ラスボス戦
『旧世界の大怨霊』
『スケルトン Lv35』
『スケルトン Lv35』
『スケルトン Lv35』
「な、なにあれ」
パッと見はゴーストに似てる。でも何倍も大きくて、頭蓋の上からベールのような物を被ってた。そして何より、悍ましくて、恐ろしいオーラを放ってる。
間違いない。ダンジョンボスだ。
周囲に現れたスケルトンは、ボスの取り巻きだろう。次々に、40体近くが出現し出した。
入り口は封鎖されている。逃げ道はない。戦うしか、ない。
「ゴーストには物理攻撃が効かない。ルディは取り巻きのスケルトンを惹きつけて!私たち3人は大怨霊を狙おう!リリスは光魔法をメインでお願い!!」
「ガルルッ」【 奮 】
「キュ!」【 殺 】
「的はデカいけど、攻撃を喰らおうものなら1発でアウトかもだから、とにかく気を付けて!」
「チー!」【 警 】
・・・今一瞬リリスの吹き出しからなんか物騒なもんが見えたんだけど、気のせいかな?
いや、いいか。やる気が、もとい殺る気があるのは良いことだ。少なくとも今は。
召喚モーションが、終わる。
「来るぞお!!」
大怨霊の攻撃は主に魔法だった。
属性は闇、水、火の3つ。
眼孔のところが空の時は闇を、青い火の玉が現れたら水、赤なら火を使ってくる。
基本的には高威力のアローを放ってきて、2秒の溜めがきたらそれが広範囲に撒き散らされる。
近づき過ぎたらハンドも使ってくるけど、その間は遠距離攻撃が止まる。
こっちの要はリリスだ。
壁や、飛び回り妨害するレティを足場に宙を飛び回り、攻撃を回避しながら光魔法を叩き込んでいた。
ただアイツしっかりシールドも張りやがる。ムカつくな。
私も大怨霊の放つ魔法にぶつけて、リリスたちへの攻撃を妨害していた。
上手いこと飛び交うアローにぶち当てて、爆発させたり逸らしたりするんだ。ヤツの目の前で当たると爆発ダメージを与えられるし、視界も防げる。
鞭のために上げていたDEXが、こんなとこで役にたつとはだ。
一瞬「爆破って効くんだ」って思ったけど、魔法同士によるものだから物理判定じゃないってことだろう。きっと、多分。
ルディも頑張ってくれてる。
スケルトンが私の方に来ないよう、ヘイトを稼ぎながら1体ずつ確実に仕留めてた。
「・・・!溜めが、あれ?」
ルディの方を気にしていたらヤツがまた攻撃を一時止めたから、溜めからの広範囲攻撃だと思ったんだけどな。
身構えたそれはこず、5秒ほど身を捩るようにした後、またさっきまでみたいに戦い始めた。
「なんだあれ」
もしかして、こっちが気付かないうちに弱点を付いてた?でもリリスもレティも私も特別なことはしてないし・・・取り巻きにギミック付きか?
あの時ルディは、スケルトンを1体倒してた。あのスケルトンは・・・他の奴らと違って、宝石のついた剣を持ってたな。
「ルディ!武器に宝石の付けたヤツを仕留めてー!」
アシスト・アップをかけながら頼めば、即座に狙いを定め迅速に倒してくれる。
ああ、また大怨霊が動きを止めてる!
「リリス今だフクロにしろー!」
「キュー!」【 奮 】
なるほど。特定の取り巻きが倒せば、隙が作れるわけね。そのタイミングで攻撃すれば、一気に体力を削れる。
「ルディは今のと同じスケルトンを優先的に、間を開けて倒して。リリスは私が合図するから、集中攻撃して!」
よし、いける。
攻略法が分かってから、だいぶ削れてる。そうとう弱らせることができた。
「宝石スケルトンラス1ぃ、リリスお願い!」
「キュキュウ!」【 殺 】
これで倒せたら良いんだけど。
「がぁあああぁあ!!」【 怒 】
大怨霊は頭を抱えるような仕草で苦しんだ後、叫び声をあげ、両腕を振り回し始めた。
「キュゥ」【 苦 】
「チィ」【 苦 】
「2人とも!?」
腕に当たった2人が壁に叩きつけられた。
何しゃがんだアイツ。つか体触れんのかよ!
「てい!」
初日に買ったナイフを投げつけたら、素通りして遠くの床に落下した。
「当たらんのかい!」
え、こっちの攻撃は当たんないのに向こうは触れんの?一方的に殴り放題??ふざけんなよ???
そんで眼孔が右は空のまま、左に火の玉が浮かび上がっている。発動し出した2属性の魔法。
同時発動とか有り?
