2つ目の試練
まさかこんなところに存在するか。
いや、第1層の時のもすっごい辺鄙なとこにあったしな。
多分今のは裏口侵入だったんだろうけど。前と同じで。
気付くのは難しいけど、誰にも見つけられないってほどでは無い。
この島もある程度レベルがあれば来られるし、自分のレベルが足りなくてもパーティーメンバーが1人入れれば一緒に行ける。私達はレティに運んで貰ったけどスキル『登攀』があれば、火口を降りることもできたんだと思う。
全ての隠しダンジョンがそういう、最低限があれば誰もが見つける余地があるようになってるのかも。
はしゃいでるさくたろーに、月夜神の試練で知った情報を教えてあげた。ダンジョンの場所を除いて。
「へぇ〜旧世界に神々の試練、生まれ変わりの旅人達。いいないいな!そういう設定!!」
「さくたろーって神官系じゃん。ゲーム内の神話関連で、なんか知ってる話ないの?私は教会あんま詳しくないから」
「いや、ほぼほぼ初耳だな。稼働している全ての教会を束ねる大神殿が、上の階層にあるってのは聞いたか?あぁ、あと神様。頂点の2大神にそれに従う5神、その下に数多の神がいるってのは知ってる」
2大神と5神?それはガブリール言ってなかった。
「俺が加護持ってる医神様も、数多の神の1柱だ。神官系には医神の加護持ち多いけど、それ以外の加護持ってるプレイヤーはお前以外知らない」
そうだったんだ。
「でも此処をクリアしたら、新しい加護が貰えるんだよな」
「え・・・挑むつもりなの?」
「むしろ挑まない理由がないだろ。レベル40のプレイヤー2人に、強い使い魔3体の5人パーティー。物理、魔法、遠距離、近距離に、回復役まで揃ってるんだぞ。クリアできる可能性は十分にある。もし途中で死んでも、それはそれでゲームの醍醐味ってことで」
まぁ、確かに新発見エリアに突貫は楽しそうだけど。使い魔達は、先に私が死んだら良いわけだし。
「しょうがないなぁ。行こっか!」
進む前に、上に置いてきた子を連れて来ることになった。
リリスは自分で『浮遊』してこれるけど、ルディはレティでも運ぶのが難しい。
なので、従属魔法Lv9『チェンジ』を使った。
位置を入れ替える呪文で、これで私とルディの位置を交換。次に私とレティを入れ替えて、上に行ったレティがまた壁面の穴まで飛んでくる。
これで全員ダンジョン内に揃った。
さくたろーはそれを見ながら、「なんかこういうクイズあるよな」って言ってた。
少し道を進んで開けた場所にでたが、そこには溶岩の川が流れていた。壁からもマグマが噴き出てる。
活火山の中の洞窟にあるダンジョンだからかな。
「多分、火か炎の神の試練だろうな」
「そーだろーねー」
あっじぃ。熱気がこもってる。
頭上に水を出して頭っから被ってみたけど、焼け石に水だわこれ。
「モンスターも燃えてるし」
何体かモンスターにも遭遇した。
火鼠とか、火土竜とか、溶岩の中を泳ぐ魚とか。どいつもしっかりレベルも高くて強いから、無傷撃破とはいかない。
徹底した火責め。火耐性がなかったら危なかったわ。
落ちたら即死の溶岩に気をつけつつ、みんなで通路を突き進む。朔夜くんもマップは全て埋める派の人間だから、その辺は揉めずに済んだ。
2人で雑談しながら進む。人と一緒に挑む冒険も悪くないな。
「ドロップの『火鼠の皮』って、どっかで聞いたことある気がする」
「・・・竹取物語じゃねーの?」
「それだ!かぐや姫が5人の求婚者のうち1人に取って来させようとしたやつ。通りで聞き覚えがあったや。あー、スッキリしたぁ」
「コヒナまだフレンド俺とウィステリアしかいないわけ?」
「う、うっさいな!・・・テイマー友達作れるかと思って、ちょっとテイ協に居座ったりしてみたけど、できなかった」
「変なことでも言ったか」
「いや、自分の使い魔の話題で殴り合いしてる人しか居なくって。気持ちはとってもよくわかるけど怖いなーと。声かける前に逃げた」
「あー、そういや聞いたな。テイマー界隈は魔境だって。でも気持ちがわかる時点で、お前は立派な同類だぞ」
「この前はあんま見なかったけど、さくたろーの戦闘スタイル怖いね」
「は?なんで?」
「その、何?継続回復魔法?を、自分にかけてひたすら殴るやつ。味方でも嫌なやつだと思うから。重い攻撃くらったら普通の回復もするし、状態異常もすぐ治すし」
「ははっ!確かにどんだけ殴られても回復して戦い続けるから、友達からはゾンビ神官って言われたわ」
「そうだ。今度おばけ柘榴の苗木貰っていいか?」
「え、ついに?」
「おう!無事『上級農家』に転職して、上級クラスの育成ができるようになったし、樹を育てる『植樹』のレベルも上がったしな」
「おー!おめでと」
「お前はサブ職まだ転生しないのか?」
「あー・・・実は今日さくたろーと合流する直前に、調合Lv10になった。時間なかったからまだ転職はしてないけど」
「やったじゃん。もしかして『上級調合師』以外も出たのか?」
「・・・あと1つ、候補に出てきたよ。『毒薬者』」
「それにしろよそれがお前の天職だ。俺を毒殺したんだし」
「やかましい!」
「海の階層だから、水の神だと思ったんだけど全然違ったなー」
「まあ第1層が闇属性を司る神だったんだし、階層の特徴とはまた別なんじゃない?」
階層の特徴と、そこにある試練を用意した神が一致していない。
「正規の入り口から入るには、対応の神の陣に魔力を倒す必要があるんだよな。広い階層の中でダンジョンのありそうな場所を見つけ出して、その試練を用意した神を当てないと入らないようになってんのか」
「神については当てずっぽうでも行けるでしょ」
「大神殿で入手できる神の紋の数が膨大だったら?あるいは、間違えると当分入れないペナルティがあるとか。あり得る話じゃね」
「あー確かに」
E・Oは自由なゲームだ。
強さを求めてガンガン戦うもあり、のんびりスローライフ感覚で楽しむも良し。戦闘職だけ鍛えてる奴もいれば、ウィステリアちゃんみたいにサブ職ガチ勢やってる人もいる。
最初にミッションみたいな感じで「冒険者になろう」って言われるけど、アレも無視して冒険者にならないこともできるみたいだし。
何にでもなれる。何だってできる。
プレイヤーの共通点は旅人であることだけ。
そんなゲームが第6層まで解放されて、やっと出して来る旅人のやらないといけないこと。シナリオらしいシナリオだ。
それを簡単にクリアさせてくれるとは思えないし、さくたろーの言うことも一理あるかもしれない。




