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エブリシング・オンライン  作者: 花南とや
37/48

後輩大工さん 


 第3層の中心都市キルッコ。


 私たちはその中にあるカフェに来ていた。

「ここが待ち合わせの場所?」

「おう、この店個室があるからさ」

 カフェで待ち合わせ、オシャレな感じがするな。なんとなくソワソワする。

「あっ!せんぱーい!!ここですよー!」

 声デカ、あの人か。



「こいつは俺のリアル後輩」

「こんにちは!わたしはウィステリアです、よろしくお願いします!!」

「こっちはうちのクラマスで、俺のリアル従姉妹」

「・・・コヒナです。こちらこそ」

 元気ぃ。

 ポニーテールを揺らした、見るからに快活な女の子。陸上部にいそうだな。リアルでは関わんないタイプだ。

 身長と手的にドワーフかな。


 プレイヤーの選択できる種族の1つ、ドワーフ。

 性能は、サブ職関係の熟練度が上がりやすくなる。

 見た目の特徴として身長が145cm〜160cm内で、それに対して手が大きく指が長い。


「クランのマスターさんなんてスゴいっすね!」

 口調も体育会系後輩じゃん。実在するのか、こんな後輩キャラ。

「ウィステリアは木工職人の上位職、大工なんだ。サブ職ガチ勢で素のレベルは低いけど、生産としての腕は本物だぜ」

 木工の上が大工って、確かに木は使うけどなんか違うくね?

「えへへ、一応斧使う戦士なんすけどもっぱら木を切るばっかりで。3層に行けるのだって、先輩がダンジョンに連れてってくれたからっす」

 あぁ。階層ダンジョンのボス討伐が行為の条件だけど、パーティで挑んだならパーティメンバー全員上にあがれるようになる。

 自力じゃ難しいこの子を朔夜くんが介護してあげたんか。


「えっと、じゃあウィステリアちゃんが拠点作りをしてくれるんだよね」

「あ、はい!先輩からクランハウス作るって聞いてます。ギルドと木協通して、正式に依頼にして貰ってますね!と言っても、詳しいお話はこれからなんすけど」

「話聞く前に引き受けたの!?」

「大恩ある先輩の頼みっすもん。たとえボランティアでも、二つ返事で引き受けるに決まってますよ!」

 マジかーこんな子どこで拾ったんだよ。てか朔夜くん何したんだよ。

 思わず目をやると、サッと逸らされた。

 こっち見ろや。

「・・・ちゃんと報酬は用意してあるよ。そういえば、ウィステリアちゃん1人でやるの?大人数で組み立てるイメージあるけど」

「ああ、作るの自体は1人でできますよ!まず『設計』ってスキルを使って、3Dモデルみたいな感じで設計図を作るんです。あとは必要な資材やアイテムを揃えたら、ポンッす」

「ポンッと」

「ポンッとす」

「あれ、見てて気持ち良いよな。マジでポンッて出来上がんの」

 いいなそれー、見てみたい。ポンッと出来上がるデッカい建物。

「ま!そこにいくまでが、すーっごく大変なんすけどねー」

「そうなの?」

「ちゃんと組み立てないと、実際に作るときに失敗しちゃうんす。床が抜けてたり、壁が薄すぎたり、縮尺ミスってサイズ間違えちゃったりして。素材の方も、自分で集めたり大工御用達の店舗で買えるやつはいいんすけど、凝った装飾とか使おうとすると細工師なんかに外注しないといけなくて」

