星芒館
ついに準備が整ったらしい。
ウィステリアちゃんから連絡が入り、クランのみんながクランエリアに集まった。
みんなって言っても、4人しかいないけど。
「いやーついにかぁ」
「どんなんだろうね」
完成した設計図は確認していない。ウィステリアちゃんの感性を信じてるので。
そういえば、ウィステリアちゃんとアッシーはすでに知り合いだったらしい。さくたろー経由で会ったことがあるみたい。
まぁお互い「友達の友達で、一応顔は知っている」ぐらいの認識だったみたいだけど。
でも相性は悪くないっぽい。良かった。
地面に材料を並べていたウィステリアちゃんが、駄弁っていた私たちに声をかける。
「じゃあ皆さん!作るっすね!」
みんなで息を合わせてカウントダウン。
「「「3! 2!! 1!!!」」」
ポンッ!!!
瞬間素材の山が、景気のいい音声を響かせ白い煙を弾けさせる。ギャグ漫画のデフォルメされた爆発現場みたい。
えぇー。今までリアルな表現多めだったのに、なんで急にこんなコミカルな感じ出してきてんの??
「やー相変わらず見てて気持ち良いな」
「うん。話には聞いていたけれど、確かに楽しいね」
「えへへ」
気にしてんの私だけじゃん。
煙が消えて、そこには大層立派でおっきなお屋敷が堂々と鎮座していた。
「おー城みたい!!」
すっごーい!!
「魔女の棲家、をイメージしてみました!周囲の景観に合わせて、怪奇小説にでてきそうな感じっす。
でも照明を周囲に多く取り付けることでファンタジーのお城要素を増し、怪しくもキラキラ輝く館にしてみたっす!!」
なるほど、ちょっとよくわかんないところも多いけどいろいろ考えてくれたことはわかった。
「じゃあ中を案内するっす!」
「この館は上から見るとカタカナの『エ』の形になってるんすよ。とりあえず一棟、二棟と呼び分けますね。今から入る、正面玄関があるのが一棟のほうっす」
両開きの大きな扉を開けると、中は広いし明るい。なんというか、外側とは雰囲気が全然違う。
「一棟の内装は、明るくアットホームなみんなのお家をイメージしてます。あっ一棟は土足厳禁っす。ここで靴の装備は外してください。スリッパや室内靴ならオッケーす」
「りょうかーい」
返事しながら、ルディの足裏を拭いてやる。ロアは私の肩にずっと乗ってたし、リリスはほぼ浮いてて地面には降りないから問題ない。レティは・・・その靴脱げるんだ!?進化した時から履いてるから、外せないヤツだと思ってたー!
「左の部屋が食堂、調理場、食料品の貯蔵庫があります。右側が遊戯室と、使い魔用の部屋。真っ直ぐの階段が2回に続いていて、階段横を進むと中央通路を通って二棟に入るっす。」
「使い魔用の部屋!」
どんな感じの作ってくれたんだろ?楽しみ!
「まずここが遊戯室っす」
「おおーデッカいリビングみてー」
さくたろーのいう通りだな。
遊戯室と聞いてイメージした、ダーツとかビリヤードありそうな感じは欠片も無い。
床には寝転ぶと気持ちよさそうな、フワフワのカーペットが敷いてある。すでに配置されたソファーの上には、これまた触り心地の良さそうなクッションが置いてあった。
「人も使い魔も寛げる空間をイメージしたっす!」
「そのうち、ボードゲームなども持ち込みたいな」
「いいなそれー!誰か作んねーかな」
「オセロとかは有りそうだけどね」
探したら街のお店に売ってんじゃないかな。
「そしてこのカーテンの向こうが、使い魔用の部屋ですね。一応扉もあるんすけど、どんな子でも出入り出来るよう基本は開けっぱっす」
良い気遣い!
レティみたいに手がある子ならドアも開けられるだろうけど、ルディじゃ入れなくなっちゃうもんね。
使い魔部屋は天井が高く、またいろんなサイズのペットハウスが設置されていた。
1人になりたい時に使えるようにってヤツだろう。
入ってきたのと反対の壁にもカーテンが掛かってて、外にそのまま繋がってるみたい。出入り自由なわけだ。
「2階以上は、メンバーの個室になってるっす。どれも同じ間取りっすけど、コヒナさんの部屋はクラマスの執務室と繋がってます」
「おぉ、さくたろー執務室だって」
思わず隣の腕をベシベシ叩いた。だって私の執務室だぞ、テンション上がるだろ。
「嬉しいのはわかったから叩くな」
怒られた。
「二棟はサブ職用の部屋と、まだ一冊も無いけど書庫(予定)と、アイテムをしまう保管庫です。正面玄関ほど大きくないけど、あちらにも出入り口があります」
「へぇ、書庫かぁ。じゃあボクが本を集めるよ。欲しかったけれど諦めた本が沢山ある」
アッシーが地味にテンション上がってる、気がする。
「そういや、この建物の名前は何なの?」
「え、それはクラマスのコヒナさんが決めるのがいいと思うっすけど」
「いや、作ったウィステリアちゃんのほうがいいでしょ。此処のこと1番わかってるのは君なんだからさ。それに私、センスないし」
「そ、そっすかねぇ」
うん。わかりやすくソワついてる。ほんとは付けたい名前あったんだな。唇の端がモニャモニャしてんじゃん。
「・・・じゃあ、考えてたやつがあって。『星芒館』って、どうすかね?」
星芒?どんな意味だっけ?
「星の灯りのとこだよ。月の無い夜にもボクらを照らす光だ」
「俺たちにピッタリじゃん!いいなウィステリア!」
「えへ、えへへ」
褒められて照れてる。
「じゃあ決定。私たちの拠点の名前は『星芒館』だ」
いやー無事にフランハウスもできてよかった。
「キュ!」【 嬉、楽、幸 】
「リリスもお家できて嬉しいかー」
柔らかな手をにぎにぎしたら、キュッキュと笑ってくれる。幸せ。
このゲームを始めてしばらく経ったけど、全然飽きないや。もっともっとこの子たちと、新しい仲間とも遊んでたい。
「これからもよろしくね」
こちらのお話、これで完結とさせていただきます。読んでいただき誠にありがとうございました。
こんな俺たちの戦いはここからだ!みたいな終わりにしていいのかとも思ったのですが、書きたいところを書き切った事によるモチベの低下や、私生活の忙しさからこの物語を書き続けるのが難しいと判断し、エタるくらいならと完結いたしました。
また新たな話を書くことがありましたら、その時はよろしくお願いします。
あらためて、ありがとうございました!




