表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
37/70

(37) 降下③

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

ネトコンの一次に落選しました。凹んだので更新がストップしましたが(笑)再始動します。

エトゥールの魔導師の挿絵も描き始めました。(AIイラストは破棄)そのうち改稿と一緒にアップします。

来年のコンテストを頑張るぞ!


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

 意外すぎる言葉に、サイラスはぽかんと口をあけた間抜け面をさらした。


 中央(セントラル)の『選ばれた者(エリート)』であるディム・トゥーラは、言わばサイラスと対極の位置にいる人物だ。イーレが後見人になっていなければ、縁がなかったであろう天上人のようなものだった。


 いくらディム・トゥーラが、カイル・リードの支援追跡者(バックアップ)という精神防御役であるとはいえ、サイラスにはそこまで感謝される謂れはなかった。

 後ろめたさは、半端ではない。

 サイラスは思わず懺悔をした。


「あ〜〜悪い。俺の降下への立候補理由は、退屈だからとか、面白そうとか、動機不純なものであって――」

「知ってる」


 ディム・トゥーラは、あっさりと言った。


「降下のための事前調査が停滞して手持無沙汰になっていたことも、単調な観測ステーション維持管理業務に飽きが来ていたことも、イーレが残留したために観測ステーションに残っていたことも知っている」

「バレバレなわけね……」


 改めて言われると、さすがに羞恥心が湧き上がってくる。ディム・トゥーラは所長エド・ロウの右腕であり、そういう意味では、上司の評価査定が誤魔化しがきかない状態だった。


 今年の特別手当(ボーナス)は、今の発言で消滅したかもしれない……。


 サイラスは思わぬ方向の絶望に、両手で顔を覆った。


「ついでに言えば、研究者とは距離を置いているサイラスが、珍しくカイルと交流していたのも知っている」

「――――さすが子守役」

「だから子守役と言うな」


 ディム・トゥーラは、むっとしたように反応をする。

 人は認め難い事実から目を逸らすものだな、とサイラスは哲学的に納得した。


「まあ、カイルはそこらのプライドの高い研究員とは違う、究極の変わり者だったからな。降下隊員(オレ達)とよく交流していた。蔑視することもしない稀有な存在だったよ」

「ああ、なるほど」


 ディム・トゥーラも納得した。

 降下隊員は一癖も二癖もある脳筋集団だ。同じ研究都市に属するとはいえ、本職の研究員に比べて諸事情により、職位ははるかに低い。サイラスが指摘するように、『臨時雇い』として蔑視する研究員は存在する。


 知能を重視する研究者と、筋肉に価値観を持つ降下隊員の溝は、古来から深かった。


 その降下隊員達にも受け入れられるカイル・リードの人たらしぶりも、規格外すぎた。

 ディム・トゥーラのため息に、サイラスは笑った。


「カイルの能力も面白いな。上空降下(スカイダイビング)を同調で再体験できるんだぜ?もう、降下隊員に大ウケでさー、擬似訓練(シミュレーション)よりリアルすぎで、娯楽の一つになってて――」

「……………………なんの話だ?」


 ディム・トゥーラの声色が、氷点下まで下がった。

 いったいどこが地雷だったのか、サイラス・リーにはわからなかった。


「えっ〜と、カイルは降下隊員と仲良くしてました、って話……」

「………………同調で何をしていたと?」

「………………上空降下(スカイダイビング)の再体験」

「………………どうやって?」

「俺達の体験記憶を読みとったあと、その惑星降下と無縁だった相手と同調して、降下状態を脳内再現してみせた。緊張感と興奮度合いまで、正確すぎて面白かったぜ」

「…………あの馬鹿がっ!」


 ディム・トゥーラは、怒りを押さえ込むかのように、罵った。


「え?これって、怒る案件?」


 サイラスは困惑した。


「あいつが、この惑星に精神だけで降下することをあっさり承諾したのは、そういう体験をしていたからじゃないかっ!何が、『旧時代のアトラクションに似ている』だっ!あの野郎、他の精神感応者(テレパシスト)が耐えきれずに昏倒して脱落するのを、予想してたに違いないっ!!」


 サイラスも噂で聞いていた。

 精神跳躍(マインド・ダイブ)の実験結果は散々で、カイル・リード以外は、医務室の住人になったのだ。シルビアなど、多数の入院患者の発生という事件に対応に時間をとられ、イーレの定期健診を延期してた。


「あ〜〜、確かに肉体での降下は、未体験の人間にはキツイなあ。高所恐怖症なら、なおさらだし――それを精神だけでやるというのも、無茶だな。遥かな高度を滑空するシャトルから飛び降りたいなんて、引きこもりの研究者(テレパシスト)は思わないだろう。ははは……カイルもなかなかの策士だなあ」

「いつからそんな遊びをしていたんだ」

「他の惑星探査の時から、ずっと」

「――」


 ディム・トゥーラは、ため息をついた。


「もういい。あとで本人にきく」

「あちゃ……カイルのためには、黙っておくべきだったかな?ところで、俺達、カイル達のところまで、歩いていくわけ?」

「まさか」


 ディム・トゥーラは、肩をすくめてみせた。


「迎えを頼んでいる。そろそろ着くだろう」


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