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(45) 再会⑧(専属護衛の場合)

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。 (ちょっと間があきました。すみません)


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 ミナリオが到着するまでの間、宿泊する真新しい家の台所で簡単な野営料理を手際よく作ったのは当然のことながらアッシュだった。

 だが、サイラスは「シチューじゃないのか」と空気が読めない独り言をつぶやき、ディム・トゥーラをあせらせた。


 アッシュはそんな主人(メレ・アイフェス)の非礼に激怒することもなかった。

 サイラスの無謀な行動に怒りを見せたが、食事に関する我儘は彼にとって許容の範囲らしい。


「そういう贅沢(ぜいたく)は、目的地(エトゥール)にたどりついてから侍女に要求してください」


 アッシュはキッパリと要求を跳ね除けた。

 

 専属護衛は食事を終えると、前庭に積まれた四つ目の解体という業務を淡々とこなした。動物に詳しいディム・トゥーラが、四つ目の毒腺(どくせん)と毒牙と可動爪の処理を手伝った。

 サイラスは何もわからず、手持ち無沙汰(ぶさた)になった。その問題を解決したのは、アッシュだった。


「サイラス様、暇を持て余しているならば、その高級木材(リグナム)をもう少し調達してきてください。四つ目には、喧嘩を売らずにお願いします」


 アッシュは、最後に釘を刺すことを忘れなかった。


「お安い御用だが、意外に人使いが荒くねぇ?」


 本当に専属護衛と主人の関係なのか、とサイラスはその発言に(いぶか)しんだ。


「『立っている者は親でも使え』が導師(メレ・アイフェス)の主義なら、主人も多少は使うことも許されると、判断しました」

「誰だよ、そんな主義を布教したのは?」

「カイル様です」


 サイラスはくるりとディム・トゥーラに向き直った。


「おい支援追跡者(ほごしゃ)、早めに訂正しないと俺達がこき使われる未来しか見えないぞ?」

「俺もそんな気がしている」


 ディム・トゥーラは空を仰いだ。





 サイラスが高級木材(リグナム)の量産にいそしみ、さらに素材の山を築いた頃に、移動装置(ポータル)が起動した。

 荷馬車が1台ほど出現し、その御者台(ぎょしゃだい)には専属護衛の制服に身を包んだ茶髪の男がいた。


「ミナリオ、荷馬車は3台頼んだはずだが」


 アッシュは登場した同僚に眉を(ひそ)めた。


「単純な御者(ぎょしゃ)不足ですよ。移動装置を使えて、事情に精通している専属護衛なんて、私とアッシュとアイリぐらいじゃないですか。大丈夫、()()()に2台確保してありますから」

「そういえば、そうだな……」


 アッシュを納得させると、ミナリオと呼ばれた専属護衛は御者台から飛び降りた。彼はサイラスの前に立つと丁寧に一礼をした。


「お帰りなさいませ、サイラス様。ミナリオと申します」


 男は何もわからないサイラスに対して自己紹介をしてくれた。『事情に精通』とはそう意味でもあることに、サイラスは気づいた。


「あんたも俺の専属護衛?」

「いえ、私はカイル様の専属護衛になります」


 にこり、とミナリオは微笑む。


「え?それ、大変じゃね?」


 思わずサイラスの本音が漏れ出た。

 うんうん、とミナリオとディム・トゥーラは、その言葉を否定せずに深く頷いた。アッシュまでもが、否定しなかった。


「エトゥールの専属護衛の中で一番胃が丈夫な男を胃潰瘍にした導師(メレ・アイフェス)――カイル様はある意味、有名になりましたね」


 ぼそりとアッシュが告げる。


胃潰瘍(いかいよう)になったのか……」

「シルビア様に治してもらいました」


 サイラスは一気にこの不幸な専属護衛に同情した。

 胃の丈夫な人間を胃潰瘍にするとは、カイルはどれだけ極悪非道な地上生活をしていたんだ――と、サイラスは呆れた。

 だがもしかして観測ステーションでカイルの支援追跡者であるディム・トゥーラが胃潰瘍にならなかったのは、体内に常備されている治療用マイクロチップがあったからではないだろうか。


 その可能性は大いにある。


 サイラスはちらりとディム・トゥーラを伺ったが、確認することはやめた。

 ディム・トゥーラの「虎の尾」は、間違いなくカイル・リードに関することであり、踏み抜くことは四つ目と対決するより恐ろしいことだった。

 サイラスにも学習能力はあった。


 ミナリオの持ってきた一台目の荷馬車は、(まき)だけでいっぱいになってしまった。

 一度エトゥールに戻ったミナリオは、二台目の荷馬車に乗せる予定の積荷に驚いたようだった。


高級木材(リグナム)じゃないですか?!」

「そんなに驚くことか?」


 地上の記憶がないサイラスには、驚く意味が全くわからなかった。


「あまりにも硬過ぎて、伐採に時間がかかる材木です。硬いからこそ、盾や防壁などで重宝されていますよ」

「売れるか?」

「もちろんです。いったい、この量をどうやって――」

「ただ、斧を振り回して」

「…………………」


 言葉を失ったミナリオの肩を軽く叩き、作業の続行を促したのはアッシュだった。


「ミナリオ、『メレ・アイフェスの常識は、エトゥールの非常識』――サイラス様は昔と変わらない安定の非常識さを継続中だ」

「おい、アッシュ!本当に俺の専属護衛なのか?!口が悪いぞ?!」


 思わずサイラスは突っ込んだ。


「私の知っているサイラス様は、口が悪いのを許してくださいましたが、もしやお堅くなられたとか?」

「それはないな」


 思いっきり否定したのはディム・トゥーラだった。

胃潰瘍ってね、胃壁が血で真っ赤なレベルだと、水を飲んでも吐くし、痛くて歩けないし、胃カメラも痛いし、病院内を看護婦さんに押してもらって車椅子で移動するのよ(意識朦朧歩行困難)(ぼそぼそと作者つぶやく)

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