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(8) 天空の城

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

前回、少し風邪をひいてるとか言いましたが、結局38度後半の熱になり、インフル陰性、コロナ陰性、溶連菌陽性というオチでした。扁桃腺が腫れて、抗生物質治療。喉だけが痛かったら注意。

皆様、38度超えの熱は病院にいき、検査を受けましょう。溶連菌は放置で腎炎になる可能性があるそうです。

そんなわけで1週間寝込んでました。(懺悔)


体力温存しつつ、更新をぼちぼち再開します。


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 イーレの長棍から()()()()()()()()()を、自分の生体反応に合わせて、馴染(なじ)ませていったのだ。グリップの太さや、反射速度、素材の強さを好みにカスタマイズし、自分にあった伸縮自在の棍を作り上げる。

 それはサイラスの癖を解析し、サイラスが目指すイーレの舞踊のような立ち回りに矯正した。だが、未だに本家本元に及ばない。その距離を埋めるために、サイラスは日々鍛錬に明け暮れたのだ。

 

 その結果、それなりに扱えるようになった。


 凶暴な野生生物には、槍のように使い、近寄らせなかったので、銃器一辺倒の降下隊仲間からは、感心されたものだ。この時代に不自由な近接武器を使いこなす者など、皆無に等しい。

 師匠であるイーレを褒められた嬉しさがあったが、師匠本人には伝えてない。伝えたら『師匠の教えがいいから』と自画自賛に走るに決まっている、とサイラスは思っていた。イーレから与えられた長棍は師弟関係の象徴であり、サイラスの存在証明の象徴でもあった。


 

 その大事にしていた長棍がロストした。相当、稀有な状況だ。イーレが死体から回収してくれそうなものなのに……。


 どういう死に方をしたのだろうか?

 どこで長棍をロストしたのだろうか?

 イーレは長棍を無くしたことを怒るだろうか?

 長棍を粗雑に扱っただけで、昔は殴り倒されたのだ。破門を宣言され、また一から地獄の入門試験ということもありうる。


 お先真っ暗だった。


 サイラスはため息をついて、資料を読みすすめた。

 与えられた資料の中には、サイラス個人に関するものは、なかった。精神的配慮に違いなかったが、死亡状況はわからない。

 記憶があれば、そんな配慮は無用のはずだった。


 いや、まいったまいった、馬鹿な死に方をしちまったなあ。全くだ。回収処理が大変だったんだぞ――そんなふざけた会話をするのが先発隊の常だった。イーレだったら、修行が足りない、と言うかもしれない。


――俺は地上で、どう過ごしていたんだろうか?


 失われた記憶の空白の数年がサイラスを不安にさせた。師匠の不在がそれに拍車をかけた。



**********



 見渡す限りの荒野の盆地の中心部にそそり立つ、幅広い高さ1000メートルの円柱岩石の上にかつて王都であった街が、乗っている。

 それはそこだけ隆起したのではなく、周りがえぐれた結果であった。そのありえない風景が、神聖なものとして、遠方からの目撃者達には映るのかもしれない。


 『天空の城』は『エトゥールの魔導師(マナ・アイフェス)』達の住居にふさわしい――そんな話まで出ている。


 周りは消滅したにもかかわらず王都だけが残存したことは、世界の番人の審判、精霊の奇跡とまで称されたが、ある意味それは正しかった。あの時、大災厄の元凶ともいえる恒星間天体に向かったのは、世界中の精霊獣(ウールヴェ)達だった。


 外部から訪問できない街が、王都として機能するわけもなかった。

 災厄後の食糧などの物資が運び込めない都など論外なのだ。もちろん、導師達が所持している移動装置を使えば、荷物や人の移動は簡単だが、入場管理に手間暇がかかる。そんなことに人手を割ける余裕はない。他国の間者や犯罪者達の侵入と暗躍を許すわけにもいかない。


 今現在、エトゥール王であるセオディア・メレ・エトゥールは、消滅をまぬがれた王都を放棄し、アドリーで復興の陣頭指揮をとっている。それは当然の選択ともいえた。


 エトゥール王への評価は、様々だった。


――復興計画と民への支援の速さといい、なかなかの手腕だ。さすが精霊の祝福を受けた賢王だ

――いや、アドリー辺境伯である義弟を妹姫ともども、孤立したエトゥール城に幽閉することで、アドリーを没収して遷都をもくろんでいる。なんという鬼畜な王だ

――そうではなく、人々の命を救ったメレ・アイフェス達に敬意を表するためにエトゥールの王城を譲渡したのだ


 大災厄後に人々が口にした噂は、少しずつ正しく少しずつ間違っていた。




「鬼畜はあっていますね」


 エトゥール王の妹姫で『精霊の姫巫女』と呼ばれるファーレンシア姫は、噂の主である兄であるセオディア・メレ・エトゥールを酷評し、静かに目の前のお茶に口をつける。

 民の間に、流れている噂についてリルが語ると、ファーレンシアはそういう突っ込みをしたのだ。


「リルもそう思いません?」

「ファーレンシア様……」


 賢者の養い子であっても、商人で平民という身分のリルが、王についての酷評に同意できるわけもない。


 リルは今、ファーレンシアと一緒にアドリーを訪問している。訪問先はエトゥール王の伴侶におさまっている治癒師のメレ・アイフェスであるシルビアだ。

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