表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エブリシング・オンライン  作者: 花南とや
5/48

初心者殺し


 突然背中にドンっという衝撃と痛みが与えられた。

「ぐぼはぁ!」

 体が吹っ飛ぶ。いったい。

 見ればHPがすごいスピードで減って、1になっていった。

 わけがわからないまま、慌てて確認すると、そこには1匹のモンスターがいた。

 黒ずんでいる汚れた毛並みで、ひどい匂いをさせている。

「うっそでしょぉ」


『イビルドッグ』

 まだレベルの低い鑑定では名前しかわからないが、存在は知っていた。


 最初の町なだけあって、ルーズの町周辺には基本Lv1〜3の弱いモンスターしかいない。

 そのたった1つの例外が目の前にいるコイツ。イビルドッグ。通称初心者殺し野郎。

 今のところ誰も倒す事ができず、数多くのプレイヤーを葬ってきたヤバいモンスター。

 遭遇したら運が悪かったと思って諦めろ、と攻略版で書かれていた。

 奴が野郎なんて言われてるのは、ただ強いだけじゃなくその攻撃にあった。

「あっ・・・・・・無くなってる!」

 警戒しつつ自分の持ち物を確認すると、ナイフが無くなっていた。

 そう、コイツ、人のアイテムを盗みやがるのだ。

 何が盗まれるのかは色々だが、人によっては『本職ガチャチケット』で手に入れた、高レアアイテムを持ってかれる事もあるらしい。

 その上最後には殺される。仲間を集めて数で報復しようにも、大人数でいると現れないらしい。

 とても頭も良い犬なのだろう。


 どうしよう。

 とりあえず低級のHP回復ポーションで回復したが、このままじゃ私もリリスも殺られる。勝つのも逃げるのと無理だ。

 ・・・感情視で感じてる事がわかれば、打開策が何が浮かぶかも。

【  楽  】

「私ぶちのめして楽しんでやがんなコイツ!」

 む、ムカつくぅ!心なしか口も笑ってる気がするアイツ。

「ガル」【  哀  】

「何で急に哀しんでんの!?」

 今の一瞬で一体全体何が起きたの??

「グルゥア」【  怒  】

「今度は怒るじゃん情緒不安定かよ!」

 いや、ふざけてる場合じゃないなこれ。ほんとにまずい。今にも飛びかかってきそう。ちゃんと考えないと。


 まず最初の楽。これは私を笑ってる感じで間違い無いと思う。

 次の哀。どうしてそうなった、哀しむ要素どこ?いや、思考を止めるな。・・・もしかして盗んだアイテムか?

 例えば相手のアイテムをランダムで盗むスキルで、盗れたのが欲しいのじゃなかったから、悲しくなった。

 そう考えたら、次の怒もわかる。多分逆ギレしてんだコイツ。

 じゃあコイツが欲しい物を差し出せたら、落ち着かせられる?犬の、獣の欲しがる物・・・

「おい!これをやる!」

 ホーン・ラビットの肉を取り出し、奴に向けて投げ渡した。


 イビルドッグは最初は警戒していたが、やがて吹き出しの中を【  喜  】にして、美味しそうに肉を食らい始めた。

「やっぱ肉だったか」

 まあ野生の獣が欲しがるものとか、それくらいだよな。

 あっという間に食べ切ったアイツは、立ち去らずその場で座り、私を見つめていた。

「・・・・・・はい、2つ目」

「ワンッ」【  喜  】

「急に犬全開になるじゃんさっきまで獣丸出しだったのに」

 その後も追加を求められ、しょうがなく渡し続ける。


「ワンワンッ」

「さっきので肉は無くなったから、もう無いからー」

「ガルッ」【  怒  】

「怒んないでよぉ」

 12個全部差し出したのに、まだねだってくる。マジでもう無いのに。

「キュー」

「リリスまでどしたの?」

 手首に巻きついたまま、袖をぐいぐい何かを訴えている。

 何だろう?・・・もしかして、あれか?

「リリス、もしかして使い魔フード食べたいの?」

 黄色いお団子みたいなフードを、1つ取り出して手のひらに乗せる。

「ガウガウ!」

「ぎゃあ!ちょ、やめ、これはリリスのだから」

 でもリリスは首?を振っている。もしかして、コレをあげようってことだろうか。

 でもリリスの、私の使い魔用に買ったものだしなー。

 殺意が鳴りを潜め、寄越せ寄越せとじゃれついてくるイビルドッグを見ていると、ある欲が湧いてくる。


 かつて、私が初めて飼いたいと思った動物は、犬だった。

「コレは私の使い魔の物だよ。・・・でも、君がテイムされてくれるなら、あげる。コレだけじゃない。肉とかも、手に入れたら君に優先的に渡すよ」

 気に入らない、と激昂して噛み殺されるかもしれない。

 でも!!

「どうかな?」

 彼は少し考えるようにグルグルその場で回る。

 そして、私の目を見つめながら、その場でぺたりとお座りした。

 これは、オッケーだろ!

「じゃあ、いくね。『テイム』」


〈イビルドッグをテイムしました〉

〈従属魔法Lv1がレベルアップしました〉


 やったあ!成功した!2体目も無事にテイムできたおかげで、従属魔法もレベルアップした!

 彼は喜ぶ私に目もくれず、手の上に乗せたままになっていた使い魔フードを食べていた。

「ガウガウ」【  喜  】


評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