ゲーム開始
課題を終わらせ、食事を済ませ、やるべきことを全て終わらせて、私はついに待ちに待ったこの時間を迎えていた。
「やっと、やっと出来る! エブリシング・オンライン!」
ヘルメットみたいなハードを装着して、早速ログインする。待ち望んでいた異世界に。
『エブリシング・オンライン』
半月前に日本で販売され始めた、世界初のフルダイブ型VRMMORPG。
プレイヤーは神々の作った世界で冒険者となり、ファンタジー異世界を冒険するのだ。やれることは無限大。まさに、全てが叶うゲーム。
告知された瞬間から多くの注目を集め、初回の販売が抽選だと発表された後は、日本中のゲームショップに人が殺到し、初日から倍率がエグいことになっていた。
かくいう私もそれに挑んだ1人だった。ゲームが欲しくて、興味のなかった家族を巻き込んで応募した。
まぁ、その時は落選だったけど。
なのに今手元にあるのは、従兄弟のおばさんのおかげだった。
私にはゲーマーの従兄弟がいる。私と同じように家族を巻き込んで抽選に応募した結果、従兄弟とおばさんの2人が当選したらしい。心底羨ましい。
当の息子も自力で確保してしまったため、ゲームに興味のなかったおばさんも困っていたとか。そんな時に、私が落選して落ち込んでる話を聞いて、恵んでくださったわけだ。それでゲームの開始が1ヶ月も遅くなってしまったわけだ。
エブリシング・オンラインは体感時間を拡張することができ、現実での1時間がゲーム内時間で3時間になる。
だからすでにゲーム内では、3ヶ月くらい経っている。
脳への影響を抑えるためのプレイ時間制限があるとはいえ、私はかなり出遅れてるわけだ。
まぁ、私はガチ勢でもないし最前線で1番にとか狙ってるわけでもないから、そこまで気にしてないけどね。初期組がネットに流す情報を調べてから、始められるメリットだってあるし。
「よっし。じゃあ早速、ログイン!」
視界が一瞬黒く染まり、次の瞬間真っ白い光が飛び込んできた。
『エブリシング・オンラインへようこそ』
声が聞こえたかと思うと、白い壁の四角い空間に私は立っていた。目の前には、青いデジタルチックなパネルが浮かんでいる。
『プレイキャラを設定して下さい』
「あっ、これでキャラメイクしてくんだー」
試しにネームと書かれたところをタッチすると、キーボードが現れる。これで名前を入力するんだろう。
「どうしよっかな。確か、すでにいる名前は使えないんだっけ。被らなそうなのにしないと」
迷ったが、無難に本名の雛子を裏返して『コヒナ』にする。
次に種族だ。
優れた点はないが苦手もない、器用貧乏な『人間』
魔法スキルの熟練度に補正が入るが、肉体系の熟練度が低下する『エルフ』
肉食なら戦闘系、草食なら索敵系スキルの熟練度に補正が入るが、魔法スキルの熟練度が低下する『獣人』
生産スキルの熟練度に補正が入るが、敏捷系スキルの熟練度が低下する『ドワーフ』
他にも水人やリザードマンなど色々。それぞれの特性を持っている、多種の中から選べるのだ。
ここで決めた種族は、今のところ課金アイテムを使わないと変えられない。少し迷ったけど、予定通りに『人間』に設定した。
種族欄を選択すると、パネルの横に人型のホログラムが現れる。
「次はアバターのデザインか。自動設定っと」
自動設定を選択すると、現実の私の外見を元にAIがアバターのキャラメイクをしてくれる。
出来上がった、どことなく私の要素を感じる可愛い女の子のアバターをそのまま確定した。
今度は職業設定。戦闘職とサブ職の2つを、それぞれ10種類の中から選択できる。
「まず、戦闘職が『テイマー』でしょ」
これは、ずっと前から決めていた。このゲームをやりたかった、1番の理由でもある。
「サブ職はー、どーしよ。迷う。・・・よし、『調合師』にしよう」
調合師のレシピにはテイムモンスターの餌があるって、掲示板に載ってた。テイマーやるならこれが1番いい。
今度はSTR,VIT,DEX,INT,AGIの5つの基礎能力に50のポイントを割り振っていく作業だ。
HPはVIT×2、MPはINT×2になる。
種族次第でここの初期値にプラスやマイナスがついているが、人間の私は気にしなくてもいい。
結果、こうなった。
STR 5
VIT 20
DEX 15
INT 5
AGI 5
プレイヤーが死ぬと、テイムモンスターがまだ生きてても全滅扱いになってしまうので、耐久重視。テイマーの武器は鞭が多いため、敵に当てられるよう器用さにも多めに振った。
「最後に、初期スキルをランダムにしてーっと」
職業によって、剣士なら『剣術』のように最初から与えられるスキルがある。戦闘職で1つ、サブ職で1つ、それに加えてもう1つ。選択肢から自分で選ぶか、何が当たるかわからないランダム設定で決められるスキル。
ランダムの方は、選択にはないレアスキルが当たるかもしれないが、それと同じくらいゴミスキルになるかもしれないガチャになっている。
ガチ勢には、このランダムでいいスキルを手に入れるためにリセマラする人もいるみたい。
私は何が当たってもいいから、せっかくだし運試しすることにした。
「これで完成だ。よし、行くぞー!」
『お楽しみ下さいませ』
スタートを押すと、強い風が吹き出し思わず目を瞑ってしまう。
風が無くなり、ゆっくりと目を開けると、そこにはアニメで見たような中世ヨーロッパファンタジーみたいな街並みが広がっていた。