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エブリシング・オンライン  作者: 花南とや
29/48

従兄弟  


 電話の後で詳しい時間を決めて、今は向かってる最中だ。

 ランスに来た時みたいにルディに乗って移動する。


「にしても、階層ダンジョン楽勝だったねー」

「キュ」【  楽  】

「みんながいれば、当然だけどねー」

「チア!」【  喜  】

 時間があったから、ちゃっちゃとクリアしていつでも第2層に行けるようにしておいた。

 余裕を持って行ったはずだったけど、順調に進みすぎて予定の半分で終わっちゃったわ。余った時間を使って遊べるくらい余裕でいけた。


「あ、見えてきた」


 レザ。農業協会が管理する、第1層の西一帯の地区。

 『農業』スキルを持ってると、農協から土地を購入できるらしい。


 道の駅みたいな農協レザ支部に入って、従兄弟の畑に案内してもらった。



 耕された広い土地。隅に木造の納屋が設置されている。

「?何もない」

 あの口ぶりだと色々育ててそうだったけど、作物はない。

「あ!お前コヒナか?」

「うおっ、どっから現れた!」

 誰もいなかった畑から急に人が現れて驚いた。え、マジでどこから来た人?

「えっと、さくたろーでいいん?」

「ああ!さっそくフレンド登録するか。今申請するな」

 髪が白くて、目は紫。見た目はどことなーく面影を感じる美形。多分従兄弟でいいんだろうけど。

「今突然出てきたよね」

「ん?ああ、お前からはそう見えただけだな」

「はあ?」

「フレンドじゃないと、人の所有する土地はデフォルト状態にしか見えないんだよ。俺が自分の畑から出たからそっちからも認識できるようになったのが、急に現れたみたいに見えたんだろ」

「知らんかった」

 なるほど。プライバシーが守られてるってわけだ。作業とか他人に見られないで済むのはいいことだな。

「よし、今送ったから承認してくれ」

「おっけー」

 『承認』をタップすると、フレンドリストに『さくたろー』が載った。・・・ちょっと嬉しいな。

 それと同時に、目の前の何もなかった畑がたくさんの緑に溢れた畑に姿を変えた。


 ん?なんだろ、この設定っていうの。

「フレンドの設定って何?」

「そいつにどこまで自分の情報を開示するか選べんの。最初は名前だけだけど、レベルとか職業とかわかるようにしたり、ステータスを見れるようにしたり、所有フィールドへの立入許可とか。

