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53話 それぞれの目的

 エーデルコード トーテルス


 シンとシャルロットは、アイン達と合流すべくディストリアからエーデルコードへと足を進めていた。


 シンは進みながら、「おかしい…。ここまで敵性体が居ないとは…。アイン達が掃討したのか?それとも、別の者の仕業か?」と呟く。


 隣を歩くシャルロットは首を傾げ、「敵が居ないのは良い事ではないのですか?」と尋ねる。


 シンはハッとシャルロットの方へ視線を移し、「悪い、独り言だ。まあ、敵が居ないに越したことはない。だが、ここはシリウスを超えたさらに東の地だ。この先にあの方の加護があるとはいえ、ここまで静かなのはむしろ変だと感じてな」と淡々と答える。


 シャルロットは納得したように頷き、「おっしゃる通りですね。アイン様達との合流を急いだほうがいいかもしれません」と提案し、足を速める。


 シンも頷き、「そうだな。嫌な予感がする」とシャルロットに続いて走り出す。



 エーデルコード 東


 シンたちはトーテルスを突っ切り、雪が見え始める東の街へ足を踏み入れる。直後、シンがシャルロットの前に手を出し、歩を止める。


 「人の気配だ。警戒しろ」と静かに声をかけ、背負っていた武器庫から大剣を取り出す。


 シャルロットは驚きながらも赤槍を取り出し、静かに構える。


 武器を構えた二人の前に、「こんなところに人が来るなんてな。どんなもの好きだ?」と声が響き、一人の男がサッと目の前に降り立つ。


 シンは男を睨み、「そのセリフ、そっくりそのまま返させてもらう。何者だ」と静かに問いかける。


 男は煙草を手に持ち、煙を深く吐きだした後「俺か?まあ、ちょっと用事があってな。あんたらには関係ない事だ」とシンを睨みつつ返答する。


 「そうか。話は変わるが、周辺に何人かを配置しているのようだな?君の立ち振る舞いといい、なかなかの手練れのようだな。だが、何故通りすがりの私達にそこまでの敵意を向ける?」


 男は驚いたように目を見開き、「あんた、マジで何者だ?一目でそこまでの事が分かっちまうような奴がこんなとこに何の用だ?」と煙草を捨て、大剣を取り出す。


 シンも静かに大剣を構え、「それを答える義理は無くてな。邪魔するなら斬るのみだ」と一触即発の様子を見せる。


 シャルロットは2人を交互に見つつ、「あ、あのっ!」と声を出す。2人は静かにシャルロットの方に視線を移す。


 男は構えを解き、「どうしたお嬢さん。連れのおじさまは俺と仲良くする気はないみたいだが」と軽く問いかける。


 シャルロットは男の方を見つめ、「私達は戦いに来たわけではないんです。私達はこの先の分断地を目指してここを通りすがっただけなのですっ」と真剣な眼差しで伝える。


 男は呆れたように口角を上げ、「おいおい嬢ちゃん。簡単に目的を話しちゃいけねえぞ。俺達がそれを邪魔するためにここに居たらどうするつもりだったんだ…」と頭を掻きながら大剣を霧散させる。

 「でも、正直な奴は好きだ。いいぜ、こっちに来な」と静かに振り返り、町の中に入っていく。


 シンとシャルロットは目を合わせ、男についていく。



 男は比較的状態が良い建物に入り、2人を迎え入れた。そこには、男の他に大柄の寡黙そうな男性と長髪のスタイルの良い女性がリラックスして座っていた。


 男は2人を歓迎し、「紹介する。俺はアラタ。そっちがセリア。奥の窓際に座ってる怖そうなやつがトーマだ。よろしくな」と明るく笑いながら紹介する。


 女性は2人の方へ視線を移し、「よろしくね、旅人さん達?」と優しく笑いかける。


 大柄の男性は2人を一瞥し、「また面倒ごとを増やしやがって…」と小さく呟き窓の外を見つめる。


 アラタは頭を掻きながら、「まあ、俺達もここの住人じゃねえからこんなこと言うのは何だが、くつろいで行ってくれ」と空いた席に手を向ける。


 シンとシャルロットは誘導されるがままに席に着き、アラタが机を挟んだ目の前に腰掛ける。


 シャルロットは恐る恐るといった様子で口を開き、「私はシャルロットと申します。こちらの方はシンさんです。受け入れてくださりありがとうございます。アラタ様」と丁寧にお辞儀する。


 アラタは大袈裟に手を横に振り、「様なんて勘弁してくれ。俺はそんな敬称が付くようなえらい奴じゃないからな。アラタでいい。よろしくな、シャルロット」と笑顔で応じる。

 「それで、あんたらは分断地に行きたいって言ってたな。そこを目指すのは何故だ?」とアラタは真剣な表情で尋ねる。


 シンは表情を変えず、「それを簡単に答えられるほど、君達を知らない。出来るならば、ここの住人ではないと言った君達が何故この地に居るのかを教えてくれるか」と淡々と尋ねる。


