初ダンジョン
あの洞窟の入り口に辿り着いた。
またみんなで泥だらけ。しかし今回は、対策だって用意してきている。
「よーし2人ともこっち来て。んじゃやるよー『アクア』!」
水魔法Lv1の呪文『アクア』水を生み出す魔法。それを頭上で展開し、一気に泥を流し落とした。
SPを4支払って、水魔法を習得しておいたのだ。
この泥池を潜った後のことには、準備中も頭を悩ませていた。攻略中ずっと泥まみれなんて嫌すぎる。
そして水魔法の習得を決意した。
これ以外にも、飲み水の確保や調合用の水の調達という利点もあるし、まぁいいかなーと。
余談だが、魔術師以外の職業は基本、SPを消費しないと魔法は覚えられない。
魔術師は最初に『魔道』というスキルを得られて、このスキルの力で、魔導書を読むと対応の魔法スキルが得られるようになっている。
ルーズの町には火と水の魔導書があると攻略版に書いてあった。
他の初期職の初期スキルは獲得に25SPかかる。
そんなもん取ってらんないので、必要な魔法スキルを直接入手した。
よし、 もうそろそろ動くか。
「リリス、ライト」
「きゅ!」
一面が明るくなり、以前と同じように数匹のコウモリが飛び去ろうとする。
やっぱりか。
前の時、プレイヤーがいるのにこっちに来ず、むしろ離れようとしたのはなんでか考えてた。
急に明るくなったから、眩し過ぎたんだ。
当然だろう。なんせここは、まともな光源もない地下の洞窟。いきなり電気つけられなら目も眩むわ。
なのでこうしてライトでビビらせ、奥へ逃げたところを攻める。
駆け出したルディが1匹を、仕留める。もう1匹も逃げられないよう後ろから鞭とブラックアローで攻撃、やってきたルディがトドメを刺した。
〈リリスの魔力感知Lv2がレベルアップしました〉
〈レベルアップしました〉
〈リリスがレベルアップしました〉
〈リリスが進化可能になりました〉
〈吸血コウモリの牙をドロップしました〉
〈吸血コウモリの翼をドロップしました〉
おお、私は8に、リリスは10まで、また一足飛びでレベルアップした!
その上リリス進化できるじゃん!
進化先はどうなってんだろ?
〈進化先候補〉
『クロスゴースト』
『ミニマム・クロスファーゴースト』
2種類か。
クロスゴーストの方は正当進化先かな?ミニマム消えて、おっきくなる感じの。
そんでもう1つ。ファー、もしかして毛皮のこと?兎の毛皮ばっか食べてたからか?
まさか食べるものが進化先に影響するなんて、知らなかった。
正直ファーの方が気になる。こっちにしよう。
その体が淡い光に包まれ、次に現れたのは、フサフサでフワフワな毛玉だった。
〈リリスがミニマム・クロスファーゴーストに進化しました〉
「リリスが毛玉になった!?」
「キュ?」【 楽 】
「あ、違った」
広がると四角い。なんだ、丸まってただけか。
白いフワフワな毛に覆われて、四隅も丸っこい気がする。サイズとお顔はおんなじ。
手触り超気持ちーな。いつまでも撫でてきたいやつだこれ。
かわゆい。
リリス
種族 ミニマム・クロスファーゴースト LV1
特性 擬態 性別 無
HP 32 MP 82
STR 10
VIT 16
DEX 29
INT 41
AGI 16
スキル 跳躍LV5 闇魔法LV3 魔力感知LV3 採取Lv4
遊泳Lv5 光魔法Lv1 打撃耐性Lv1
ステも一気に強くなってる。
相変わらず魔法特化だけど、ちょっと固くなって布装甲から変わったんじゃないか?打撃耐性なんて防御系のスキルも増えてるし。
フワフワの毛で衝撃を和らげんのかなー。
ドロップアイテムも確認しとくか。牙と翼。
とりあえず翼を出して、ルディに見せてみた。
「これって食べる?」
結果は不評。唸られた。
マジで他に食べ物がない時くらいじゃないと、食べたくないって感じだったな。まぁ、見るからに骨と皮だけだもんな。想定内だわ。
ただリリスが興味を示したのは、意外だった。
え、食べるんだ、それ。みたいな。
この洞窟内で、リリスへの追加の食糧調達の目処がたったので無問題ですわ。
「よし、次進む・・・ん?」
パタパタと、微かな音がしている。何の音だ?
