第二話†リヴァイアサン艦隊・前半
超常的な力に襲われた実流は、はたまた超常的な力に助けられた。
そして連れてこられた場所は……
常識的な世界には戻れないのだろうか
否、これは実流が求めていた世界の裏側なのかもしれない
現実の道は閉ざされ、新たな真実が開かれる
一瞬の光が止むと、そこは少し狭いボックスの中にいた。
「ここが航次元間艦隊?」
「そう。ここはポッドっていう、テレポーターの発着場や」
沙奈が扉を開くと、そこには多数のポッドが置いてある広大な部屋があった。
「ポッドオペレーターより、被害者の女性と八神 沙奈の収容を完了」
「お疲れ様、沙奈ちゃん!」
「なるほど、その子が被害者の…」
「無事でよかった」
テレポーターのオペレーターが沙奈の仕事の成功を喜び、興奮しながら言う。
「提督に報告しておくので艦長室に行っていてください」
「了解な! こっちや、ついて来て!」
沙奈が実流を連れてテレポータールームから出る。
その間も沙奈は実流を退屈させないように様々な話をする。
「それでな、そこをぐっと抑え込んでから一発ノックアウト! みのるんお姉さんにも見せたかったなぁ」
中には過去の仕事の話も。
『ディアスからの通信を受信』
突然、沙奈の目の前に浮遊画面が現れた。
「あ、提督からや」
浮遊画面の表示が文字から男性の映像に変わる。
『沙奈ちゃん、お疲れ様。テレポーターのオペレーターから連絡が入ったよ。被害者の少女も居るね』
「はい、隣に居ます。今ちょうど艦長室に行くところです」
沙奈はモニター越しに男性と話をしている。
沙奈と話をしている男性の顔を見る実流。
男性は整った顔立ちをしていて、清潔感のある黒いスーツを着込んでいた。
『とりあえず自己紹介は直接会った時で良いかな?』
「あ……はい」
実流ははっと我に帰った。
『じゃあそのまま艦長室まで来てもらいたい』
「分かりました」
男性の方から通信を切る。
「あ、これがエレベーターな」
ドアが開き、中に入る実流たち。
「えーっと……艦長室は……」
「エレベーター開けといて〜!」
エレベーターの外から男性の声。
「あ、セルジュさん、どうぞ」
沙奈は、開ボタンを押しながら言った。
「すみませんね、今から艦長室ですか?」
「うん、そうなんよ。でも…」
「何階か忘れてしまった、と」
「あはは…」
沙奈は苦笑いをする。図星を突かれた人間は何故苦笑いが込み上げて来るのだろう。
「艦長室は……」
セルジュという名の青年は一言呟き、62階のボタンを押した。
「ありがとな、セルジュさん。うちも覚えんとなぁ」
たははと乾いた笑いを残しエレベーターは目的の階へと旅立つ。
「私もちょうど艦長に用があったので、良いタイミングでした」
62階に到着すると、セルジュはエレベーターを下りて行ってしまった。
「うちらも行かんとな」
沙奈は実流をエレベーターから出してから自分も出る。
「それでな…」
その頃、艦長室では、セルジュともう一人、先程沙奈が通信していた男性が話をしている。
「いよいよ仮面舞踏会の動きが活発化しつつあるようです、提督」
「そのようだね、セルジュ君。先程あの子を襲った奴も仮面舞踏会のようだ」
「えぇ、星の涙は奴らにとって、《計画》を進行させるには必要不可欠な物品らしいです」
「ふむ……。しかし、心を集める理由が定かではない。それについてはどう思うかね?」
「恐らくは、奴らの計画というのは、神を作り出すという物かと」
「何っ!? ……神を作り出す……?」
「はい、これはユーノが私に教えてくれたことですが……」
「ようやく彼らの目的がはっきりしてきた。人の手で神を作るには多大な犠牲がかかる……」
「これからは魔導士協会にも情報を集めてもらうことになりそうです」
突然、部屋にノックの音が響く。
「この話はまたいずれ、ゆっくりと……」
「嗚呼。……入っていいぞ」
提督が言うと、実流と沙奈が艦長室に入った。
「では私はこれにて」
入れ替わりでセルジュが出ていく。
「その子が被害者の……」
「渚砂 実流です。助けていただきありがとうございました」
「なるほど、可愛らしいくて礼儀正しい子だね。早速本題を話そう。
星の涙を渡してもらいたいのだが……」
「あ、はい」
星の涙と呼ばれた青い石を提督の机に置く。
「立派な飛行船ですね」
「ありがとう。実際はあと899隻、これと同じ型の船があるんだが……」
「そんなに!?」
「そのうち312隻が墜とされた。その話を聞いてみるかね?」
「……はい」
実流は少し考えてから頷いた。
3年前のこと
白銀の閃光と呼ばれるようになった少女が起こした一つの事件とは!!
次回へ続く