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(40) 再会③(専属護衛の場合)

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

土曜日の矢沢永吉のツアー初日(盛岡)のために、金曜日から出かけておりまして、本日帰りつきました。

いや〜〜元気もらいました。

そんなわけで更新が止まっていてごめんなさい(土下座)


ブックマークありがとうございました!

現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

『どうして、こんな重要なことを黙っているのさ。酷いよっ!』


 予想通りカイルの思念は、文句から始まった。

 慣れたディムは耐えられたが、他の精神感応者(テレパシスト)なら失神していることだろう。耳元で大音量の絶叫を浴びるのに等しい。遠距離にもかかわらず、カイルの思念波は、相変わらず強すぎた。


 いつもより遮蔽(しゃへい)を厚くして正解だった、とディム・トゥーラは自分の読みの深さを自画自賛した。

 もっとも人を失神させる凶悪な思念波を繰り出しているような精神状態は、負荷が高く、カイル自身にはよくない。

 カイル・リードの支援追跡者(バックアップ)としては、文句につきあい、思念の安定化につとめるべきだった。いつものこととはいえ、実に面倒くさかった。


「落ち着け、この事態の対応に追われていた。検査も多数あったし、本人がそばにいるのにお前と連絡がとれるわけがないだろう」


 ディム・トゥーラは用意していた台詞(いいわけ)を伝えた。

 嘘ではない。

 カイルと対応するときに、嘘は時間の無駄であった。同調能力を持つカイルは、人の嘘を見抜く特質があるからだ。


 カイルの溜息のような諦めの思念がきた。

 黙っていたことに憤慨する――ディム・トゥーラの状況から言えば、それは我儘のようなものだという自覚がカイルに生まれたらしい。それはディム・トゥーラの思う壺だった。

 

 素直というか、誘導しやすいというか、もう少し俺の言うことを疑え、と矛盾した葛藤がディム・トゥーラの中に生まれた。


『サイラスの記憶がないって本当なの?』

「本当だ。イーレに続いての二例目なんだぞ?俺が対応に追われたことを少しは理解しろ」

『それは……理解するけど……』


 相変わらずカイルの喜怒哀楽の心象は、その相方の精霊獣(ウールヴェ)のイメージと完全に一致していた。

 ディム・トゥーラと同じ名前を与えられた子供の狼(トゥーラ)が不服そうに尻尾を床に何度も打ち据えて、苛立ちを示している情景が浮かんだ。

 ディムは、カイルの苛立ちを押さえるために、情報の開示を始めた。

 

「サイラスの記憶に関しては、かなりの重症ともいえる。専属護衛アッシュのことも覚えてなかった。少しは反応を期待したんだが、ダメだった」

『――だからアッシュだけを迎えに指名したのか……』

「状態を観察するには、一人一人に対する反応をみるしかあるまい。どこまで忘れているのか、手探り状態で確認しているところだ。カイル、お前はこの状態を先見(さきみ)していたか?」


 先見(さきみ)――カイルが『世界の番人』という強大な精霊と同調してから目覚めた未来予知能力だ。

 代わりに『精霊の姫巫女』と呼ばれたエトゥールのファーレンシア姫や、西の民の再優秀な占者であるナーヤは、先見の能力を失っている状態だった。

 カイルが体内にその存在を保護しているために、彼女たちは未来情報を得るための対話ができなくなったのでは、とディム・トゥーラは推察している。 


『してるわけないでしょ?!してたらもっと冷静に対応しているよっ!』

「もっともだな」


 大災厄で力の消耗をした『世界の番人』は、まだカイルの中で眠りについている。だが、だからといって今回の事態に『彼』が、関与していないとは言い切れない状況だった。

 もしかして『世界の番人』は、サイラスが記憶を失う未来を知っていたが、カイルに伝えてないだけではないだろうか?

 

 今それを確かめる手段を、ディム・トゥーラは持ち合わせていなかった。


『それで、記憶の消失はどの程度なの?』

「地上降下をしたこと自体を忘れている。お前が行方不明になって地上で発見されたあたりまでしか保持されていない」


 遠まわしに伝えた真の意味をカイルは正確に受け取った。


『まさか、リルのことも……』

「その可能性が大いにある」


 カイルの思念が黙り込んだ。

 養い子に対して過保護だったサイラスが、その養い子の存在自体を忘れてしまった――カイルが動揺していることがディム・トゥーラに瞬時に伝わった。


「サイラス自身も今の状態を持て余しているから、一気に刺激を与えたくない。とりあえず慎重に行動したい」

『………………わかった……』


 カイルはディム・トゥーラの小細工にまだ気づいていない。なぜ、サイラスと二人で降下するまで、サイラスの状態をカイルに黙っていたか。

 気づいたら今の3倍は、文句の思念が飛んでくるだろう。

 ディム・トゥーラは、話題をさりげなくずらした。


「イーレはどうしてる?」

『とんできて、ずっとここに待機しているよ』

「俺とサイラスが到着するまで、エトゥールに滞在して欲しいんだが……」

『もちろん彼女はそのつもりだよ。今、どこに?』

「アッシュと合流して、例の小屋まで来た。一泊して、サイラスの反応を見守りたい」


 カイルの思念がためらうように告げてきた。


『……あの小屋は、消失前の形状をリルの記憶から拾って再現しただけで、似て非なるものだよ。リルはサイラスの死の元凶になったと、行きたがらなかったし……』

「だろうな」


 ディム・トゥーラは、リルがいまだに自責の念を持ち続けていることに気づいていた。

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