 ちなみに俺は、お前にステータス見る以外の許可は全部やったぞ」

「わっほんとだ。名前以外にも色々出てきた」

 色々細かく決められるんだなー。

「なんでフレンド設定の基本的なこと知らねぇの?・・・まさか、俺が初フレ」

「文句あんのかよー!使い魔たちと楽しくやってたんだから、いいだろー!」

「いやねぇけど」

 目ぇ逸らしてんじゃねぇだよ。


「えーっと、とりあえず畑入る?納屋の中とか、一応椅子もあるし」

「ちっ・・・うん」



 結構広いんだ、納屋。

 差し出された椅子に座りながら思った。

「基本は倉庫だけど、俺の作業場でもあるからな。そこそこ快適になるようにはしてんだ」

「へー」

「それで?テイマーみたいだけど、一緒の2体が使い魔?」

「3人だけど」

 せっかくだし紹介してやるか。

「こちらのデカモフわんちゃんがルディ!こっちが、きゃわわ吸血鬼のレティちゃん!そしてレティに抱えられてるのが、マイファーストパートナーリリスです!」

「キュッキュゥ」【  喜  】

 ピョンっと飛び出したリリスが宙を飛んで私の腕に収まった。

 『飛躍』が『浮遊』になり、ついに飛べる、というか浮けるようになったからなーリリス。

「えっ、このぬいぐるみモンスターだったのかよ!?」

「エンジェルぬいゴースト。パペットゴーストの亜種らしいよ」

「あー、どんなんかはなんとなくわかった・・・こいつらどこでテイムしたんだ?」

「なんだよ急に」

「いや、3体とも異色すぎるっつーか。1つは最初の卵で、デカ犬が狼系の進化した奴だとしても、ラスト1体はどうやって入手したんだよ」

 う、やっぱり怪しまれるか。適当言ってもそのうちバレるだろうしなー。・・・朔夜くんならいっかな別に。

「従兄弟のよしみで教えるけど、絶対他の人にバラすなよ」

「わかってるって」

「リリスは卵だよ。後の2人は、ルーズ付近で隠しダンジョン見つけてそこ関係で。私もずっとそこに潜ってたから、あんま他人と関わったりしてないんよね」

 ルディはダンジョンから出てきた子だから、嘘ついてない。

「隠しダンジョン!!??」

 うわうるっさ!

「は、え、どこ?」

「教えないよ・・・私が見つけたのは非正規ルートで、そのうちちゃんと情報出てくる所だから、それまで待て」

「えぇー」

 大変不服そうだけど、6層上がって大神殿に行ったらちゃんとフラグは立つんだし。・・・今教えたら私があの泥に潜ったことが知られるし。教えんどこう。


「でも意外だな」

「何が?」

「池の水持って帰ってミジンコ飼うとか言うくらい生き物好きなのは知ってたけど、人の形したモノはあんまだったろ。だからよく吸血鬼をテイムしたなぁ、と。ぬいぐるみはともかく」

 ぐ、なぜコイツがそのエピソードを知ってやがる。教えたのはお母さんか姉ちゃん、どっちだ。

「もともとはコウモリだったんだよ。進化したら、今の姿になった。・・・正直思うところはあったけど、どんなに変わっても大好きでいられるくらい、レティに好感情があったんよ。流石に人型をペット扱いするほど飢えてないけど、それとはまた違う大事な家族枠さ」

「へぇ、よかったな」

 微笑ましそうな顔して、同い年のくせに兄ぶるなよな。

「まぁ偏見というか、食わず嫌いも無くなったよ。今はヒト型のモンスターも、ペット(そういうの)を求めない前提なら有りかな〜とは思ってる」


「こっちからも質問いい?」

「何?」

「さくたろーの本職のさ、『異端審問官』で何?」

 フレンドリストから見られる情報。ずっと気になってた。サブの『農家』はともかく、コイツは一体?と。

「話せば長くなるんだけど、始まりはランダムスキルスクロールだったんだよ。

 俺はアレをすぐ使ってな。手に入れたスキルのうち1つが『闘術』。『闘士』の固定初期スキルだ。本来SP25必要なやつを手に入れたし、俺は非戦闘職の『神官』を選んでたから、育てて殴り神官になろうと思うのは普通だろ?」

 殴り神官。たしか、自分でもバンバンに攻撃する回復職だっけ?まぁ、確かに普通だな。

「そんでゲームやってたんだけど。俺PKオフにしてなくて、ソロの神官をカモだと思った奴らにそれはもう絡まれて絡まれて、全員返り討ちにしてたんだよ」

「おいこらPKK。それはもう絡まれてじゃなくて、絡まれ待ちしてだろ。誘い受けしてたんだろ」

 なんつープレイしてんだこの従兄弟は。

「ある日教会に行ったら、とある神の加護を貰ってな。で、その後転職できるようになって選択肢見てみたら異端審問官がいたから、もうこれになるしかないなーと」

 最後の下りが1番訳わかんないわ。なるしかないわけ、ないだろうが。

 つかコイツも加護持ちかよ。

「・・・転職の条件はどんなだったん?」


 転職は3種類ある。

 初期職から初期職への並行転職。教会の司祭に依頼すればできる。

 固定初期スキルレベル10と、その他の条件満たしてできる上位転職。まだまだ未知の職業や条件がいっぱいあって、攻略版がよく盛り上がっていた。

 最後に、上位から元の職業に戻る下位転職。いつでもできるけど、一度なった上位職には2度となれなくなるので注意が必要だとか。


「1、固定初期スキル『回復魔法』Lv10

 2、神の加護を持つ

 3、Lv10の戦闘技能スキルを所持

 4、加護取得後に、自身と同じ神の加護を持たないプレイヤーを100回PK

 の4つだな」

「こっわ!」

 4つ目の条件怖!

