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51話 更なる敵

 エーデルコード 中心地


 サラーサ達と別れた後、サジも意識を取り戻し、2人は足早に行軍していた。

 ディストリアからかなりの距離を進み、エーデルコードと呼ばれるサラーサ達の故郷を抜けようとした時であった。


 アインが急に足を止め、サジも合わせる。「何かいる」とアインは呟き、剣をとる。サジもクロスボウを両手に取り出して警戒態勢を取る。


アインが立ち上がるより早く、サジが二人に矢の雨を降らせる。2人は左右に分かれつつジグザグに後退し、簡単にそれを回避する。


 「アイン!早く立ちなッ」とサジが声だけをかけ、アインもすぐさま立ち上がる。


 建物の屋上で槍を構え、「攻撃は単調。位置も変えない。纏まったまま。うーん、期待外れだわ」と呟き、セリアは天に放る。


 アインとサジの真上に放られた槍は天を裂く。口を開くかの如く静かに裂かれた空から、一筋の光が放たれ、地面に到達する寸前に丸い光となって広がる。キインという甲高い音が静まり、丸い光が収束する。拡散した光に包まれた物は、切り取られるかの如く消し去られていた。


 セリアは別の建物に立つリーシャに視線を向け、彼女は頷く。「この布陣で死角があると思っているんですか…?本当にこの程度の人間が大罪人なのでしょうか…」と呟きながら、杖をポールのようにクルクルと回しながら周囲に魔法人を展開していく。展開された魔法人は数秒後に自動で収束し、光の弾丸を放っていく。その弾丸の半数は建物に向かって一直線に向かい、破壊活動を行っていく。その傍らで、残りの半数は様々な方向に飛び立った後、建物を避けるような軌道を取りながら、建物の陰に吸い込まれていく。

 建物が崩れ、二つの影が静かに動き出すのを捉える。


 「追撃をかけますねっ!アラタさんとトーマさんは先回りしてくださいっ」とハヤテが両手で収まるほどの両刃剣を割り、短剣の二刀流にして走り出す。


 「任せたぞー。トーマ、次のポイントに行くぞ」とアラタが声をかけつつ動き始める。


 「分かってる」と冷たい返事を伝え、トーマも地面を蹴る。


 リーシャの援護の余韻で砂煙がそこら中に立ちこめ、視界が悪い中、ハヤテは迷いなく一直線に走り続ける。「さ、捉えたっすよ!」と口角を上げ、一気に地面を蹴る。


 煙の中に人影が見え、ハヤテは静かに切り抜ける。確かな感触を得た後、すぐに反転して牽制を続け、一つの方向に向かうように追い立てていく。リーシャの援護も伴い、少しずつポイントに誘導していく。


 ハヤテは追撃をやめて砂煙に隠れつつ後退する。「ポイント到達っ!後は任せますっ」と告げ、近くの瓦礫に上って見守る。


 アラタは静かに煙草を捨て、「チェックメイトってな。さあ、逃げ場はねえぞ?」と高い建物に囲まれた袋小路となった広場に連れ込まれた二人に剣を向ける。


 アインは冷や汗を流しながら剣を握り、緋色の力を込める。


 トーマはその光を見て目を見開き、「マズイッ!アラタッ!」と言って咄嗟にアラタを地面に叩きつけつつ可能な限り低い姿勢をとる。


 直後、2人の僅かに上を緋色の光が過ぎ去り、背後の建物が崩れ落ちていく音と衝撃が響く。


 アラタは驚きながら顔を上げ、「マジか…」と呟く。


 トーマは口角を上げ、静かに特大サイズの剣を握る。「大罪人…。なるほどなッ」と地面を蹴る。


 アラタもすぐに立ち上がり、矢の雨を避けつつ走り抜けていく。


 トーマがアインに剣を振るう。アインは咄嗟に受け止めるが、圧倒的な力に吹き飛ばされて壁にぶつかる。

 トーマは即座に後ろに飛び去り、目の前に落ちる矢を見送る。矢は小爆発を繰り返し、砂煙を上げるが、アラタはそれを気にする素振りも見せずに突っ込み、壁ギリギリに立つアインに剣を振るう。


 アインは剣を前に出して盾のように構え、両手で受け止める。アラタは即座に体を捻り、力を込めて斜めに斬り上げる。アインの体勢が崩れ、隙だらけとなるがアラタは追撃せずに煙の方へ退く。アインの目の前を数本の矢が過ぎ去り、一直線に壁に突き刺さり、黄色の雷撃を放つ。


 「チッ…。なんて連中だいッ」サジは亀裂が入り始めたクロスボウを煙の方へ構えつつ、「アイン!大丈夫かい?」と声をかける。


 アインは「はい、助かりました」とだけ答え、剣を構えなおす。砂煙が晴れ、2人の剣士が露わになる。


 サジは瞬時に矢を放ち、2人の剣士の前で小爆発をさせることで節約しつつ弾幕を形成する。


 2人の剣士は咄嗟に左右に分かれ、それぞれがアインとサジの元へ斬りかかる。アラタがサジに大剣を振るうが、その剣は半透明の銀の障壁に防がれる。サジは後退しながら矢を放ち続け、アラタの進行を遅らせる。しかし、アラタはその中を突っ切り、剣を槍のように投擲する。サジは咄嗟の攻撃に反応が遅れ、手をクロスして体を守る姿勢をとる。クロスボウに剣が突き立てられ、白銀の光が漏れる。サジの体は奥の建物に突き刺さり、大剣も彼女の右肩を掠めつつ突き立てられる。


