(43) 第2回メレ・アイフェス集合会議③
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なるほど、主人の思念力が規格外だと使役するウールヴェに対する影響も大きく、成長と賢さが違うのか――と、サイラスは二人の会話から推察し、納得した。
養い子のウールヴェは、可愛い子狐に似た形態だったが、サイラスとこのような会話は成立しなかった。成長差が主人の精神感応能力に起因する可能性はおおいにある。なんと言ってもカイル・リードは規格外の代表例だから、標準サンプルとしては不適切だった。
一方、サイラスのウールヴェは、翼を持つ硬い鱗を持つ爬虫類だった。なぜ、爬虫類型とサイラスは自分のウールヴェの姿に疑問を抱いたのだ。
翼の生えたトカゲでは、使役のしようがなく、サイラスはやや失望した。街中でも間違いなく目立つので、斥候にも向かないだろう。
「トカゲじゃない」という抗議の心象がきたような気もするが、その世話は養い子にまかせている。本当は5匹いるが、世話が面倒だと、イーレ、クトリ、アッシュ、養い子に分配した、と過去のサイラスの行動を養い子は証言していた。
納得する過去の自分の選択行動だった。
愛玩動物の世話などサイラスが不得意な分野の一つである。存在を失念して、簡単に殺しかねない。
残った一匹でさえ、蝙蝠のような翼で周囲を飛び回られると、条件反射的に長棍で叩き落としたくなるのだ。
「ディム・トゥーラもウールヴェを持っているのか?」
サイラスが当然の質問を投げた。
今いる聖堂内の談話室にはカイルのウールヴェしか見当たらなかったからだ。
「……持っている」
「どこにいるんだ?どんなタイプなんだ?」
「…………」
好奇心からの質問だったが、ディム・トゥーラはなぜか片手で顔を覆い、答えなかった。
「ディム・トゥーラ?」
「ディムのウールヴェは、ファーレンシア達の元にいるよ」
黙りこんだディム・トゥーラにかわりカイルが答えた。
ファーレンシアは確かカイルの伴侶であるエトゥールの姫君の名前のはずだった。
サイラスは微妙な矛盾に気づいた。
「なんで、ディム・トゥーラのウールヴェが、カイルの伴侶の元にいるんだ?」
「……護衛として都合がよくて」
「嘘だな」
サイラスは即座にカイルの言葉を否定した。
「こんな難航不落の孤立都市と捨てられた王城にどんな護衛がいるんだ。そもそも建物の外に歩哨すら、たてていないじゃないか」
サイラスの鋭い指摘に、今度はカイルが黙り込んだ。
「護衛と子守だ」
観念したかのように、ディム・トゥーラは答えた。
「………………は?」
サイラスは思わず単語検索をしてしまった。
子守―― 乳幼児の世話やあやしをすること、と。
護衛と子守。
それは両立するのか、という疑問を生じさせる単語の羅列だった。
「……俺、ディム・トゥーラのウールヴェの質問をしたんだけど?」
「大丈夫だ。俺も俺のウールヴェのことを答えている」
開き直ったようにディム・トゥーラが真顔で答える。
「…………護衛はともかく、子守って何だよ?ウールヴェって、子供の世話もできるのか?」
「他のウールヴェ達の適正はしらん。ここにいる規格外の娘が強力な能力者だ。俺はその支援追跡をしている。俺の不在時は、俺のウールヴェが監視しているんだ」
「………………はい?」
カイル・リードとエトゥールの姫が婚姻し、子供がいる事実までは、ディム・トゥーラから口頭で説明を聞かされていたが、生まれた娘が能力者であることは初耳だった。
「えっーと、支援追跡が必要なSSS級な能力者なわけ?」
「俺はそうみている」
「測定は?」
「そんなものをすれば、痕跡が残り、即中央に強制捕獲されて実験体だ。探索惑星の未開文明の地上人の人権を中央が認めると思うか?」
「ごもっとも。ディム・トゥーラがカイルの支援追跡をやめて、カイルの娘についたわけ?」
「なるほど、サイラスは俺以外にこの問題児の支援追跡ができる優秀な能力者がいると思うんだな?」
地雷を踏んだらしい。
腕組みをして静かにサイラスに問いかけるディム・トゥーラの背後から、実年齢を指摘したイーレと同じ波動を感じる。プライドが高い中央の技術官僚候補者は、カイル・リードの支援追跡者という茨の道を突き進むつもりらしい。
「トンデモゴザイマセン。イナイトオモイマス」
自分が子ウサギになった気分にサイラスは陥った。目の前にいるのは凶暴な捕食者である灰色熊だ。
「灰色熊扱いするな」
筒抜けだった。
「ディム・トゥーラは今でも僕の支援追跡者だよ」
カイルが答える。
なぜドヤ顔なのか、とサイラスはツッコミたくなったが、我慢した。
「親の心、子知らず」という古来の慣用語句があるが、この場合「支援追跡者の心、対象者知らず」がふさわしいに違いない。ついでに「弟子の心、師匠知らず」もあわせて登録したかった。
「まったくだ」
またもや、筒抜けだった。




