰えちゃいな!」

 ジュリアの一声で、魔法陣から伸びる線のうち一本が光りだす。その線の先には副砲の制御装置。

 612号艦の副砲は一斉に862号艦を狙って飛んだ。


『総員、待避ッ!』

 ジュリアは862号艦の通信が途切れると、不敵な笑みを浮かべる。

「これから、星の涙を運搬してる全ての船を攻撃する。本物でも、偽物でも……ね。

走れ、雷光!」

 ジュリアは淡々と言うと、一斉に大量の雷撃を放った。

 一瞬先に残っていたのは無残に散った大量の残骸と星の涙だけだった。

「ウェルファンプールにも落ちたか。

次元の狭間(ここ)にある星の涙だけでも回収しておこう」

 白銀の閃光を残して少女は飛び去っていく。


「という事件があったんだ」

 時は現代に戻り、ディアスの声が実流を現代に引き戻す。

「そのジュリアって子……まさか……」

「ジュリアちゃんを知ってるん?」

 実流は説明する。実は襲われる前に銀髪の少女も一緒に現れたこと、その銀髪の少女がジュリア様と呼ばれていたこと。

「じゃあ会ったんやね、大魔力を持った黒い魔法少女と」

「うん」

 しばしの沈黙……

「みのるも魔術師連合に入る!

あんな危ない人達に星の涙は渡さない!」

 沈黙を破ったのは実流のそんな一声だった。

「本当に良いのか、実流ちゃん?」

 ディアスは半分心配半分期待の表情で問う。

「はい、星の涙を守りたいんです……!」

 折角手に入れた魔法の力を、世界のために使う、実流の願いだ。

「わかった、登録をしておこう。

宿室は沙奈ちゃんと同室で良いかな?」

「はい」

「沙奈ちゃんも良いかな?」

「はい、ルームメイトは大歓迎です」

 実流と沙奈は大喜びである。

「じゃあ、沙奈ちゃん、早速実流ちゃんを案内してあげて」

「了解や〜!」

 ディアスの言葉に、沙奈も満面の笑みで答えた。

みのるんは魔術師連合に所属することになった。

ギルドはどこに入るのか。

はたまた日常には戻れるのだろうか!


次話へ続く……

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