 トーマがアインの元へ迫り、勢いを乗せて特大剣を叩きつける。アインは引き付けたうえで回避し、彼の背後に回って剣を振るう。トーマは咄嗟に屈み、アインの横薙ぎを回避して後ろ手に蹴り込む。アインがよろけ、瞬時に特大剣を抜き取ったトーマが横薙ぎする。アインは人形のように吹き飛び、先の建物に突き刺さる。トーマは地面を蹴り、アインに剣を振り下ろそうとする。その時、崩れ去った入り口付近に殺気を感じ、動きを止める。


 「セーフティオフ。敵対者。排除開始…」と赤い光を漏らしながら、機械兵は呟く。


 アラタとトーマは振り返り、その姿に驚く。「なんてこった…。星の民が作った…プロトタイプ…!トーマッ、撤退だッ!」とアラタが言い切るより早く、2人は行動を始める。直後、リーシャの援護射撃が届き、機械兵を爆風が包み込む。


 スィフィルは撤退する彼らを追いはせず、倒れた二人を回収してその場を去る。




 荒廃した場所とはまるで違う、緑豊かな異世界で目を覚ます。


 アインは穏やかな光景に驚き、体を起こそうとするが激痛に顔が歪む。体を動かすのを諦め、視線を泳がせる。


 すると、青や黄色、緑など様々な色をした半透明の丸い球体が近寄ってくる。まん丸の目に小さな丸い口だけ。半透明の体に中央が黒い丸となっていた。さながら水饅頭といった見た目だ。

 ポヨポヨと跳ねながら目が覚めたアインを囲み、首を傾げるように体を捻る。中には捻りすぎて転がってしまうものもいる。

 アインはそんな不思議な生物を観察しながら静かにしていると、聞いた事のある声が遠くから聞こえてくる。


 「こらっ!そっちに行っちゃダメだよっ!」とパタパタと近寄ってくる音が聞こえ、少しだけ体を起こす。そこには、サラーサが心配そうな表情で立っていた。


 サラーサは体を起こしたアインを見て目を丸くし、「お兄さんっ!目が覚めたんですねっ!」と明るい表情を見せる。その声を聞きつけ、背後からスィフィルも顔を見せる。


 「アイン。目が覚めたようだな。スキャン開始…。異常複数検知。腕部、胸部の骨格に損傷、回復の兆しあり。サラーサのおかげだ」とスィフィルは淡々と話す。


 サラーサは困った顔でアインの側に座り、「何があったんですか…?」と白銀の光で包みながら尋ねる。


 アインはサラーサに視線だけを向け、「えっと…」と口籠る。そして、不明瞭な記憶を遡り、「サラーサ達と別れた後、エーデルコードまで進んだんだ。そこで、かつての街?かな。建物が連なってる場所に差し掛かった時に、誰かに遭遇して…。なんとか撤退しようとしたんだけど、ダメだったみたい」とゆっくりと伝える。


 サラーサは驚きながらも納得したように頷き、「お二人と別れた後、スィフィルと帰路についていたら、大きな音が聞こえたので私達も向かったんです。音の発生源は、トーテルスという小規模の町だった場所で、私達が着いた時にも戦闘音が続いていました。スィフィルの指示で私は町に入りませんでしたが、スィフィルがトーテルスに入った後に逃げていく人の姿は見えました」

 「その後、スィフィルがお二人を抱えて戻ってきましたが、お兄さんたちはすごく傷ついていました。お二人のそんな姿を見て、スィフィルに無理を言って楽園に連れてきてもらったんです」と経緯を語ってくれる。

 「あの日から4日ほどが経っています。見た目ではかなり回復されたようですが、スィフィルの診断通りです。お急ぎなのは知ってますが、どうか休んでください」と心配そうに続ける。


 アインは頷き、「2人ともありがとう。2人が居なかったら今頃僕達は生きていなかったと思う。この感謝の気持ちは、どんな言葉を使っても表せないよ」と最大限の感謝を告げる。


 サラーサは首を横に振り、「お気になさらないでください。元はといえば、お兄さん達を楽園に案内しなかったサラーサ達にも責任がありますので」と申し訳なさそうに答える。


 アインはゆっくりと首を横に振り、「それは違うよ。誰だって信用できない人を家にあげたりしない。自分以外にも危険が及ぶとなれば尚更さ。僕がサラーサの立場だったとしても、同じ対応をとったと思うよ」と優しく伝える。


 サラーサはその言葉を聞いて少しだけ表情を緩ませ、「そう言ってもらえるとサラーサも落ち着けます。あ、そうでした。このまあるい子達は、スィフィルによると「鉱石ハミ」という種族なのだそうです。色んなところを食べながら進んで、鉱石や宝石なんかをお腹に貯めるんですって。見た目も感触もぷよぷよで可愛いですよねっ」とニコニコとしながら、サラーサの元に集まる鉱石ハミを一匹抱えてアインに説明する。


 アインも鉱石ハミを撫で、「可愛い子達だね。ここにしか居ない子達なの?」と尋ねる。


 スィフィルが静かに近寄り、「否定。楽園の中にも十数体の個体が生息するが、それは一部にすぎない。エーデルコードでは、彼らは至る所に生息している。だが、無法者達の影響で数が減り、臆病な性格も相まってあまり姿を見せない」と説明する。


 アインが鉱石ハミを突くと、鉱石ハミは驚いたようにピュッと近くの木まで走り出し、小さな目をウルウルとさせながらアインを見つめる。「ご、ごめん…」とアインはその様子を困ったように見守る。


 サラーサはアインの方へ向き直り、「そろそろ私の治癒の効果が落ち着きます。痛みなどが再度出ると思いますので、安静にされた方がいいと思います。サラーサもスィフィルも近くにいますから、何かあったら声をかけてください」と伝えてくる。


 アインは感謝を述べ、静かに横になって目を閉じる。

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