VSイビルドッグ群団 その2
鞭を仕舞い、『水鏡の剣』を装備する。
もう補助とか言ってらんねーんだわ。どうせ引いてても狙われるんだから、ガンガン私も前に出てやる。もちろん従属魔法のサポは続けるけど。
気付かないうちに従属魔法のレベルが2つも上がって、防御力上昇と使い魔全体回復の2つの呪文も覚えていた。なので、こっちも駆使していく所存である。
「リリス、ラージのお腹に引っ付けるかな?アイツの足じゃ座りでもしないと、自分のお腹に自分で触れないと思うんだよね。そんでゼロ距離でライトアロー乱射したれ」
生き物の弱点狙い撃ちだ。容赦なくやっちまえ!
「ルディはもうイビルはいいから、とにかくリーダーを襲って。レティはルディのカバー。群れのトップを仕留めるよ」
その分、イビルは私が受け持とう。今の私のレベルに上級装備なら、十分戦えるはず。
「んじゃ、やるぞお!!」
身を低くし、イビルドッグの首を狙ってナイフを振るう。
このゲーム、モンスターによって違いもあるが、動物系のモンスターはモデルと同じような弱点が設定されている。
つまり頸動脈や内臓のある腹などは、当たれば大ダメージ、上手くやれば即死が狙えるようになってる。
なので容赦なく攻撃してやります。今の私には躊躇も慈悲もないぞ。勝てば良かろうなのさー!
「おらぁ!」
腕を噛みつかれたら、そのまま頭を持ち上げて首に一線。前足を振るわれたら、回避して横から腹を蹴り付けひっくり返って晒した首を一線。
向こうが警戒して離れたタイミングで、ポーション回復。
「『アクア』!」
突然頭上から降り注ぐ大量の水で、怯んだ隙を狙ってまた攻撃。
驚かせて隙を作るってだけなら、水魔法レベル1でも十分使える。今後ともやっていこう、この手段。
それにしても、
「あっはは!たのし、これ!」
焦ってるうちに、何のためにここに来たのかを忘れてたみたいだ。ロマンと冒険心でわざわざあんな泥潜って、このダンジョンまで来たんだった。やっぱ追い詰められるとダメだなぁ。
これはゲームだ。楽しまないと。みんなを犠牲にするのは論外だけど、それはそれとして、遊びを全力で遊ばないでどうするんだよ。
「んふふ、うりゃー!」
「グァォオオォオ!!!」
「ひぇ・・・あ、ルディか、びびったぁ」
轟いた雄叫びに驚いたけど、声の正体はルディだった。
どうしたんだろ?
そちらに顔を向ければ、その理由はすぐわかった。
「リーダーを仕留めたの!?よくやった、2人とも!」
ついに奴らのボスを倒したんだ!それに気付いたらしい群れの連中が私への攻撃も止め、頭上に【 困 】を浮かべている。
コマンダーが亡きリーダーの変わりに指示を出そうとしてるようだが、まとまる時間なんて与えないぞ。
ボロボロのルディに回復をしつつ、次の指示を出していく。
「ルディ、リリスの加勢に行って!この勢いでラージも仕留める!レティはコマンダーの妨害!倒せなくてもいいから、コイツらに指示を出させないで!」
私も、レティと一緒にコマンダーを狙う。
ボスを失った群れを崩すのは容易い。
勝手に慌てふためいてるところで、さらに容赦なく攻撃するだけ。冷静になる余裕を奪うだけでいい。
ラージはもともと弱点狙い撃ちで弱ってたところをルディにトドメを刺され、1人と3体がかりで2体のコマンダーは倒せた。
群れの主力まで失った残りのイビルドッグたちは、私たちに挑みはしたものの、連携は精細さをかき、少し前までの脅威と同じとは思えないくらいだった。
最後の1匹の首を切り裂く。
「勝った〜〜〜!!!!」
「キュー!」【 楽 】
「ガルッ!」【 奮 】
「チ!チー!」【 喜 】