「くそっ!ゲージ削れたらモーション変わるタイプかよ」
2種に増えた魔法攻撃に加え、バカデカい両腕での物理攻撃まで、それにハンドも使うから近づくのはほぼ不可能。
「せっかくここまで来たんだ。もうちょい粘るぞ!」
「よしよしよし、だいぶ追い詰めてる。みんな、あともうちょっとだから!」
さらに過激さを増した猛攻の中、地道に削り、どうにかここまできた。見た目ではわかりずらいけど、動きが鈍っている。
大変だった。
怒り狂ってるからかシールドは張られなくなったけど、その分攻撃に全振りしてきたからな。
リリスとレティが頑張ってくれて、私も妨害や回復をしたりしたし、取り巻きを倒し切ったルディも庇ってダメージを引き受けたりしてくれた。
もうリリスもMP切れが近い。それまでに倒し切れるかが勝負だ。
よし、また魔法が当たった!
「があ゛ァあ゛あ゛あ゛ア゛ア゛!!!」【 憎 】
ぶおぉおおお!!
ヤツが咆哮した途端、室内に猛風が吹き荒れ始めた。
「うわあ」
立っていられなくて、地面にうずくまるようにしがみつく。
「!そうだ2人は・・・」
私が耐えられないほどの暴風を、ただでさえ軽いのにその上空中にいる状態で耐えられるわけない。
見上げれば、吹き飛ばされて台風に巻き込まれてるみたいになってた。
「キュー」【 怖 】
「チー」【 怯 】
可哀想に、目を回して掻き回されている。
「ぐっ・・・ルディ!」
「ガウ」
まだ身動きが取れるルディに頼んで、2人を回収してきてもらった。
今は、みんなで一塊になって風を凌いでいる。
でもどうしよう。ルディ以外まともに移動もできない。
ヤツの眼孔には緑の火の玉が宿っているから、多分これは風魔法の攻撃なんだろう。まさかうちのメンバーとこんなに風が相性悪いなんて。
この風の中じゃ、まともに魔法も当たらない。レティの超音波も空気がめちゃくちゃにされてる以上、振動が乱されて効果がないと思う。
攻撃手段が、ない。
大怨霊の胸の辺りに現れた青白い塊。
多分アレが弱点。追い詰めて、遂に露出させた心臓みたいな物。アレを壊せば倒せるんだと思うけど、今の私たちには何もできない。
頭を抱えて両腕の攻撃は無くなったのに、近づけもしない。
ヤツの火の玉の片方の色が変わり、特大級の魔法が組み立てられていく。
分かっているのに、逃げられない。
もう目の前に迫ってきてる。
どうしたら・・・!
「キュウウ!」【 奮 】
「へ?」
私たちを覆うように黄色いドーム上の膜が現れて、それが攻撃を防いでくれた。
「な、何これ。リリスが何かしたの?・・・あっ」
戦いの最中に、リリスの光魔法のレベルが2つも上がっていた。
光魔法Lv7で覚える呪文『プロテクション』
あらゆる障害から身を守る障壁を張る防御魔法。
一面で直接攻撃しか防げないシールドと違い、特殊攻撃にも使えるし、半球形態で広範囲攻撃にも使える魔法。
「あっこれ!」
ただ、私の気を引いたのはLv6で覚えた魔法の方だった。
これならば、ヤツを倒すことができる。
「ありがとう。ほんっとーに、ありがとう」
「キュイ」【 喜 】
『ライトエンチャント』
対象に光属性の魔力を付与する呪文。
通常なら武器に使用する魔法なんだろうけど、今回はそれをルディにかけて貰う。
そうすれば、この風の中でも行動できてうち1番の火力を持つあの子の爪が、大怨霊に届くようになる。
リリスの残りMP的に、チャンスは1回きり。これが失敗したらもうどうしようもない。
FF設定を有効にする。バフデバフ以外の魔法やスキルは、これが無効のままだと仲間に使えない。
付与魔法は有効じゃないといけなかった。というか、多分想定外の使い方だこれ。
「2人とも、お願い」
リリスがライトエンチャントを掛け、ルディが駆け出す。
私もアシスト・アップを使った。
リリスとレティを抱え込み、走るあの子をただ見つめる。
信じることしかできないから。
壁を足場に、巨大なヤツの胸の硬さにまで辿り着く。
そして淡く輝くその体が、鋭く研ぎ澄まされた爪が、中心に鎮座する魂を、深く切り裂いた・・・!
大怨霊は呻き声をあげ、やがて光に消えていった。
「・・・・・・勝った〜〜〜〜!!!!」