もう一度リリスにライトをしてもらう。便利だけど、10秒くらいしか光らないのが、少し面倒だな。
照らされたのは、飛んで逃げようとするコウモリ。でもおかしい。
さっきの奴らは音を立てなかったし、アイツらより一回りくらい小さい気がする。
「捕まえてみるか、よっ!と」
ダメージを与えないよう鞭で捕らえた。
このゲーム、魔法と違って物理攻撃スキルはレベルが上がっても技とかは覚えない。
道場行ったりNPCのクエスト報酬でアーツが覚えられるらしいけど。
ただレベルが上がると目に見えて上達し、ダメージに補正が入る。
上達するというかあれだな、思った通りに動かすことができるようになる、感じ。
私たちの動きだけじゃない、システム的な補助がついて、頭の中で理想としてることを実現できる、みたいな。
DEXが低いと外れたりするから、それとこれとは別問題って具合だけど。
なので、当初は振り回して打ち付けるだけだった私も、羽を巻き込みグルグル巻きにして手元で吊るすとかいう曲芸じみたことが、できるようになったわけだ。
「チ、チー」【 怯 】
怯えとる。心なしか震えてる。当然だけど。
「どれどれ」
『スモール・吸血コウモリ Lv4』
あぁ、下位種か。それで小ちゃい。
体は私の手のひらくらいのサイズ。翼を広げたら、横に3倍は広がるかな。
フサフサの黒っぽい茶色の毛が全身に生えてて、ところどころ白っぽいのが混ざっている。
お目目はおっきくて耳はちっちゃい、鼻は高いな。狐とか獣に似たキュートなお顔だ。
オオコウモリ、毛の感じからしてその中でも、オガサワラオオコウモリをモデルにしたモンスターなのだろう。
うん、可愛い。・・・・・・コウモリ良いなぁ。
野生のコウモリは病原菌の危険性から、不用意に触れることはできない。鳥獣保護管理法もあるし。
ましてやオガサワラオオコウモリは、小笠原にしか生息してない天然記念物で絶滅危惧IB類の希少生物だ。
アレルギーや菌抜きにしても、容易に接触はできない。
いや、にしたって即戦力を求めるなら吸血コウモリを捕まえるべきだろう。
でもせっかくこの子捕獲したし、可愛いし。
この萎縮具合なら、瀕死にさせなくてもテイムできそう。
「『テイム』」
〈スモール・吸血コウモリをテイムしました〉
〈従属魔法Lv2がレベルアップしました〉
成功ー!!戦力増強だやったねー!!
・・・う、リリスとルディから何やってんだコイツみたいな目を向けられてる気がする。
ま、まあ?ここに住んでるってことは、この子の食べ物はこの洞窟内で確保できるはずだし?
よし、名前をつけよう!鞭から解放して手のひらに乗せる。ふむ、この子は女の子か。
「り、る、ときたら次は、れーかな。れ、レア、レイ、レン・・・レティ!決めた、レティだ」
「チ、チ!」【 喜 】
うん、気に入ってくれたみたい。
「リリス、ルディ、新しい仲間のレティだよ」
「キュ」
「ガウ」
2人とも新入りを歓迎してくれてる。仲良くなれそうだな。
ステ確認するかー。
レティ
種族 スモール・吸血コウモリ LV4
特性 血液回復 性別 メス
HP 8 MP 12
STR 5
VIT 4
DEX 8
INT 6
AGI 11
スキル 吸血LV3 消音LV2 牙術Lv2 遠視LV1
闇耐性Lv1
特性の血液回復は『血液の摂取により、HPを回復する』か。攻撃と同時に回復できるんだ。優秀。
吸血も、出血が止まらなくなる継続ダメージスキルだから便利。
足の速い特殊系だな。貧弱っ子だけど。
あと、消音スキル。これのレベルが低いから羽の音がしてたって感じかな。
「あ、そうだ。レティ、私が今から出すものの中に食べられるものあったら教えてね」
食品の確認しとこう。ここでも手に入る(はず)とはいえ、他に食べられるのかは知っとかないと。
肉、ダメ。魚、ダメ。毛皮と角、怒られた。ジェル、首を傾げられる。牙及び翼、ドン引き。リンゴ、好反応。野いちご、大興奮で飛びつく。
食性は見た目通りらしい。オオコウモリは別名フルーツコウモリ。
ただそうなると、この洞窟内のどこかに果物がなってることになるんだけど、どうなのだろうか。
まぁ、いい。あるならそのうち見つかるだろう。
経験値の分配を私1、リリス1、ルディ0.8、レティ1.2に変更してっと。
「じゃあ進もうか」
進化前のリリス
リリス
種族 ミニマム・クロスゴースト LV10
特性 擬態 性別 無
HP 14 MP 52
STR 5
VIT 7
DEX 14
INT 26
AGI 10
スキル 跳躍LV5 闇魔法LV3 魔力感知LV3 採取Lv4
遊泳Lv5 光魔法Lv1




