泥の底
今週2度目の投稿です。
ルディの首に抱きつきながら、水の中を進んで行く。
潜水のおかげで、水中でも目を開けられるようになっているはずだが、私は目を瞑っていた。泥すごかったし。
幸い、目を閉じていてもゲージが認識できたから、制限時間はわかる。もう半分過ぎて、引き返しても間に合わない。あと1分でほんとに着くのか?
残り40秒、まだ下に進んでる。残り30秒、方向が、変わった?残り25秒、上に、昇って、
「ぷはぁ!」
ようやく陸地か。ルディの誘導で陸に上がり、顔を拭った後に目を開ける。
真っ暗闇で何も見えない。
「いや暗っ!」
あっそうだ。リリスの魔法。
「リリス、ライト使って」
「キュイ」
瞬間周りがピカッと光って、私たちのいる場所がわかった。洞窟だ。
「まさか池の底に洞窟があるなんて」
「ガルルル」【 怒 】
「キュッ」【 驚 】
「へ、どしたの?」
急に唸り出したルディに驚いたが、奥から何かが飛んで行くのに私も気付いた。
『吸血コウモリ Lv7』
『吸血コウモリ Lv6』
そこにいたのは、2匹のコウモリ型のモンスターだ。大人の腕くらいのサイズかな?
名前めっちゃシンプルじゃん。
そんで吸血、ルディの耐性はコイツらか!
私が反応するより先にルディが飛び出していって、サクッと仕留めていた。強っ!まぁ自分家だもんな此処。
〈レベルアップしました〉
〈リリスがレベルアップしました〉
〈鑑定Lv2がレベルアップしました〉
「ふぁ!?」
レベルアップしたからステータスを確認したら、一足飛びでレベルが6まで上がっていた。
2匹の経験値を約3分割で3レベアップってどういうこと!?リリスも7まで上がってんじゃん!
「あ、ライト切れた」
暗闇の中、ステータス画面が僅かな光源になってる。
暗い部屋で、電源付けっぱなパソコンのディスプレイみたい。
「そうだ、マップ開こう」
マップには、フィールドの自分が到達した地点が自動で記録されていく。
これを『筆写』スキルで紙に書き写すことで地図が作れて、ギルドで販売していたのはこれだ。
地図を入手すると、まだ自分が行っていない所もマップに記載される。
この洞窟は私が来た時点で、私のマップに記録されてる。フィールドの名前もだ。
ダンジョン『◻︎◻︎の試練』
「・・・・・・は?」
ダンジョン?ここが?まさか、隠しダンジョンなのか。
現在ETO内で発見されているのは、各階層間にある階層ダンジョンだけだ。
まさか、第1層のこんな所に隠しダンジョンがあったなんて。絶対私以外誰も知らない。
「一旦、帰ろう・・・準備を整えたら、私たちでこのダンジョンを攻略しよう!」
「キュ?」【 驚 】
「ガル!」【 楽 】
あの後、またルディに引っ付いて地上に上がり、東の湖に向かった。
3人揃って全身泥まみれだから、汚れを落とさないと多分町に入れてもらえないだろう。
正直今の私たちでは、あのダンジョンを攻略するのは難しいと思う。
ルディは強いけど、私とリリスが弱すぎる。
あれだけ多くの経験値が入ったんだから、あのコウモリたちも1度進化してる類だったんだと思う。
ルディが居なかったら、瞬殺されてたのは私たちだった。
でも、挑んでみたい。
せっかくゲームしてるんだ。無謀な冒険だってしてみたい。初攻略報酬も凄いって聞くし。
2人が嫌がったら諦めようと思ったけど、幸い2人とも乗り気だ。
いろいろ調べて、近いうちにあのダンジョンに突入しよう。
「頑張るぞー」
「キュー」【 喜 】
「ワン」【 喜 】
とりあえず町に帰り、ギルドで納品を済ませる。
これで5つの依頼が達成されて、私のギルドランクがEになった。次はEランクの依頼10回達成で昇級になるそうだ。
せっかくだから、
『スライムジェル10個納品』
を済ませておいた。これで残り9回。
魚の納品もできるけど、あれは食糧になるからやめておく。
次に向かったのは、道具屋さん。
ギルド併設のところじゃなくて、町を出用としてる人向けの店だ。そっちの方が値段は高いけど、品揃えが良い。
購入したのはまず、下級野営用テント。
野営用テントは町なんかの安全地帯以外で、プレイヤーがログインログアウトするのに必要な非破壊アイテム。
これの中に入れば、モンスターを気にせず休めるようになる。簡単には引き返せないダンジョンでは、必須アイテムと言える。
外から影響を受けない代わりに、中でのスキルや魔法の使用も禁止されてるけど。
だから安全なテントの中から攻撃はできない。むしろテントを出る、というワンアクションがある分囲まれてると危ないから、出入り時には注意が必要らしい。