 アラタは一瞬表情を曇らせたが、すぐに戻し「あー、そうだな。まあ、簡単に言うなら人探しをしててな。依頼内容ではこの辺で会えるって話だったんだが、見ての通りもぬけの殻でな。進展なしに帰ったら俺たちの首が飛んじまうから、手がかりを探してるとこなんだ。そうだ、あんたら人をみかけたりしなかったか?」と簡潔に述べる。


 シンはアラタの話を静かに聞き取り、「いや、人とは一度も出会わなかった。もしよければ、探し人の特徴などを教えてもらえるか。私達は各地を旅してる者だ。知っている人物であれば手がかりを出せるやもしれん」と声色を変えずに答える。


 アラタは首を横に振り、「それはダメだな。あんたらの雰囲気からして絶対無いだろうが、俺達が依頼内容を伝えたことが依頼主に知れたら、それこそ俺たちの命はないんでな」と大げさに否定する。


 シンは目を閉じ、「そうか。君達の依頼主はかなり慎重派のようだな。その上、言葉通りにとるなら、君達の扱いは捨て駒のようだ。君達のような手練れが、どうしてそのような依頼を受けている?」と淡々と尋ねる。


 アラタは乾いた笑いを見せ、「さあな」と遠くを見つつ答える。


 シンは静かに目を開け、「それで、今外でこちらを睨んでいる2人は君達の仲間か?」と淡々と尋ねる。


 アラタは静かに立ち上がり、「いや、違う。トーマ、セリア。行くぞ」と2人に声をかける。トーマとセリアは静かに入り口に向かい始める。

 アラタは入り口付近で振り返り、「あんたらはここに居てくれな。客人に戦わせるなんて事はさせられねえからな」と笑いかけ、サッと飛び出す。


 すぐに戦闘音が響き始め、シンとシャルロットは暗い部屋に取り残される。


 シャルロットは焦ったようにシンの裾を掴み、「シンさんっ!助けに行かないとっ!」と声を上げる。


 シンはシャルロットの言葉に動じず、「シャルロット。彼らの目的が何か、分かったか?」と尋ねる。


 シャルロットはシンの裾を持つのをやめ、「えっ?」と驚いたように見上げる。


 シンはシャルロットの方を向き、「彼らの探し人というのは、おそらくアインだ。エーデルコードの中心街を通った際、戦闘の痕跡があったのに気が付いたか?あの戦闘の跡の多くは爆発などによるものだった。だが、一部だけ高温で溶かされたような痕跡を残した建物があった。範囲と建物のダメージを見るに、アインの力で間違いない」と淡々と答える。


 シャルロットは驚きながら息を呑み、「そ…そんな…」と声を漏らしながら震える。「アイン様はっ…無事なのでしょうかっ…!」と続けて真に尋ねる。


 シンは頷き、「ああ、無事だろう。そうでなければ、彼らがここに残る理由がない。だが、一度交戦しながら双方が撤退する事態が起きたというのは不可解だ。彼らの立ち振る舞いを見るに、彼らはアイン達と互角以上に戦えただろう。だが、決着をつける前に撤退した。先ほどのアラタ君の話から考えても、彼らは命を賭してでもアインを始末する必要があったはずだ。故に、この地にはアイン達と彼らの他に、双方が恐れるほどの力を持つ勢力が存在することになる。アイン達の動向が掴めないのはその勢力の影響と考えるのが妥当だろう」と考えを伝える。


 シャルロットは話を聞いて尚更焦った表情を見せ、「では、アイン様達を探しに出なければお二人が危ないのでは…?」とシンに問い詰めるように尋ねる。


 シンは表情一つ変えずに、身を乗り出すシャルロットを座らせ「ああ。だが、今私達を彼らが逃すと思うか?彼らが私達を迎えたのは、あちら側も何らかの情報を聞き出せると踏んだからだ。つまり、私達だけが出し抜いているのではないということだ」と静かに伝える。


 シャルロットは声を殺し、「そんな…。申し訳ありません…。私が身勝手な事をしたばかりに…」と明らかにしょげてしまう。


 「落ち込むことはない。彼らの話を聞けた事でここの状況が大体把握できた。人の居ない地で情報を得る機会は貴重だ。結果的に彼らは私達の敵の可能性が高いようだが、味方となってくれる可能性も大いにあった。君の選択は間違いではなかった」とシンは表情を変えずにシャルロットを慰める。


 シャルロットは俯きながら、「ありがとうございます…。シンさん…」と小さく呟いた。



 その時、戦闘の流れ弾が建物に当たり、大きな風穴が空く。そして、アラタ達と戦う敵の姿を二人は目の当たりにする。シャルロットはその姿を見た途端に目を見開き、「そ、そんなっ…」と小さく呟く。

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