冒険者ギルド
「ふおおおーーー!!!」
街を行き交う人々。まるで本物みたいだ!
地面に立つ感覚がある。風を感じる。これがエブリシング・オンライン!
大声を上げたせいで周りの視線が集まって、とりあえず道の隅に寄った。それでも視線を感じる。
テイマーは少ないから、そのせいかもしれないな。初期装備の鞭で、本職は見ればわかるし。
そうだ!さっそくステータスを見てみよう。念じると、さっきのキーボードみたいに目の前に半透明のパネルが現れる。
コヒナ
種族 人間 LV1
戦闘職 テイマー サブ職 調合師
HP 40 MP 10
STR 5
VIT 20
DEX 15
INT 5
AGI 5
スキル 従属魔法LV1 調合LV1 感情視LV1
『感情視』これがランダムスキルか。どんな効果なんだろう。
タップすると説明文が現れた。
『モンスターの感情を視認する』
そのまんまかよ。いや、モンスター限定だから、他のプレイヤーやNPCの人には効かないってことか。テイマーにはかなり有用なスキルじゃないかこれ。
彼らが何考えてるのかわかれば、好感度上げやすい。
このゲームのNPCには皆、高度なAIが搭載されていて、意思や感情が存在している。それはモンスターでも例外じゃなくって、テイムして使い魔にしても好感度がマイナスになると逃げられてしまうらしい。
それがこのゲームで、テイマーが少ない理由の一つだ。
感情があるから、機嫌を損ねるようなことができない。経験値は連れる使い魔と分配されるからレベル上げに時間がかかる。使い魔には食事を与えないといけない。パーティメンバーの数を圧迫する。
などなど、初期はそれなりにいたらしいが、だいたいリセットして辞めていったらしい。
だから現在このゲーム内でテイマーは不人気職になってしまっている。
そんな職を、わざわざ選んだ新人が珍しいのだろう。
余談だが、戦闘で弱らせてからテイムする場合があるため、テイム時に好感度がマイナスだった場合は使い魔になった直後、プラマイゼロになるらしい。プラスはそのままだ。
「あ、なんか書いてある」
『冒険者ギルドに行ってみよう!』というメッセージがある。
「冒険者ギルド・・・あのデッカいのか」
最初に立っていた場所の真ん前にそびえ立つ立派な建物。
「んじゃ、さっそく行ってみよー!」
広々とした木造建築。たくさんの人で賑わっていて、正面に受付がある。
ちょうど空いている、猫耳獣人の職員さんのところに行った。
「ルーズの町の冒険者ギルドへようこそ」
「すみません、冒険者の登録は出来ますか?」
「勿論です。私はミーシャと申します」
にこやかに笑って対応してくれる。私も自分の名前を名乗った。
「旅人さんですか?」
「あ、はい」
確かプレイヤーは、そういう設定だったはずだ。
この世界、イグドラスールは神々に作られた、いくつもの層で出来た、円柱形の世界となっている。今いるのは第1層。階層ダンジョンが初回クリアされることで次の階に行けて、今は第3層まで解放されてるんだっけ。
そしてプレイヤーは、神々によって違う世界から連れてこられた旅人という設定になっている。
何の目的で遣わされたのか、それらはまだ謎になっていて、今後のイベントとかクエストとかで明かされるのではと言われていた。
「珍しいですね。だいぶ前にはたくさん来られましたが、最近はあまりおりませんでした」
「あはは、私はだいぶ出遅れてまして」
「そんなんですか・・・と、ではこちらのラクリマに手を押し当ててください。それでコヒナさんの情報が登録されます」
「はい!」
中心部が光る綺麗な水晶が出された。
ピトッと触ると、少しひんやりしてて気持ちいい。
「ありがとうございます。では、こちらがコヒナさんのギルドカードになります。身分証明書にもなりますのでなくさないで下さいね」
受け取るとカードには
『ギルドカード
名前 コヒナ
本職 テイマー サブ職 調合師
ギルドランク F
※非破壊、非譲渡 』
と書かれている。
「初心者冒険者セットもお渡ししますね」
「ありがとうございます」
貰ったセットをアイテムボックスにしまう。荷物には支度金3000Cも入ってた。太っ腹だな。
「ではギルドについてご説明しますね」
「お願いします」
「冒険者ギルドでは、ギルドランクに合わせたご依頼を受注頂けます。依頼は、あちらのボードに貼り付けられてますね。こちらの受付で報告していただくことで、達成となります。
自分と同ランクの依頼を一定数達成することによって、ランクは上昇します。Fランクなら5つ達成でEランクになれます。
高ランクでないと入れない場所などもありますので、どうぞ頑張って下さい」
「へー」
5つならすぐに上げられるな。
「ギルドには、修練場や道具屋が併設されてます。修練場は初回は無料、2回目以降のご利用には300Cがかかります。
あと、左にあるカウンターでは素材の買取をおこなってます」
「なるほど」
「また大都市のギルドには、各協会もございます。第1層ではランスの街ですね」
「協会?」
「職業ごとの集まりです。神官だけは教会ですが。その職専門の情報や依頼がありますよ。
コヒナさんでしたら、テイマー協会と調合協会に所属できます」
「そんなのあるんですね」
ランスまで行ったら、覗いてみよう。
「では、説明は以上となります」
「ありがとうございます、ミーシャさん・・・さっそく修練場を使いたいんですけど、いいですか?」
「かしこまりました。では、こちらの扉へどうぞ」
受付を離れ、大きな扉の前へ案内される。
「1度出ると、また入るには利用料が必要となりますので、気をつけて下さいね」
「はい!」
そして私は、意気揚々と修練場へ入っていった。