1番安いのは、持ち主が1人寝転がったらいっぱいいっぱいな激狭タイプの1000Cだったけど、私は使い魔も一緒に入れる1800Cを購入した。
必要とはいえ、手痛い出費だ。一気に素寒貧だよ。
そしてもう1つ、下級網焼機500C。
MPをこめることで『料理』スキルがなくても、食材を焼くことができる優れもの。
火加減の調整ができないから、機械に任せてただ焼くことしかできないみたいだけど。
プレイヤーが生の肉や魚を食べると毒状態になり、最悪死ぬ。でも火を通すことによってその心配がなくなるようになる。
食糧を買い集める余裕がないから、ダンジョン攻略中ドロップの食材で食い繋ぐ予定なので、これも必須の道具だった。
食中毒で死ぬのも嫌だ。
リリスの毛皮とルディの肉も集めておかないといけないから、頑張らないと。
装備の新調は諦めます。初期装備で挑みます。
だってそんなの買うお金無い。幸い武器は、ルディが持ってた物がいくつかある。
いや、これにだって利点はあるんだよ。
装備品には耐久値があって、使ったりダメージをくらうたびに消耗、0になると破損する。
『鍛治』スキルや専用アイテムのメンテナンスで回復させることもできるけど、私は持ってないし消耗品を買う余裕はない。
でも初期装備一式は、耐久値が∞になってるから、壊れる心配が無い。
途中で壊れるかもしれない半端な装備を使うくらいなら、その分節約した方がマシだろう。きっと、多分、そのはず。
あとはひたすら食糧集めだ。
兎と魚を狩って狩って狩りまくる。最低でも肉と魚と毛皮で、イベントリの一枠いっぱいの99個ずつは集める。
南の森で果物も探そう。さっき行った時には、リンゴとイチゴがあった。それらもできる限りたくさん。
後、合間の休憩で薬草も集めて、ポーションも量産しよう。まだ使うレシピを私が持ってないから、納品分以外放置してる澁草はだいぶ貯まってる。毒消しにはこれが使える。
「ふぅ、精神的に疲れそう」
でもただでさえ実力が見合ってないんだ。準備を怠ったら何もできずに死ぬだろう。
「んじゃやるかー!」
あれから、辛い、辛い日々が続いた。リアルで数日かけた。
飽きが来ないよう適度に行動を変えてはいたけど、基本同じことをグルグル繰り返してたわけだし、負担がキツかった。
ただそのおかげでアイテムは目標値に達した。
『ホーンラビットの肉』×99
『ホーンラビットの毛皮』×99
『ルーズフィッシュ』×99
『リンゴ』×99
『野イチゴ』×99
『下級HP回復ポーション』×99
『下級MP回復ポーション』×99
『澁草』×99
うん!ほんっとに頑張った!!
それに、いくつかのスキルはレベルアップしたし。
レベル差ができたから、ここらじゃもう基本のレベルは上がらなかったけど。
私は調合、鞭術、鑑定、採取、潜水が上がった。・・・調合なんてレベル5になったのに、レシピがないのと材料がないので、いつまでも下級しかポーション作れないけど。
せめて材料があれば後は掲示板知識で、作れるんだけどなー。
ルーズの町で用意できるもので作れるのは2つだけだ。
リリスは跳躍、闇魔法、採取、遊泳が上がった。
レベル2で使えるようになった闇魔法『ブラックボール』闇の力を集めた球体を作る魔法。
これを使って木の高い位置にあるリンゴを取ってもらってたら、新しい魔法も使えるようになってた。
『ブラックアロー』矢の形にした闇属性の魔力を、敵にぶつける魔法だ。
ブラックボールは動きが鈍いし、威力も低いしだったから、実質初めての攻撃魔法だ。
ルディは疾走、潜水、誘引が。
誘引がなかったら、きっともっと時間がかかっていただろう。ありがとう、誘引さん。君のおかげで救われた命があるよ。
これで、今私たちができる準備は全て整った。
LET'S 隠しダンジョン攻略!!
現時点でのコヒナとリリスのステータス
コヒナ
種族 人間 LV6
戦闘職 テイマー サブ職 調合師
HP 50 MP 30
STR 10
VIT 25
DEX 15
INT 15
AGI 10
スキル 従属魔法LV2 調合LV3 感情視LV3
鞭術LV4 鑑定LV3 採取Lv3 ナイフ術Lv1
潜水Lv3 水魔法Lv1
リリス
種族 ミニマム・クロスゴースト LV7
特性 擬態 性別 無
HP 10 MP 42
STR 3
VIT 5
DEX 10
INT 21
AGI 8
スキル 跳躍LV3 闇魔法LV3 魔力感知LV2
採取Lv2 遊泳Lv5 光魔法Lv1




