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エブリシング・オンライン  作者: 花南とや
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クラン設立 


 まだあまり見てないけど、第2層は広大な海とそこに浮かぶ島々の階層になっていた。

 そして第3層は、巨大な樹木の生い茂る植物の階層だ。


「デッカい木がいっぱい」

 枝が二車線くらいの太さなんだけど。これが道になってるわけ?

「3層はタワマンくれーある巨大な木が大量に生えててな。真ん中あたりの高さでそれらを繋ぐように横に広がる蔦植物があって、そっから上が樹上、下が樹下って呼ばれてんだ。

 街も村も樹上にあるぜ。ツリーハウスだったり、(うろ)のなかに住処を作ってたりしてる。一際デカい樹『セコアイン』のとこが中心都市『キルッコ』だ」

 セコアインって樹は周辺の樹の倍は太いし、テッペンが見えないくらい高くまで伸びている。

 蔦の辺りには家っぽい物やたくさんの人の姿が見えるし、あれがキルッコだろう。


「木の上で生活してるんだ。すごー」

 落ちたら即死だけど、ここ歩くの楽しー!

「リリスとレティは飛べるから平気だけど、ルディは足滑らせないように気をつけてね」

「ワン」【  怯  】

 流石のルディも落ちるのは怖いみたい。下、見えないもんね。


「目的地は樹下にある。下行かないと、土が無いからな。大都市から離れてて、木や蔦に遮られて日当たり最悪。その分競争率は低いはずだ」

 クランを作った連中は、次に拠点を得るためにあれこれやってるらしい。金策とか立地の良い場所の取り合いとか。

 少し街中を歩くだけで情報が入ってくるくらい、今回のアップデートでどこもかしこも賑わってた。



「こっから暫く歩くぞ」

「はーい」

 あみあみになってる蔦を渡ったり、枝に乗ったりして木々の上を進む。風が気持ちいいし、アスレチックみたいで面白い。

 おっあそこの洞、中でお店やってる。あっちは板をぶら下げて露店を開いてんのか。


「暇だな・・・イベント中にビビったことがあってさ」

「なになに」

「魚類のモンスターが川の中に見えたから、そいつを仕留めに行ったんだよ。そしたら、溺れても無いのに気付いたら死んでてよ。そのあとステータスみたら毒耐性付いてて」

 ん?

「終わったあと感想版とか見てたら、俺以外にも同じように死んだやつがいたみたいで。死の川とかマジやべーよな」

 えーっと、もしかしてそれって。

「あの、はい・・・私がやりました」

「あん?」

「えっと、水棲モンスターを一網打尽にと、私が川に毒を流し込みました」

 やっちゃってたー、気付かんうちにやらかしてたよ私ー!

「・・・お前も大概、人のこと言えねぇ遊び方してんじゃねぇか」

「すいませんした」




 初めて見る虫や鳥型のモンスターを撃退しつつ進み続けていくと、幹に大きな樹洞のある木が前でさくたろーが止まった。

「よし、ここから下に降りるか」

「どうやって?」

 下まで30メートルくらいありそうなんだけど。

「この木の穴が地上に降りる通路になってるんだ。ここ以外にも、似たような木がいくつもあるぜ」

 なるほど、そうやって下に安全に降りるわけね。

「あ、あとこれも使っとけ」


 『虫除けの香(中級)』

 虫系モンスターの嫌な匂いをさせる香みたい。


「なんで今さら?さっきも蝶に襲われたりしてたのに」

「下に出てくる虫型って、蜘蛛とかゲジゲジとかの嫌がられる虫をモデルにしてるやつが多いんだよ」

「あぁ、さくたろーが苦手な連中ね」

 朔夜くんは大の虫嫌いだ。

 カブトムシは良いのにカナブンは無理とか、蝶は平気なのに蛾は苦手だったり、正直なんでダメなのか私にはよくわからない嫌い方してる。

「そんなのがいっぱい出るフィールドに拠点って大丈夫なん?」

「この虫除け使えば寄ってこないし、土地は購入したら、モンスターが出ないように設定できるから問題ねぇ」

「あっそう」

 本人が平気って言ってんだし、いいか。



「着いたぞ、此処だぜ!」

「おおー!!」

 下に降りさらに暫く歩いた先で、さくたろーは立ち止まり両腕を広げて言った。


 開けた広場みたいな場所だった。

 マップでの地名は『トサラ樹海』

 暗く冷たい空気を感じる。でも木々の隙間から僅かに差し込む陽の光と、苔に覆われた地面の上に点々と生えた淡く光る花が、神秘的な雰囲気を作り上げている。


「綺麗だね。気に入ったよ、此処にしよう!」

「よし、じゃあさっそくクランの申請するか。金出すのお前だしクランマスターはお前でいいな?」

「は!?」

「別に面倒ごとやれとは言わねぇって。ただそこら辺は、ちゃんとしといたほうがいいだろ。クランマスター権限で好き勝手できるぞ」

「しょーがないなー!とりあえずうちのクランは、使い魔最優先ね!!」

 ほんとは嫌だけど、朔夜くんがやって欲しいならしょうがない。決して好き勝手やりたいわけではないけど、本当にかけらも思ってないけど。

「で、名前なんにする?」

「マスター権限、さくたろー案を出せ」

「えぇ、えーっと、あー・・・『新月の水鳥』とか、どう?」

「お前と私ってこと?」

 朔が新月で、雛が鳥を表してんだろうな。

「そうそう。小鳥だと可愛すぎるし、若鳥だと唐揚げ感あるし、俺らクリアウォーターなんで水。あと、「の」と「と」で迷ったけど、組織名なら「の」の方かなっと」

 思ったよりちゃんと考えてる。

「採用。それにしよう」


 クラン設立に関するメッセージに『承認』と。


〈クラン『新月の水鳥』の設立が受理されました〉


 お、ステータスの所属クランと役職が埋まった。


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