表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
エブリシング・オンライン  作者: 花南とや
42/48

2つ目の試練 その2


「よっしまたでた火鼠仕留めるぞー!」

 小さな体でちょこまか動くネズミを鞭で引っ捕まえ、魔法の的にして倒す。

 安全な倒し方なんだけど、完全に私が悪者だ。

 まあ致し方ない。


 小休止の時に、ドロップした火鼠の肉をルディにあげたら反応が良かったので、アイツは積極的に狩りに行くことにした。


「うひひっルディのご飯になるが良いわー!」

「コヒナ今スッゲー顔してるぞ。邪悪な化身か?」

 やかましい。


 ねずみ算なんてもんもあるけど、ほんとにワラワラ見つかるなー。

 ご飯集めが捗るぜ!

「さっきっから火鼠ばっかり狙いやがって。そのうち亡霊に狙われるぞー」

「亡霊?」

 なにそれ。

「まだ正確な情報じゃないらしいけどよ。同じモンスターばかり倒しまくってると、亡霊に襲われるって噂があるんだよ。掲示板とかで襲われたって奴がいてな」

「私ルーズ付近で兎とスライム狩りまくってたけど、そんなん会ったことないよ」

「1層での遭遇の話は聞いたことないから、最初の所は大丈夫なんじゃね?」

「なるほど・・・まぁでも、あったらあったでテイムしてやんよ」

 亡霊ってことは死霊系でしょ?せっかくうちの子3人とも死霊系で揃ったんだし、機会があるなら合わせるのも良いかもしれない。

 コンセプトチーム感あるし。そういうの、嫌いじゃないんだよな。


「そういや、コヒナまだただのテイマーなんだっけ」

「そうだよ」

 今の私の『従属魔法』はLv9。

 あと1回レベルアップで上位転職の道が開けるけど、その1回が遠い。

 テイム以外だと経験値が溜まりづらいみたいで、なかなか上がらないからだ。

「・・・じゃあ、あえて亡霊狙いで火鼠倒し続けんのはアリなのか。何でも亡霊は、倒したモンスターの姿をしてるらしい。お前ああいう鼠も好きだろ」

「大好き♡」

 個体差はあるけど、体長は約20センチ+胴体部分より長い尻尾。フサフサの体は全体的に赤茶の毛で、お腹は白色。おっきな耳と細長い尾先から炎を噴き出している。

 はい。可愛い。リアルより、キャラクター味があるけど、全然ありです。



 なんて会話して、余裕ぶってたのがいけなかったのかもしれない。


 ルディの警戒の声で、ヤツの存在に気付いた。

 パッと見の姿は、火鼠に似ている。

 しかし、サイズが1.5倍くらい大きい。耳と尾先の炎は紫色になっていて、黒々としたオーラを放っている。

 目付きも鋭い。殺気を感じる。


 感情視によって見える吹き出しには、

【  怨  】

 この1文字だけが刻まれていた。


 間違いない。コイツが亡霊だ。

「鑑定結果『火鼠の亡霊』だとよ。レベルは80」

「マジかそんな強いんか。私早まったかも」

「どっちにしたって手遅れだ。もう逃げらんねぇ」

 戦うしかないかー。

「よっしゃあああ!!やったったんぞおおお!!」



「ちょ、燃えてる燃えてる燃えてるー!!『アクア』ー!!」

「ガゥア」【  怒  】

「チ、チア」【  警  】

「キューキュ!」【  殺  】

「ちいせぇ身体でちょこまかと・・・くそっ」


 めちゃくちゃに苦戦してる。


 いやマジで強いんよコイツ。

 ちっちゃい身体で動き回るから攻撃を当たらんないし、私たちは陸地で足場を確保しないといけないのにアイツ普通にマグマ入る。

 近距離だと尻尾を鞭みたく使ってくるけど、離れても火魔法とか使ってくる。ただの炎じゃなくて、紫色の火で。

 しかも威力がヤバい。耐性が全然働いてない。

 主に火鼠を倒したのが私だったからか、私ばっかり狙われてるし。


「うわっ何だこれ!?おいコヒナ!ステ確認しろ!!」

「はあ?なんで・・・気持ち悪!?」

 さくたろーに言われて自分のステータスを見てみたら、状態欄がなんか気持ち悪いことになっていた。