「なかなかいいジョブだぞ。自身と同じ神の加護を持たない人との戦闘時、ダメージに補正が入るんだ」

「PK特化じゃん」

「称号ももらった。『紅の信仰を掲げる者』っていって、連続PK数に応じて取得経験値が上がる。死んだらまた1からだけど」

 ああ、そういえば全プレイヤーの中で初めての職になると称号貰えるんだっけ。条件がキツイものほど、効果の高いやつ。

 にしてもコイツほんとにえぐい楽しみ方してんな。


「一応主張しておくと、俺から手ぇ出したことは一度もないからな。あくまで返り討ちにしてるだけだ」

「一応って言ってる時点でわかってるみたいだけど、全然弁解にはなってないんよ。引くわー」



 サブは普通なのに何であんなんなってんだよなー・・・農家か。そういや果物好きだったもんな。

 ちょうどいい。

「私いいもの持ってるんだけど、食べる?」

 取り出したのは『柘榴ゼリー』今日空いてる時間にお遊びで作ったやつ。


 調合協会で知ったけど、調合師もキットを使えば簡単な調理ならできるらしい。料理も科学ってやつだろうか。

 すり鉢で潰したおばけ柘榴を、鍋で熱して溶かしたスライムジェルと混ぜて、冷やして固めたゼリー。

 スライムジェルは、ゼラチンとか寒天みたいに使えるというのでやってみた。

 レティがスプーンを持てるようになったから上げたけど、無事好評でした!

 私も食べてみたけど相当美味しかったし。惜しいのはスライムジェルの品質だよなー。もっと上なら、さらに美味しかったに違いないのに!


「ゼリー?お前が作ったのか。あむ」

「どう?自信作」

「・・・・・・うっまぁ!」

 ふ、当然だろう。まだ貴重な上級素材の柘榴使用だぞ。

「隠しダンジョンで手に入れた柘榴でさ、『おばけ柘榴』っていうやつ。で、だ。さくたろー果実とか育てられる?」

 コイツに苗木を育ててもらえれば、柘榴の定期確保ができるようになるんじゃないか。

「やったことはねぇけど、今後育てたいとは思っていた。それを聞くってことはあるんだな?」

「うん、苗木。私が苗木をあげるから、実った果実が欲しい。ちゃんとお金は払うから」

「オーケー、交渉成立な。準備が整ったら連絡する」

 よっしゃあー!



「そういや雛、コヒナはイベントの告知見たか?」

「発言に気をつけろよ貴様。見たよ」


 今日ログインしたら、第一回イベントについての告知があった。

 開始は1週間後。長いメンテナンスの後からスタートする。

 普段は1時間を3時間に拡張してるところを12時間に拡張し、現実4時間での2日間にわたって行うみたい。

 内容はコイン集め。

 プレイヤーはレベル1〜20の銅フィールド、21〜30の銀フィールド、31〜40の金フィールド、31〜40(PK有り)の白金フィールドに分かれてフィールド名と同じコインを集め、その数を競うらしい。

 終了と同時にまた長期メンテナンスが入り、メンテナンスが終わり次第結果発表。コインはポイントに変換され、アイテムと交換できるようになる。

 各フィールドごとにランキングがあってその結果次第で追加のポイントもある、と説明にあった。


「俺は白金行くけど、お前はどうすんの?」

「参加しようとは思ってるけど、迷ってんだよねー」

 コインのレートは白金が1番高い。だって難易度が1番高いから。後の交換を考えたらココがいい。

 でも対人したことないし怖いしな。

「レベル10以上のテイマーは、使い魔1人までしか連れて行けないみたいだし」

 事前にパーティから外しておかなかった子は、プレイヤーのログアウト時と同じ睡眠待機状態になるみたい。

 参加するなら、連れて行くのはルディかな。魔法は私が使えるし、物理特化で。

 パーティのままにはできるから、リリスの特性の効果は続く。だから日中でもコインを探せるし。


「ま、そっちも頑張れよ。そんで同じフィールドだったらそんときゃ正々堂々やり合おうぜ」

「うん」



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