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(32) 第1回メレ・アイフェス集合会議⑦

お待たせしました。本日分の更新になります。 お楽しみください。

ブックマークありがとうございました!


現在、更新時間は迷走中です。 面白ければ、ブックマーク、評価、布教をお願いします。(拝礼)

「カイル様は第3の道を選びました」

「第3の道とは?」

「毛嫌いをしていた世界の番人に頭を下げて、癒していただくことで事件の隠蔽を計りました」

「隠蔽とは、人聞きの悪い」


 カイルがアッシュの言いように、むくれた。


「秘匿や隠し立てという表現の方がよろしいですか?」

「アッシュ、僕は言葉遊びがしたいわけではない。もう少し専属護衛として主人の立場に気をつかうとかないの?」

「ご不満でしたら、いつでも解雇していただいて結構です」

「ヤダ」


 カイルは専属護衛の退職願望を蹴り飛ばした。


「カイル、あなたが世界の番人に頭を下げるほど、切羽詰まっていたとは驚きです」


 それまで黙って聞いていたシルビアが、無表情のままつぶやいた。突っ込みが正確すぎて、カイルは呻いた。


「シルビア、君ももう少し同僚の立場として、言葉を選んでよ」

「時間が無駄ですので」


 エトゥールの王妃は、義弟に対して遠慮は皆無だった。そもそもシルビアは、世界の番人に肩入れする傾向があった。

 カイルは溜息をついて懺悔した。


「実際、切羽詰まっていたよ。ファーレンシアの一生に一度の婚約の儀だし、僕の顔の傷で水をさしたくなかった。晴れの舞台のファーレンシアの笑顔を守りたいというのは当然じゃないか。世界の番人に頭を下げる方を選ぶに決まっている」


 ファーレンシアが顔を真っ赤にしているのを、カイルは気づいてなかった。

 さりげなくイーレはファーレンシアのそばに移動して、彼女にささやいた。


「ファーレンシア様、しっかり。カイルの無意識無双に負けないでください」

「イーレ様、勝てる気がしません。心臓がドキドキして卒倒しそうです」

「末期ですね……」


 イーレは気の毒そうに、ファーレンシアを見つめた。

 カイルは、無自覚に人を魅了する悪癖があった。エトゥールの姫から、果ては敵国カストの有名な大将軍まで、カイルの素の言動により人生を変えたと言ってもいい人物が多数存在している。


「と、いうことは、やはり当時は世界の番人のみの癒しの技術で、今回は世界の番人と同調するカイルの規格外の癒しの技術になりますね。やっぱり、数段パワーアップしているという仮説が成立します。同調のせいでしょうか?」

「どうやって証明するのさ。僕が自傷して傷が治る時間でも計測する?」

「「「「やめてください」」」」


 綺麗に専属護衛達、医療担当者、伴侶の唱和が揃った。


「ごめんなさいね。この子達、研究馬鹿だから、仮説とか証明とか反証を検討するのが大好きなのよ。本当に馬鹿は死なないと治らないわね。いえ、この連中に限っては死んでも治らないかも」


 子供姿でありながら上司の立場であるイーレが関係者に詫びるが、その言葉はフォローを装って、明らかにフォローではなかった。


「…………イーレ様、『この子達』という複数表現は、誰を指しますか?」

「カイルでしょ、クトリでしょ、ディム・トゥーラでしょ、アードゥルにエルネスト……」


 ファーレンシアの質問に、イーレは指折りつつ問題児候補生の名前をあげていく。


「…………賢者のほとんど、と言うことですか?」

「あら、ほんと。びっくりだわ」


 イーレは、すっとぼけた。


「シルビア様は?」

「シルビアは中立よ。彼等ほど、ひどくないわ」

「…………イーレ、比較対象の男性達の研究馬鹿度合いがひどすぎるので、私が中立どころか世間一般的にはカイル達寄りと判断されそうなので、不本意です」


 シルビアは真顔で切実な抗議をした。


「ああ、そういう誤解も生まれるわね。由々しき事態だわ」

「サイラス様とイーレ様が、含まれていませんが……?」


 アッシュが片手をあげてイーレに質問をふる。


「私とサイラスは、頭を使って理論を検証するより、本能で行動する方が好きなの」

「…………つまり?」

「脳筋」


 カイルが答えて、次の瞬間イーレに殴り飛ばされた。





「え〜〜と、しばらくリルには聖堂の客間に滞在してもらう、仔竜を預かっている人はマメに観察報告をあげて共有する、僕はディム・トゥーラと連絡がとれないか試みる――多分、無理だけど」


 カイルが今後の方針の結論を告げるが、クトリが内容に突っ込んだ。


「ディム・トゥーラとの連絡が無理というのは?あなたなら観測ステーションまでの念話は、お茶の子さいさいでしょう?」

「ディムが最近、僕を遮蔽(シャット・ダウン)するのが上手くなったの」

「つまり無視される、と…………」

「落ち込むから、やめて」


 カイルは唇を尖らせた。


「と、いうことは、観測ステーションでカイルに知られたくない何かが進行中ってことですか」

「不吉なことを推測するねぇ」


 イーレはクトリの推測に賛同した。


「ありえるわね。だって、中途半端な情報をカイルに与えたら、カイルが不安定になるでしょ?すぐに帰還できないなら、絶対に回避すると思うの。遮蔽も納得だわ。あの支援追跡者のカイル至上主義を舐めちゃいけないわよ」

「そういえば、そうですね」

「もしもし?君達は僕をなんだと思っているの?」

「「ディム・トゥーラを悩ませる問題児」」


 イーレとクトリの即答に、カイルは撃沈した。

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