表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
48/54

47話 待ち構える試練

 トート東 街道


 頭に指示の声が響く。「作戦開始。トート内で潜伏する者を探し出し、殲滅せよ」と。


 体が勝手に動くようだった。静かに地面を蹴り、走り始める。拡張された感覚が、潜伏しているターゲットの位置を簡単に割り出す。中央広場に4人。周囲の建物に2人と1人。


 姑息にやる必要はない。中央から殲滅を開始。


 高く飛び上がり、中央に展開する4人を奇襲する。



 アリサ・ソーン・アキハ・レイナは中央広場で周囲を警戒する。


 アキハは刀に手をかけたまま、「おかしいですねえ。評議会の依頼にミスがあった事なんて一度もないんですけど」と首を傾げる。


 アリサも剣を強く握ったまま、「そうですね…。ターゲットの気配すらないなんて、こんな事初めてです。一度撤退をしてもいいかもしれません」と提案する。


 レイナも頷き、「その方がいいかもしれません。万が一この任務の情報が漏れていた場合、私達の方が誘い込まれたことになります」とアリサに賛成する。


 アキハは2人の意見を聞いて頷き、建物の陰で待機していたアトラに合図を送る。


 アトラから撤退の合図が送られ、一斉に引き返そうとした瞬間だった。



 アキハは顔色を変えて刀を構え、最大限の力を込めて空に向かって抜刀する。直後、とてつもない衝撃と赤雷の弾ける音が響き、全員の視線を釘付けにする。


 アキハの刀に触れていたのは、銀色の片手剣だった。それを握るのは、黒いローブを纏った黒髪の男だった。

 男は体を捻って着地し、剣を払う。その佇まいと気迫が、その場にいた全員を極度の緊張状態に導く。


 アキハは刀を静かに納め、男を睨む。「この人がターゲットですか?情報とは違ってかなり軽装のようですけど…?」と視線を外さずに尋ねる。

 それを答えられるものは誰もおらず、ただ分かることは気を抜くと死ぬという事だけだった。


 男は静かに地面を蹴り、アキハに迫る。アキハは深く構えてカウンターの姿勢をとって迎え撃つ。


 男はその姿勢を気にするそぶりも見せずに接近し、アキハに剣を振り下ろす。それに合わせて刀を抜刀し、全力で迎撃を試みる。二つの剣が重なり、大きな衝撃が轟く。力は拮抗することなく、一瞬でアキハは体を逸らして攻撃を逸らすように受け流す。


 アキハはすぐさま数歩後退し、「これはマズいですね。普通に膂力で負けてます。打ち合うなんて到底不可能ですね…」と冷や汗を流しながら呟く。


 アキハが下がった瞬間に3本の矢が男に向かって放たれ、近くの建物の屋上から雷撃が地面を抉りながら男に迫る。男が動き出すよりも早くに2人の攻撃は迫り、大きな砂煙と焦げ付いたようなにおいが辺りを満たす。

 砂煙が収まると、そこにはバチバチと雷撃を放つ剣を握った男が無傷で立っていた。


 男はおもむろに剣を突き出し、雷撃を解き放つ。すぐさま氷の障壁が4人の前に展開され、攻撃を相殺する。波状攻撃となった雷撃が辺りを抉り、4人は障壁から身動きが取れなくなる。男は雷撃の合間を縫って器用に接近し、氷の障壁に剣を突き立てる。障壁はいとも簡単にひび割れ、砕け散る。

 直後に男は飛び退き、続けざまにランダムな軌道で地面を抉り続ける雷撃が迫りくる。


 4人は各々で回避行動をとり、雷撃を回避する。しかし、雷撃が通り過ぎた後に広がっていたのはソーンとアリサが地面に伏した姿だった。

 アキハ達はそれぞれ左右に2人ずつ飛び退いたが、雷撃が通過したほんの一瞬視界が遮られていた。その一瞬の隙に男は2人に接近し、回避で動きに自由の利かない彼女達を容易く斬り飛ばしていた。

 ソーンとアリサはそれぞれ浅くない傷を負い、苦しそうに地面に伏している。そして、2人とアキハ、レイナの間に悠々と男は佇んでいた。


 アキハは苦い表情を見せつつ刀を構える。そこに、遠くから「クソッたれがッ!アキさんッ」とカールの叫び声が届く。アキハはそれを聞き届けた瞬間に表情を変え、瞬時に地面を蹴る。


 男はアキハの接近に容易く対応し、彼の渾身の一撃を赤子の手をひねるように受け流していく。そして、力を入れる余り動きに隙が生じていたアキハの様子を察知し、彼の攻撃を回避しつつ体を捻り回し蹴りを入れ込む。

 アキハはとてつもない威力の蹴りを直に受け、数メートル先の建物の壁に激突する。大きな砂煙と建物が崩れる音が響く。

 すぐさま男に向かってランダムな軌道の矢が雨のように降り注ぎ、釘付けになった男の直情から隕石のような巨大な火の玉が迫り、男を包み込む。


 アキハ達が作った一瞬の隙を使い、カールは治癒の矢を番えてソーンとアリサの元へ迫る。2人を射程内に捉えて矢を放ち、低い姿勢で二人を拾って離脱する。直後、男に巨大な火の玉が迫る。


 カールは建物の陰に2人を連れていき、「大丈夫か?」と声をかけつつ男の様子をうかがう。



 拡張された火の玉の光が収束し、男の姿が露わになる。そこには、ローブの先が軽く燻っている程度で何の傷も追っていない男の姿があった。

 男の剣はいつの間にか熱を帯びるように橙色に染まり、剣の周りには陽炎が立つ。男はゆっくりと顔を上げ、頭から血を流しながらよろよろと立ち上がっていたアキハの方を睨む。


 その様子を見て咄嗟にレイナが間に立ち、金色の光を纏って障壁を構築する。


 男は障壁に剣を向け、溜め込まれた熱の光を照射する。レイナはそれに合わせて氷の障壁を収束させて3枚に重ねて手をかざす。直後、氷の障壁は紫の光を帯び始め、光が収束するかの如く氷の障壁を通過していく。氷の障壁から鋭い紫の光が放たれ、男が放った熱の光とぶつかり合う。互いの力が拮抗し、交差した地点に白い光が煌めいて大きな爆発を生じさせる。

 レイナは衝撃に耐えるように手で顔を覆う。しかし、衝撃が止むよりも早くにレイナの目前に男が迫り、いとも簡単に彼女の体を切り捨てて蹴り飛ばす。


 レイナは力なく横たわり、男はそのまま抵抗できなくなったアキハの元に進む。そして、彼の首を掴んで掲げる。

 アキハは苦しみから表情が歪み、刀も霧散する。男は静かに彼の心臓に向かって剣を突き立てようとする。しかし、それを阻止するように鋭い矢が男に迫る。


 男は視線を向ける事さえせずに剣で簡単に矢を切り落とし、アキハを仕留めにかかる。


 誰もアキハを助けることは出来ず、ゆっくりと差し込まれようとしている剣を見る事しかできなかった。彼の心臓に剣が突き立てられようとした瞬間だった。



 直後、男の腕から彼が消える。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