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(14) 東国にて⑭

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「私……ですか?」

「そうよ」

「私は何も……」


 リルは困惑した。イーレはそんな少女の反応に小さく笑った。


「最初にサイラスが南の森に降り立ったのは事故によるもので、リルと出会ったのは偶然の産物と言ってもいいものなんだけどね。あの時、サイラスはエトゥール城にいるカイル達のそばに降下する予定だったの。(ふた)をあけてみれば、定着させた移動装置(ポータル)が南に500キロもずれていたわけよ」


 リルは、移動装置(ポータル)賢者(メレ・アイフェス)達の常用の移動手段であることを知っている。使用する特権を付与されたリル自身が生活と商売のために多用していた。


 それは、便利な不思議な賢者の術だった。

 地面に設定された円形区域に入るだけで、遠く離れた場所まで移動できるのだ。


 その便利なはずのサイラスの移動装置(ポータル)は、目標から大きくはずれた魔の森に定着されたという。

 リルはその時のことを、はっきり覚えている。魔の森のそばの街道で、リルが盗賊団に襲われていた時に、サイラスは魔の森の奥から現れたのだ。


「目標を外れることは、よくあるんですか?」

「ないわよっ!前代未聞よっ!私とディム・トゥーラは大混乱よっ!」


 過去を思い出して、わなわなとイーレは両手をふるわせる。

 だが、イーレの外見は12歳ぐらいの西の民装束の子供姿なので、深刻さの度合いが八割ほど削られていた。

 要は可愛いのである。

 この差異が「年齢を詐称する子供姿のババア」とサイラスが暴言する由縁でもあるらしい。

 事実、出会って数年たつが、リルは不老であるイーレの外見年齢を越えてしまった。おかげでイーレはリルより年下という異様な逆転現象が起きている。知らない人は、リルより幼くみえるイーレを甘やかすのだ。


「貴方がエトゥールまでの道案内を申し出てくれた時、正直助かったのよ。地上の情報がいっさい持っていなかったから、あのままサイラスがエトゥールを目指して北上してもトラブル続きだったでしょうね。ほら、筋肉で解決することに依存するタイプだし」

「まあ……確かに」


 リルが同行を申し出た理由の一つは、サイラスの世間知らずさでもあった。

 東国(イストレ)の貴族の息子が、共もつれずにエトゥールに来たとしか思えなかったからだ。

 外見の優男ぶりを裏切る戦闘力も、騒動の呼び水だった。

 サイラスをいいカモだと判断したならず者は、ことごとく返り討ちにあう。サイラスは自分のことを『ならず者ほいほい』と言っていたが、意味はわからない。

 ならず者を警護隊に引き渡した際の報奨金は、リル達の収入の一角になるほどだった。

 


「エトゥールに到着後、サイラスがリルの後見人になると言い出した時はびっくりだったのだけどね」

「え?私を養い子にしたのは、イーレ様か精霊様――じゃなくてディム様が命じたからではなかったのですか?」

「違うわよ。あの子が一人で考えて決めたの。だから私達は驚いたのよ。他者に無関心なはずのサイラスの行動が変わったことに」

「――」


 嘘ではないだろう。イーレがわざわざリルに嘘をいう必要がないからだ。

 少なくとも記憶を失う前のサイラスは、リルを養い子にしたことを後悔していない――それを知っただけでも、リルはずいぶん気が楽になった。


「ねぇ、サイラスのどこが好き?」


 その質問は不意打ちすぎて、リルが質問の意味を理解するまで数秒を要した。


「す、す、す、好き?!」


 いや、落ちつけ。これはサイラスを養い親としてどう思っているか、という単純な質問だ――と、リルは自分に言い聞かせた。


「あ、もちろん、男女関係の意味で聞いているのよ?」


 容赦なくイーレは次の言葉でリルの退路を遮断した。

 リルは口をぱくぱくとさせて、返答に窮した。

 男としてのサイラスのどこが好きなのか――しかもこの質問の大前提は、リルがサイラスに恋愛感情を持っていることが断定されている。

 リルの顔を徐々に真っ赤になった。


「ごめんなさい、ごめんなさい、ごめんなさい」

「なんで謝るの?!」


 イーレの方が、リルの謝罪の言葉に驚いた。


「だ、だって、養い子が養い親を、し、しかもメレ・アイフェスを好きだなんて――」

「いいじゃない」

「――いいんですか?」


 思わずリルは聞き返した。


「なんの問題があるのか理解できないわ。恋愛は自由でしょ?」

「……恋愛……」

「ちなみに、本人(サイラス)以外は、だいたい気づいていると思うわよ?」


 再びリルは真っ赤になった。


「…………さ、サイラス以外って」

「…………え?もしかして、周囲にバレてないと思っていたの?」


 即死級の連撃だった。

 耐えきれず、リルは両手で顔を覆って、俯いた。

 イーレは、にこにことリルの反応を見守っている。


「でね、話は戻るけど、サイラスは女性関係のトラブルメーカーなのよ。記憶を失って、素のままの行動が()()でね。どう、思う?」

「…………どう、思う……とは?」


 リルにはイーレの質問の意図が読めなかった。

問題:好きな人がホスト並みに女性関係が派手(本人に自覚なし)という事実が判明したらどうしますか?

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― 新着の感想 ―
モテモテな彼をすきになった。 その彼は来るもの拒まず う~ん、すきが勝つか、どうか・・・ むつかしい。
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