「お、おう」

「失敗したら、また1からやり直しっす。街中だと建築法に気をつけないといけないし」

 うん。なんか、スゴく、大変なんだな。ケーキ美味い。

 ・・・この世界建築法存在するんだ。



「うぅ、愚痴っちゃって申し訳ないっす」

「あはは、いいって。な?コヒナ」

「そうそう」

 あの後も苦労話が出るや出るや、でもなんだかんだ楽しそうに話を聞かせてくれた。

 私たちの拠点も、きっと一生懸命素敵なものを作ってくれるだろうって信用ができる。


「えっと、じゃあ詳しくお話聞かせてもらいますね」

「ああ。場所は3層の郊外の樹下、トサラ樹海だ。今度連れてくから、立地は実際に見てみてくれ」

「欲しい部屋とかご要望をどうぞっす!」

 要望、要望かぁ。

「2階建て以上がいいかな。1階は使い魔も出入り自由の空間にしたい。私はテイマーだからさ、うちのクランは使い魔第一主義で行く予定なんだ」

 ほんとは全面自由にしたいけど、流石に自重する。

「テイマーさんっすか?じゃあ広い玄関も必要っすねー。それか、人用の玄関と使い魔用の玄関を別に作るのも良いっすね!」

「クランの拠点とはいっても、ゲーム内でみんなとくつろぐお家みたいにしたい」

「ゆったり休める大っきいリビングも作りましょう!」

「じゃあ俺も、広いキッチンお願い。俺もコヒナも料理持ってないけど、今後お料理好きが増える可能性もあるし。後から増築するより最初だからあったほうがいいだろ」

「なるほど、サブ職用の空間ね。確かに欲しいかも」

 持ち運びのキットじゃない調合の専用部屋、いいな。

「了解っす!各職業に合わせたお部屋っすね!!」

「後あれだ、敷地はあるからデッケーお館にしてくれ!」

 大は小を兼ねるからな、大きいに越したことはないだろ。

「デッカいことは良いことっすもんね!」



「ふぅ、もう思いつかないや」

 やー話した話した。思いつく限りを尽くした。

「そうだ、最後に予算伝えるね。とりあえず1千5百万C、足りなそうなら追加するよ」

 話してる間にどんどん楽しみになってしまった。今言った要望全部叶えてくれるなら、いくらでも追加で支払っても良い気分だ。

「せ、千、千5百、1千5百万っ!?」

「・・・普通そうなるよな」

 何か言ったか朔夜くん。

「ひぇ、コヒナさんお金持ち、ひぇえ」

「そんな引かないでよ」


 ようやっと落ち着いたか。すごい混乱し出したな。

「そんな驚くことなの?家建てるんだから、むしろ少ないくらいじゃない?」

「現実とは違うからなー」

「そうっすよ!!5百万もあれば立派な一軒家が建ちます、お屋敷でも1千万あれば十分っす!」

 へえ、建築依頼の相場ってそんな感じなんだ。自分で素材が集められるからかな?

「じゃあウィステリアちゃんがそんだけかけたに相応しいクラン界一スッゴいの、作ってよ。さくたろーの自慢の後輩、期待してるからさ」

 ウィステリアちゃんは目を見開いて私を見つめた後、俯いてしまった。

 やばい、変なプレッシャー与えちゃったかな。どうしよ。

 だが、怒られてしまったわけではなかったらしい。

 ガタンと椅子を倒しながら立ち上がり、バンッとテーブルに勢いよく手をつき、照明の反射だけじゃない光で瞳をキラキラさせながら言った。

「は、はい!ご期待にされるように私頑張るっす!!」


「よろしくな、ウィステリア・・・そうだ、お前らフレンド登録しろよ。クラマスに連絡したい時、いちいち俺が仲介するんじゃ面倒だしよ」

「え」

「良いんすかあ!」

 さくたろーの言うことは一理ある。ボスの私に要件がある時、今のままじゃ困るだろうし。

 それにしても、なんでそんなに喜んでるの?

「あー、別に良いけど」

「では是非是非!今申請送ったっす!!」

 ほんとに来たんだけど、早くね?

「承認したよ」

「やったー!わたしもしました!!これで相互っすねー!!!」

「今日一声がデカい!」

「ごめんなさいっす!!」

「懐かれたなコヒナ」

 なんで?

 さくたろーは頭をわしゃわしゃするな。


「・・・とりあえず今日はもう解散で」


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