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(7) 報告

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

少々、風邪でダウン中。

ブックマークありがとうございました!


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「あら、本題の方でいいわよ」


 ジェニはにっこりと笑った。どこかその笑い方は、怒っている時のイーレに似ていた。

 所長のエド・ロウは、ディム・トゥーラからの問いかけるような視線を避けた。妻の行動を止める気はないらしい。



――この狸親父め

さすが、ロニオス・ブラッドフォードと双璧をなす喰えない人物だ。

『そういう評価はやめて欲しいなぁ』

 エド・ロウからの念話をディムは無視した。



「で、いいかしら?」

「なんでしょう?」

「貴方が地上からよこした報告書に目を通したわ」

「はい」

「これだけの出来事を報告書にまとめるとは大変だったでしょう?」

「それなりの時間が必要でした」

「わかりやすいし、地上の状況はよく理解できたわ」

「ありがとうございます」

「いろいろ聞きたいこともあるので、貴方を呼び戻したのは、サイラス・リーの覚醒のためだけではないのよ」

「……」


 わざわざジェニ・ロウは端末から空中スクリーンに報告書を映し出した。

 それはまるで論文の添削のように、アンダーラインと注釈で埋め尽くされていた。同じことをカイル・リードに対してしたことがあるディムは嫌な予感がした。

 あの時は、なかなか接触(コンタクト)してこないカイル・リードに対する怒りと嫌味と報復をこめて文章を添削したのだった。


「……あの?表現や内容に不備がありましたか?」

「いいえ」

「よかった」

「完璧すぎるのよ」

「え?」

「完璧すぎるの。貴方が地上からよこした報告書、途中からロニオスの手が加わっているわよね?」

「――」


 予想外の指摘に、ディム・トゥーラは絶句した。

 なぜ、バレたのだろうか。


「途中から文体の癖が変わってる」

「――」


 ジェニ・ロウの鋭さに、ディム・トゥーラは舌をまいた。さすがロニオス・ブラッドフォードの優秀な元副官といえる。それとも、彼に散々振り回された過去が(はぐく)んだ知恵だろうか。


「シャトルとともに爆死したと思われるロニオスが地上で発見されたのかしら?どうやって発見したのか聞かせてもらえる?ジェニ・ロウに報告するのはしばし待ってくれ、とか彼に時間稼ぎを要求された?まあ、いいけど、そこの詳細の事情聴取をしたいのと、ちょっと彼に伝言をお願いしたいの」

「……………………伝言?」

「状況が落ち着いたら、会いに行くけど、その時逃げたらただじゃすませないわよ、って」

「……………………」


 ロニオス・ブラッドフォードが伝言を聞いたら、間違いなく尻尾を太くすることだろう。

 尻尾の太さの最高記録を叩きだすかもしれない。





 そのころ地上にて、居住スペースとして改造されているエトゥールの聖堂内では、愛らしい赤子の相手をしていた猫姿の精霊獣(ウールヴェ)が、急にガタガタ震えだした。


「まあ、お義父(とう)(さま)、聖堂が寒いでしょうか?」


 ファーレンシアは、純白の白猫の変化に(さと)く気づいた。


『いや……そんなことはないのだが……こう背筋がぞくりと……なぜだろう?』

「それはいけません、風邪の引き始めでしょうか?薬湯を用意させましょう」

『ウールヴェは風邪などひかないと思うのだが…………甘酒で頼む』 





 ディム・トゥーラが手厳しい事情聴取という名の追求を受けている間、サイラスはディム・トゥーラの用意した地上の言語メモリーをダウンロードし、言語を習得した。

 その他にも地上の大陸全土の地図と、カイル達が滞在している国と、その周辺国の関係性や風習を頭に叩きこんだ。

 サイラスの記憶では、探索機械(シーカー)がことごとく破壊され、おまけに通信阻害(ジャミング)で衛星軌道からの撮影が妨害されていた。

 そう、シルビアの移動装置が定着した間だけ、カイルとディム・トゥーラの念話は可能になったのだ。


 そのあと、情報を取得できたのか、関連資料は膨大だったが、意味不明のものも多数あった。

 エトゥールという国の社交に関する取り決めや風習は特にわけがわからない。行事(イベント)前に女性のドレスを見るのは御法度、3曲目のダンスを踊ると婚約成立――これは、なんの罰ゲームだろうか?


 自分は何かやらかしていないだろうか?

 いや、きっとやらかしているな。

 やらかしているに違いない。

 

 そこまで考えて、サイラスははっとした。


「ディム、俺の長棍がないっ!」

「死亡時に現地でロストしている」


 ディム・トゥーラは事実をそっけなく告げてきた。

 サイラスは記憶がないことが判明した時と、同等の精神的ダメージを受けた。

 せっかく、あそこまで()()()()()――サイラスはため息をついた。

 あの長棍はイーレからもらったもので、物に執着しないサイラスが珍しく大事にしていたものだった。


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