(47) 再会⑩(専属護衛の場合)
お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。
先週、身内の入院、手術があり(3ヶ月前からの予定手術)ようやく落ちつきました。(まだICUですが)
そんなわけで12月の更新はさらに混迷状態です。(土下座)
現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)
あっさりとした大胆不敵な提案に、専属護衛達は絶句した。王侯貴族に匹敵する地位の賢者が、魔獣退治に積極的に名乗りをあげるとは予想外だったのだ。
だが、アッシュは思い出した。
「……ああ、そういえばあなたには前歴がありましたね」
「前歴?」
アッシュの言葉に、サイラスは怪訝そうな顔をした。
「商人を護衛する傭兵として、道中に魔獣を退治していました」
「俺が?」
「ええ」
「俺がそんな慈善事業をするとは思えないけどなぁ」
真顔でサイラスは自己否定をした。
アッシュは呆れたようにサイラスを見た。傭兵業による魔獣退治がどう転べば、慈善事業なのだろうか。「割に合わない仕事」という意味なら確かに慈善事業だ。だが、この脳筋の賢者はずっと、その「慈善事業」をやっていたのだ。それはもしかして、荷馬車で大陸各地を移動する養い子のためだったのか――。
アッシュは咳払いをした。
「サイラス様、矛盾してませんか?先ほどの提案はその慈善事業の最たるものですが?」
「これは慈善事業じゃないさ。俺が蒔いた種を刈り取っているだけだ」
サイラスは、はっきりと言った。
「俺が考えずに行動した結果が、問題になっているなら解決するべきだ。イーレや地上にいる同僚の立場を悪くしたくない。エトゥール王の立場がこの件で悪くなるなら、放置する俺達も同様だよな?魔獣が跋扈している。討伐隊を派遣できない。討伐隊が戦力不足。討伐地域が不平等――」
アッシュに向かってサイラスは指を順番に折って指摘していく。
「それらの問題は、俺なら簡単に解決できる。そうだろう?」
「確かにそうですが……」
「ただし、討伐隊を率いるとかはごめんだ」
「その理由は?」
「足手まといの連中の子守は面倒で、尻拭いはしたくない」
「…………あなた昔も同じことをエトゥール王に言ってましたね」
「マジで?おお、記憶をなくす前の俺、えらいぞ」
サイラスは手を叩いて、自画自賛をした。
ふざけている。忘れ病になっても、本質は変わらないのか――困惑したアッシュはちらりとディムの反応を伺った。彼は考え込んだあと、意外なことに反対しなかった。
「確かにその案は、悪くない」
「ディム様、反対なさらないのですか?危険な行為ですよ?」
「別に反対する要素がない。カイルやシルビアが討伐に同行するならおおいに反対するが、サイラスは強いから問題ない。四ツ目の毒にもある程度耐性はある。それにつきあわされた東国の件で、アッシュはわかっているのではないか?」
「ええ、まあ……」
渋々とアッシュは認めた。
「サイラスがエトゥール城に滞在して、暇を持て余して侍女に手を出す方が問題だ」
「「……侍女に手をだす?」」
露骨な表現に、アッシュとミナリオの視線がサイラスに集中した。過去の彼はそんな問題を起こしたことはなかった。
「え?俺、地上の一般女性相手に騒動を起こしてた?」
言われた本人が焦ったように、ディムに尋ねた。
「安心しろ。未遂だ」
「ああ、よかった。イーレにぶっ殺されるところだったよ」
「それが、わかっているなら自重してくれ」
「わかったよ。そういうことは、遊べる相手にだけにしておく」
「……」
「……」
「……」
その返答に3人は嫌な予感しかなかった。
ミナリオがやや動揺したかのように言った。
「サイラス様、侍女には私の妹もいますので、くれぐれも手をだすことは……」
「へぇ、かわいい?」
「サイラス様っ!」
「はは、いいお兄さんをしているね。手を出さないためにも、今度紹介してくれよ」
「……ディム様」
ミナリオは助けを求めるように、軽薄男を御せるはずのメレ・アイフェスを見つめた。
ディム・トゥーラは気まずい雰囲気に、小さな吐息をつくと片手をあげて応じた。
「すまない、イーレを通じて、サイラスにはよく言い聞かせておく」
「……不安しかないのですが?」
「俺もいつだって不安だらけだ」
大賢者は真顔で返した。
東国人であるアッシュが、告げた。
「わかりました。サイラスが魔獣討伐をしていただける件は、エトゥール王にお伺いしておきます。サイラス様が暇を持て余すのは回避した方がよさそうだ」
「英断だ」
「その時は、私が同行しましょう」
その申し出に驚いたのは、メレ・アイフェス達だった。