最果ての泥池
池、とはいっても正直綺麗な場所ではない。なんか泥がすごいし濁ってるしヘドロみたいな匂いがする。
流石にここを水飲み場にしていたとは思いたくないが、この付近に手頃な洞窟でもあるのだろうか?
そしてルディはその池に、飛び込んだ。
「ふぁ!?」
何やってんのこの子!?毛が汚れまくってたのこれのせいか!?
当の本犬はというと、泥をかき分けて優雅に泳いでいる。
え、ていうか、寝床聞いて、池に飛び込んで、そういえばこの子潜水スキル持ってて・・・え、いや、まさか
「この池を潜った先に、君の寝床があるのかい?」
「ワン!」【 喜 】
「お返事元気〜〜〜!!!」
「キュム!?」【 驚 】
まじで何やってんだよぉ。リリスも驚きというかドン引きしてんじゃん。
早く上がってくるよう手を振ると、淵まで近づく。
バッシャアン!!
「ボガッ・・・!」
何故か私が水の中にいる。何が起きた!?いや、それよりまず早く陸に上がらないと!!
視界の端では円状のゲージが減っていっている。
無我夢中で身体を動かし、草を掴んで這い上がった。
「ゲボッゴホッ、ゲホッ・・・はぁ、はぁ」
四つん這いになりながら必死に息を整える。
あっぶなぁ、あやうく死ぬところだった。
対応したスキルを持ってない状態で、水深1m以上の水に浸かると、30秒で溺死する仕様になっている。さっきのゲージは残り時間の表示、死へのカウントダウンである。
初デスがモンスター関係ない溺死は嫌すぎる。
マジで何が起きたよ・・・そうだ。あの時、ルディが私の服の袖を咥えて引っ張ったんだ。
何しよるんだあの子は。
シュン【 哀 】
横を見れば、しょげかえっているルディがいる。水濡れのせいで悲壮感がすごい。
いや、私はテイマー、いわば飼い主だ。主人として悪い事をしたら、ちゃんと叱らなければならない。
・・・・・・でもその前に、1つやらないといけないことがある。
「ギュギュムゥ」【 怒 】
リリスがめっっっちゃキレとる。ブチギレておられる。
うん。まぁ当然だよなー。私の手首に巻き付いてたリリスは、一緒に泥池にドボンした。呼吸の必要ない無機物モンスターなので溺死の心配はなかったけど、綺麗な薄灰色の体が汚ねぇ泥色に染まってしまっている。全身丸ごと茶色い。
「ギュウゥウ」【 怒 】
〈感情視Lv2がレベルアップしました〉
リリスの怒りでレベルが上がった。
「キュゥン」【 怯 】
うわー、尻尾丸めちゃって、リリスに怯えきってるよ。普通に戦ったらルディの圧勝なんだけど、そういうんじゃないんだろうなー。
うん。力関係が完全に決まったな。
「あーリリス、もうそろそろ許してあげて。いや、君が怒るのは至極当然なんだけど、私からも注意するから」
「・・・キュゥ」【 怒 】
これは、許してくれたかな。まだ怒ってるし、ため息ついてしょうがないって渋々な感じだけど。
「まったく・・・ルディ?本当に危なかったんだぞ、私死ぬところだったわ。リリス多分次はないやつだから、今後気を付けろよ。マジで」
「ワゥン」【 哀 】
うん。反省してくれたな。じゃあ説教はこれで終わりだ。
「それで?何で急に引っ張ったの?・・・潜った先の寝床まで、連れて行こうとしたの?」
「ガウ!」【 喜 】
「行かないぞ」
「ガウ!?」【 驚 】
何で驚いてんだコイツは。今溺死しかけたんだろこっちは。
「ワゥン」【 哀 】
何で悲しむんだよぅ。どんだけ連れて行きたいんだ。いや、最初に聞いたのは私だったけどさー。
ぐっ、やめろ!そんな目を私を見つめるな!!・・・水に潜るなら、必要なのはルディが持ってるのと同じ『潜水』か。一応SPで取得可能だな。4ポイントかかるけど。今SP5あるから、十分買える。レベル1で『水深制限がなくなり2分間の水中活動が可能』か。
「ルディ、そこって2分以内で着く?」
「ワン!」【 喜 】
もう私の体泥まみれで今更気にする必要ないし、むしろ、行くなら今だよな!
「リリスー私はルディに寝床見せて貰うからさ、この辺りで待っといてよ」
「・・・・・・キュ!」【 怒 】
何かに耐えるような間を置いて、力強めに手首にまきついてきた。若干痛いんだけど。
でも、これは、リリスも一緒に来てくれるってことかな?
「あはは、じゃあ行こっか。ルディ、案内お願いね」
「ガウッ!」




