第一回イベント その3
いやはしゃいどる場合じゃないんだった。
冷静になれ私。あんな派手にザッバンザッバンいわしてたんだから、すぐ人が集まってくる。
大慌てで手持ちの毒液をぶちまけた後、ルディに乗って一目散に逃げ出した。
「こ、ここまで逃げたら来てる奴らとは鉢合わせないよな」
強い敵を倒したハイ状態になってた。危なー。
「ケルピーはコイン落としたかな。確認、確認」
〈白金コインを100枚ドロップしました〉
「100枚!」
今までイベントフィールド内では、何を倒しても多くても3コインだったのに。
「やっぱ特別なモンスターだったんかなー」
そうだ、ケルピーが出る直前に拾った石。忘れてた。
あれも確認しよう。
『水精石(上級)』
水の精霊石。
浄化された水を生み出す。
「・・・あんまり凄さがわからないな。まあそのうち使い道も見つかるか」
これを取ったのがきっかけでケルピーは出現したっぽいし、上級だし。
にしても、もう昼か。疲れたなぁ。
「朝からずっと頑張ってたし、もうそろそろお昼食べよっか」
「ワフワフン!」【 欲、欲、欲 】
なんて、油断しきってゆるゆるにやってたのが行けなかったのか。
後は崖。前右左に見知らぬプレイヤー。
「囲まれたぁ」
「グゥウウ」【 嫌 】
くっそ、ごっつい見た目で徒党を組みやがって!絵面最悪だぞ。
「さ、3人がかりとか卑怯だぞ」
「うるせぇ!」
「知ったことか!」
「昨日はよくもやってくれたな!」
何の話だよぉ。昨日とか知らないってぇ。
「きょ、協力して私を倒しても、コインを手に入れられるのは1人だけだぞ!」
今イベントではPKすれば、相手プレイヤーの所持コインの半分が手に入る。でも得られるのはトドメを刺した1人だけ。
「お前を倒した後に俺らで殺し合うから問題ねぇのさあ!」
「野蛮か??」
思考がこっわ!理解できないよ蛮族か!?
くっ!仕方ない、やるしかないか!
「ルディ左!『アクアハンド』」
左のやつは任せて、私はアクアハンドを使った。
魔力を多く使い創り上げた巨大な『手』で、前と右にいた男を挟み込むように捕まえる。
「ぐぎゃああああ!」
「うがああああ!!」
いやそんな悲鳴をあげられるほどのことはしてなくない??
体同士がぶつかった衝撃はあっても、ハンド自体の攻撃力はそこまでなのに。
「まあいいや」
身動きできなくなってる間に倒し切る!
「『ファイアアロー』!」
アクアハンドを解いて、火の矢をぶち当てた。
きっと1回じゃ足りないだろうから、次の矢の準備を・・・・・・ん?
「倒せてる?」
「ガウ!」【 楽 】
「あ、ルディも無事に倒せたんだね。偉い偉い!さっすがうちの子!!」
よくわからんけど、ルディが無事だし元気だしいっか!
あの後よくよく考えてみたけど、今の私の魔法攻撃力。
135×2+120
イコールで390なわけじゃん。とんだバケモンじゃねぇか。どんな極振りプレイヤーだよ。
とんでもねえ数値になっちまってんじゃん。
魔法自体の攻撃力や使用魔力量も威力計算も入るから、そのままじゃないけど相当なダメージを与えたわけか。
もしかして昨日はよくもって、昨日逃げる時に咄嗟にはなった魔法で倒しちゃってた人がいたのかも。そのうち1人だったりして。
「き、気付かないうちに力を手に入れてたとは」
まぁでも、今のわたしなら即死することはそうそうないだろうし今のままでも大丈夫かなー。
あの後は平和に過ごせた。
どんな奴に襲われても、私とルディなら対処できる。そう自信が持てたので、他プレイヤーと鉢合わせても慌てず騒がずサクッと撃退できるようになったからだ。
自己肯定って大事だわぁ。
「もうすぐイベント終わりだー」
終了と同時にまたメンテナンスが始まる。それも24時間の。
「リリスたちに全然会えない。ルディとも会えなくなる。やだあー」
バチッ
「あ」
急に世界が真っ暗になる。終わったんだ。
〈第一回イベントを終了いたします〉
〈後日発表のランキングについて、名前は公開しますか?〉
「匿名でお願いしまーす」
公開処刑はお断りです。
「それじゃあログアウトするかぁ」




