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(45) 第2回メレ・アイフェス集合会議⑤

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 カイルの言葉を聞きながら、サイラスは感じていた。

 カイル・リードはお人好しだ。

 サイラスからみれば、大災厄後の復旧など地上人の責務の範疇(はんちゅう)であり、それに心を砕き行動するなど、無料奉仕(ボランティア)の極みだった。


 彼は地上人であるエトゥールの姫を伴侶となしたという理由だけで、地上に肩入れしている。

 しかも地上を救うために、得体の知れない存在を身に宿し、ほぼ軟禁に近い隔離状態さえ受け入れているのだ。


 理解に苦しむ。

 自己犠牲と奉仕の精神は東国の任侠レベルを凌駕している。イーレの言う『武術の真髄』もカイルなら理解しているだろうが、その実行状態が()()ならごめんこうむる、とサイラスは強く思った。


 確かにカイル・リードは中央(セントラル)に戻れない立場かもしれない。この状態で戻れば、ディム・トゥーラが指摘する実験体にまっしぐらだ。

 カイルの地上滞在を容認したディム・トゥーラの思惑も深く理解できた。


 惑星探査の大原則として、未開文明を持つ現地の民と接触を禁じられている。接触することで、人や文化に影響を与え、本来の発展を阻害する可能性があるからだ。

 ディム・トゥーラの解説では、この惑星の探査は特例扱いだったという。

 つまりは恒星間天体の衝突で滅亡すること判明していたから、直接の接触も許されていた。

 

 500年前に降下した研究員達は相当好き勝手にやらかしたようだった。

 現在の滞在先である王国エトゥールの建国の祖が主幹研究員とは、やらかしすぎにもほどがある。

 その探査プロジェクトの初期参加者でもあった所長夫妻は、現在進行形で後始末に奔走している。

 醜聞ネタ(スキャンダル)にならないのは、ジェニ・ロウが中央の権力者の一人であり、500年前の探査許可の免罪符があるからだ。

 中央(セントラル)の量子計算機が予測した滅亡が、阻止されるとは誰も思わなかったのだろう。


 阻止したのはカイル・リード達と『精霊』とその手下の『ウールヴェ』だ。

 事態のヤバさは能天気主義のサイラスにも、ひしひしと伝わってきた。

 『精霊』という理解不能の存在要素が未知数だった。客観的に見て、世界の救済の立役者だが、サイラスは別の視点からも見ていた。


 惑星の救済ができるなら、惑星の破壊もできるのではないだろうか。中央(セントラル)がその脅威的な存在を野放しにするだろうか?


 考えすぎだろうか?

 だが今現在、判断材料が少ないことも確かだった。

 サイラスには現地の降下時代の記憶が消失している。このイレギュラーな記憶障害が、この惑星に起因しているという仮説をディム・トゥーラはたてていた。

 いまやサイラスもその仮説を否定できないでいる。クローンの記憶障害という前代未聞の希少症例が2件、その死亡場所がこの惑星という共通点を無視できるわけがなかった。


 問題は他にもある。

 サイラスは地上人の寿命が極端に短いことを教えられている。

 この世界には体内チップの健康修復技術もない。肉体喪失した時のクローン技術もない。

 この世界の地上人の『死』とは避けられないイベントとして、あっというまに迫ってくるのだ。


 カイル・リードは、間違いなく伴侶を失う。手のひらから砂がこぼれ落ちるように、失われる生命を見守るしかない。

 彼は地上において孤独に取り残されることが確定している。


 サイラスはふと養い子兼妹弟子でもある少女を思い出した。

 養い子が死ぬのを見るのは嫌だな、と漠然とした感情を抱く。

 イーレ以外の近しい存在が、あっというまに年老いて死んでいく。それを見守る。

 短命、接触が禁じられている異星人、偶然出会った存在――納得できる言葉を探すが見つからなかった。

 良くわからない感覚だが、たまらなく嫌だった。それならば――


「サイラス?」


 呼ばれてサイラスの思考は霧散した。

 黙り込んだサイラスをカイルが怪訝そうな表情で見つめている。いつもの全てを見透かすような金色の瞳が向けられていた。


「ええっと、なんだっけ?」


 サイラスは話題を聞きかえした。

 話を聞いていなかったことを誤魔化す気力もなかった。


「だからね?僕に怯えていたサイラスが訪問するのはよっぽど理由があるよね、って話」

「あ、ああ……」


 それはある意味正しかった。


「まあ……その……いくつか相談したいことがあってだな……」

「うん?」


 カイル・リードはイーレのように揶揄ったりはしない――サイラスは自分に言い聞かせた。

 しばし視線を彷徨わせてから、カイルとその支援追跡者(バックアップ)に相談内容を切り出した。


「俺、養い子の名前を呼べないんだが、どうしたらいい?」

「…………はい?」


 幸いなことに二人は馬鹿にしなかった。


「えっと……養い子って、リルのことだよね?」


 カイルは慎重に確認をしてきた。


「そう」

「……例の悪癖で、覚えてないとか?」

「俺は確かに対人関係に関心が薄いが、そうじゃない。さすがに養い子の名前は覚えている」

「……呼ぶのに照れてるとか?」

「あのなあ、お前じゃあるまいし。女性関係の数で勝負するか?」

「研究都市の夜の帝王に勝負するわけないでしょ?」

「夜の帝王って言うな」

「遊び人でも、女たらしでもいいよ」

「人たらしのお前に言われたくねーな」

「僕は人たらしじゃない」

「………………」

「………………」


 ディム・トゥーラとサイラスは同時に深いため息をついた。


「…………おい、保護者(バックアップ)。この自覚のなさをどうにか教育して、補正しろって」

「…………百年くらい猶予をくれ」

「…………それ、できないと同義語じゃね?」

「…………そうかもしれないな」


 カイルは、唇をとがらせて憤慨した。


「ちょっと、二人とも失礼すぎるよ?!」

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