38話 癒えない傷
全てが終わり、アリアは学園に帰還する。魔物の姿はなく、彼は姿を消していた。
学園は、事態の把握に動き始め、戦闘の痕跡の修復や生徒、教員の治癒などを始めていた。アリアも事態の収集の方へ参加すると告げ、学園に事態の全貌を説明した。学園は彼女を全体の指揮に参加させるよう取り合う事とした。
アリアは報告を終え、第一αの寮へ向かう。そして、待っていた彼女らに真実を告げた。アリアは目の前で悲しみに暮れる生徒達を見つめ、自責の念を強めていた。
数か月の時が経った。アインは依然として消息不明。学園は少しずつ日常を取り戻し始めていた。
アリアは自分の役目の終わりを感じ、庭園跡へ向かう。そして、隠された草むらにポツンと建てられた石に花を向ける。その石には、フレッドの名前が彫られていた。アリアは手を合わせ、静かにその墓石を見つめる。綺麗に掃除されたこの場所は、戦いの跡を感じさせないほど穏やかで静かな時間が流れていた。
足音が近づいてくる。アリアは振り向き、静かに退く。「レイナ」そう呟きながら。
花を手に持ったレイナがそこには立っていた。「アリアさん、来てくれていたんですね。ずっとお花が増えてるのを見てたから、きっとそうかなって思ってたんです。」と優しく微笑む。
「ごめんね、ここを綺麗にしてるのを見つけちゃって…。声をかけようと思ってたんだけど」
レイナは嬉しそうに微笑み、「いえ、いいんです。アリアさんが会いに来てくれるなら、フレッドも喜ぶはずです」と告げる。
アリアはその言葉を聞いて静かに胸をなでおろし、「そう言ってくれて嬉しいわ。本当に良い場所を見つけたのね。フレッド君も安らかに眠れるといいのだけど」と墓石に視線を降ろして呟く。
レイナは墓石の前にしゃがみ、掃除を始める。「本当ですよね。庭園にこんな場所があるなんて驚きでした。ここは以前は立ち入りが出来なかった場所なんだそうです。その理由は、あれなんですけれどね」と墓石の先にある大きな石を見上げる。その石には、数多くの文字が刻まれていた。
「あれは、この学園の生徒の墓石なんだそうです。この学園は、生徒を大切にするのが信条です。ですが、世界はそんな思いを無視して残酷に結末を作る。だけど、そんな事を表に出してしまうと学園は存続できなくなる。だから、メード学園長はこうして小さな楽園を作った。ここは、隠蔽されたそんな学生たちの安息の地なんだそうです。」
レイナの言葉にアリアは驚く。「そうだったのね…。メード学園長は、いつの日からか方針を変えたの。彼女は遠征や試験の内容を大きく難化させた。それは、激化する戦場に対抗するため。志半ばで結末を迎える生徒を減らすためだと言っていた。けど、今はそれが違うってわかる。彼女は、ゾディアッククイーンとして優秀な生徒を消す方法を作っていたのでしょう。ただそれは彼女の意思じゃなかった。だからこそ、こうして切り捨てていくだけじゃなく一人で弔う場所を秘匿したのでしょう。けれど、どうして今この場所は解放されたのかしら」
レイナは一つの鍵を手渡す。「これが、私の部屋にあったんです。鍵に触った時、ここが映し出されました。それと、メード学園長の声が聞こえたんです。ごめんなさい、私は貴方達を地獄に向かわせてしまった。この鍵は、私のせいで結末を迎えてしまった多くの人々のための安息の地です。貴方にこの地を開放する鍵を渡します。勝手で申し訳ありません。貴方の大切な人は、ここで彼らと共にあります。貴方に、彼らを見守る事をお願いできませんか。って」と説明する。
その寂れた鍵はアリアに触れても何も反応を示さなかったが、その言葉が真実であるのだと目の前の景色が告げていた。
アリアは奥の墓石に一つのタグを置く。「なら、ここが貴方の場所として相応しいのでしょう。ガイウス先生」そう呟き、祈りをささげる。
アリアに付いてきていたレイナもその言葉を聞き、静かに祈りをささげる。「ここまで支えてくださってありがとうございました。先生が居たから、私達は今この地に立てています。私達も貴方のように、皆を守って見せます。どうか、見守っていてください」と呟きながら。
祈りを終え、2人は楽園を後にする。




