第一回イベント
ついにイベント開始の日だ。
絶対に邪魔が入らないよう、4時間しっかり空けておいた。
参加先は悩んだけど、白金フィールドにすることにした。
有りなだけで必ずPKしないといけないわけじゃないんだし、襲われたら全力で逃げよう。
ルディが死ぬ可能性については、ルディが死ぬ前に私が自殺することで解決できる。コイン半分無くなるし1時間動けなくなるけど、通常のデスペナはないんだしいいだろ。
「さあ、初イベントだー!」
「ここは、森の中だな」
私の初期地は森林地帯みたいだ。そばにはルディ、周りに気配はなし。近くの草陰に光るものあり。
「さっそく1枚目ゲット」
足元に落ちてるなんて幸先がいい。
白い硬貨を拾い上げ、空にかざしてみたけど・・・これ銀のコインとほぼ同じなんじゃないかな?いや、どうでもいいか。
この調子でガンガン集めるぞ!
「ルディ、誘引を使って」
「ワウ」【 楽 】
コインはそこらに落ちてるのを拾うか、モンスターを倒したドロップか、PKかで入手できる。
なのでルディにモンスターを集めてもらって、他プレイヤーに気をつけつつ、倒しまくります。
「お、来た来た」
いつも通りルディが先行して飛びついて、私も負けじと、ランスで新調した鞭を振るった。
1箇所に留まっててもしょうがないので、コインを探しつつ散策していく。
「ガウ?」【 警 】
「何か見つけた?」
ルディについて行った先では、プレイヤー同士が戦っていた。
「ひぇ」
木に隠れながら、様子を伺う。
戦ってるのは、剣士と戦士かな?剣と槍でやりやってる。アニメみたいで、カッコいいな。
他の人がちゃんと戦ってんの初めて見たかも。
「すっごぉ・・・あ」
遠くから飛んできた火魔法に2人まとめて燃やされた。容赦がない。
「えぐぅい」
早く私も離れよう。あんな派手な音立てたら、他にも人が集まっちゃう。
「ようやく着いたな」
眺めがいいー!高いところはやっぱり良いなー。
途中で川を見つけて、それを頼りに上流へ登り、山の中ほどまでやってきた。目の前には滝壺がある。
他と競合しない狩場といえば、やっぱり水場だろう。
このフィールドに水棲モンスターがいるのは、すでに確認済みだ。
潜るのもありだけど今回はしない。
「ふふふふふ」
イベントに持ち込んだアイテムの1種を取り出した。
『毒薬B12(液タイプ)』
隠しダンジョンの地下1階で入手したコウモリ毒と、地下2階で入手したカエル毒を、調協で購入した品質の良い赤キノコのエキスと掛け合わしたオリジナル毒!の液状タイプ!固形もあるよ!
コイツを今から滝壺に大量に流し込む。
多少取り逃がしはあるかもしれないけど、毒耐性の低いやつらはこれで一網打尽!
ドロップのコインもウッハウハだ。
それにココなら、川を伝って下流にも流れるだろう。
水を持ち運べるプレイヤーと違って、モンスターは水を飲みに来る。そいつらも仕留められるわけだ。
入れ終えたら離れられるから1箇所に長居しなくて済むし、なかなか良い案なのでは?
「じゃあ入れまーす」
ドバドバ
入れた場所は紫の明らかやばい色をしたけど、やがて水に混ざってわからなくなる。
ふふ、しかし効果は薄れないぞー。
ぷかぁ
「あっ魚が浮いてきた」
早くも毒にやられたモンスターが現れ始めたようだ。確認すると、もうコインがドロップしてる。
「作戦は成功だ!」
よし、この調子で他の水場も探して毒撒こう!
ふぅ、もう日が暮れてる。1日目も終わりかぁ。
毒撒き作業は、この川で最後にしておくか。
「今日はもう休もうか。罠が怖いからテントは張らないけど、襲撃に備えて代わりばんこで見張りしよう」
「ワウ!」【 警 】
大きな葉っぱや枝を集めて、周りから見えづらくなるよう簡易の寝床作りをした。
みんなが寝静まる夜に合わせて行動する奴もいるかもだから、しっかり警戒せねば。
ソロでも交代で見張りができるのは、テイマーの利点かもしれないな。
それにしても疲れた〜。あの後移動中に、何度も他プレイヤーと遭遇したり襲われたりして大変だったぁ。
「死ねえ!」
「うびゃあルディダッシュぅ!!」
「くらえ!」
「ぎゃあ『ファイア』逃げろー!」
「ひえ『アクア』こっち来んなあああ!」
「ちょ、待っ」
とりあえず魔法で相手の意識を私から外して、その隙に私はルディに引っ付きダッシュ逃亡を繰り返していた。
わ、我ながら情けない。変な悲鳴で逃げる奴、って覚えられてたらどうしよ。流石に嫌だなぁ。
初日の成果は白金コイン261枚。
多いのか少ないのかはよくわかんない。
でも落ちてるコインは今日であらかた取り尽くされてるだろうから、明日はもっと少なくなるだろうな。
プレイヤー同士の争いも今日よりもっと白熱するだろうし、頑張らないと。