 状態欄には、バフ、デバフ、毒や火傷の状態異常といった、アバターの現在の状態が記載される。


 今の私のステータスには、その欄におどろおどろしくデフォルメされた漢字の『呪』っぽいものが、大量に付与されていた。

「どうにも調子悪いから、気付かないうちにデバフでもくらったかと思ったら案の定だ」

 なるほど、さすが戦い慣れてるさくたろー。

 私は全然気付かなかった。でも言われてみれば、確かに普段の私より動きが鈍くなってる気がする。

「リリスのスキルに『呪い』って、攻撃時にステ低下付与のデバフスキルがある。それと同系統のヤツなんじゃないかな」

「お前えげつない量くらってんじゃね」

「うるさいその通りだわ」

 集中砲火喰らってるからな、私。呪の文字がゲシュタルト崩壊しそうなくらいだよ。


「とりまデバフ解除してくぞ・・・・・・あれ?」

 ?どうしたんだろう。全然消えてないけど。

「この呪い?『キュア』系の呪文が効かない」

「え"」

 まさかの解除不可?え、無理くない?

「な、なんかないの!?解呪とか、なんか呪いを清めそうな感じのやつ!!」

 今また、ヤツの攻撃により『呪』が1つ増えた。

 ただでさえ実力差があるのに、時間がかかればかかる程不味い事態になっていく。

「あーっと、えーっと・・・あっこれ、わかんねーけど『浄化』!」

 さくたろーが何かのスキルを使った瞬間、アイツの体に淡く光るエフェクトが起きた。

「よっしゃあああ!!!」


「俺の初期ランダムスキルに『浄化』ってのがあって、これで呪い消せるわ!!今まで使い道の分からねースキルだったけど、ついに役立つ日が来た!!!」

「やったー!さくたろーナイス!!」

「そして悪い情報だ!!レベル1だから効果弱い!!」

 クソがよお!!!!!


「とりま私は放置でいいよ装備と称号のおかげでまだ余裕あるから。他のみんなのデバフ解除を優先して」

 私はこのまま的役に達して、攻撃は他のみんなに任せよう。




 死ぬ。マジで死ぬ。いやもう死んだ。

 そんな思考に支配されること何十回か。

 回復と呪い解除で持久戦に持ち込んで、体感数時間は戦い続けてる。待ってたHP回復薬もMP回復薬も使い切った。

 その甲斐あって、亡霊もだいぶ削れて弱ってきていた。


「『インパクト』ぉ!」

 拳圧を数メートル先まで飛ばす闘術のアーツ。

 さっきまでは余裕で避けられてたさくたろーのコレが、亡霊の横腹に打ち当たり、壁に叩きつける。

「よしっ!」

 あと2、3発当たれば削り切れる。

 これは勝てる!


「ガハッ!」

 やば!油断して燃やされちゃった!!

 ちょ、マズイHPの減りあーもー0になるマジで今回は死んだぁ。


 くそぅ、せっかくもうちょっとだったのに。ついに初デスしちゃったかー。


「『リザレクション』」


「へ?」

 あれ?死んだはずなのに、HPが1残ってる。

「蘇生魔法!でも今ので俺のMPきれたから!!」

「さくたろーマジでありがとー!!!」

 ほんとにありがとね感謝するよ朔夜くん!

 でもこれで完全にプレイヤー側の回復手段が消えたのか。私もアイツも1発喰らったら死ぬ。どーしよ。

 ・・・・・・亡霊もかなり弱ってる。ヤツに遭遇する前にしてた話、やってみるか。失敗してもやらなくても、どっちにしろ死ぬしかないんだし。

「『テイム』」


〈火鼠の亡霊をテイムしました〉

〈従属魔法Lv9がレベルアップしました〉

〈戦闘上位職への転職が可能となりました〉


「や、やったあぁああーーーー!!!!」

「え?・・・マジでテイムしたの??馬鹿だろ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] 絶対なつき度マイナススタートだろ
[一言] 自分を恨んでる奴をティムとか…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