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27話 遠征⑧ ミーティア

 「作戦通りだ。俺は待機。君らは中へ。頼んだぞミーシャ」とガイウスは全員の目を見て頷き、「行ってこい」と告げた。


 僕達は振り返り、神殿内に侵入する。慎重に進み、大きな階段を登っていくが敵の気配が一切しない。結局、一度も戦闘なく最奥に辿り着いた。



 最奥には、大きな岩が祀られていた。


 「これが、シリウス?」とアリサが不思議そうに声を出す。


 ミーシャが僕たちの隣に立ち、「そうだよ。昔は輝いていたんだけど、今では見る影もないね。まあ、触って祈るのが習わしだし、それだけやったら戻ろっか。ガイウスを待たせてるからね」と言いながら促す。


 「分かりました」とレイナとフレッドが先に岩を触り、目を閉じて祈りを捧げる。微かに触った部分が発光していた。


 2人が祈りを終え、ゆっくりと目を開けると発光が収まり、ただの岩となった。


 レイナは岩に触れていた自分の手を見つめ、「なんだか、不思議な岩ですね。祈っただけですが、力を貰った気がします」と呟いた。フレッドも同じ様に不思議そうに手を見つめていた。

 二人が戻ってくる。


 アリサは緊張した様子でこちらを見ながら、「次は私たち…だね。」と話してくる。


 僕も緊張が隠せず、「うん。いこうか。」とアリサに頷きかけ、岩に近づく。


 岩の前に立ち、2人で同時に触った瞬間だった…。シリウスは、緋く、緋く全体が発光する。


 その光景に、ミーシャが「な、何が…起こってるんだ…!?」と驚きを隠せず構える。

 

 皆の声が遠のき始め、その声が届かなくなる。僕はゆっくりと目を開ける。

 僕達は白い世界に立っていた。そこは、僕がある人の声を聞いていた場所だ。あの力を使うと必ずここに来る。アリサもここに居るのはあの岩のせいなのだろうか…?


 「え…?こ、ここは…?」と横に立っていたアリサが目を開け、この光景に驚いて辺りを見回している。


 そんなアリサに向けて、「ここは、僕が力を使うとくる場所。あの緋い力に縁がある場所みたいだよ」と冷静に伝える。


 「そ、そうなんだ…?でも、どうして私も?」と困惑しながらも状況を理解するアリサ。


 僕とアリサが周囲を見渡していると、一つの影が現れる。



 その影は次第に形を帯び、「やっと…お会いできましたね。アイン。そして、アリサ」と優しく声をかけてくる。


 アリサはその影に対して構え、「だ、誰ですか…?どうして私の名前を…?」と咄嗟に質問する。その瞬間に影が揺らぎ、声の主はゆっくりとその姿を見せる。


 僕たちの目の前には、白いドレスを纏った美しい女性が現れた。その女性は、「これで…どうでしょうか…?2人とも、何かを感じるのでは?」と恐る恐るといった話し方で声をかけてくる。


 僕は、その女性の姿を見た途端、走馬灯のように誰かの記憶が走った。


 「……?貴方はいつもここで一人で特訓しているのですね」


 「俺は自分の使命の為に強くならないといけないんだ。君こそ、毎日俺のところに来ていいのか?アーツ国王の姫君様?」


 「もう…相変わらず冷たいですね。いいのですよ。私があなたと話したくて来ているのですから。それに、私はここに訪れた時点で用なしですので」


 「相変わらず変わったお姫様だな…。俺がこの訳の分からない岩に振り回されるのを見るのがそんなに楽しいかね…。」


 「ふふっ。それも楽しいですが、私の身分を知って変わらず接してくださる貴方と話をするのが最近の楽しみなのですよ。」


 「はあ…。王都の姫君とハインドゴーンの陰の家系の人間が会ってるなんて知れたら一大事だぞ…。まったく…。」


 「もう、そんな意地悪なこと言わないでくださいよ。そうだ、…?昨日の話の続きを…」


 そんな記憶が走り、僕は現在に戻る。そして、再び正面に立つ女性を見てその名前が零れ出る。


 「ミー…ティア…?」

 「お母…様…?」


 と2人で同時に声を発した。お互いの答えの違いに、僕たちは目を合わせる。


 「え?え?」と僕たちは目を見開く。


 女性は口元に手を添えて優しく笑い、「ふふっ。そうですよ。どちらも正解です。私はミーティア。ミーティア・クリスタリア。アーツ国王の妻であり、アインに力を譲渡した者。そして、アリサの遠い祖先です」と微笑みながら話してくれる。


 「えええええええ!?」と2人で驚きの声をあげる。


 ミーティアは、「ふふ、その反応が見たかったんです」とクスクスと笑った。

 しかし、すぐに真剣な表情になり、「ですが、あまりお喋りをする余裕もありません。この力について、アインは知識を失っている様ですね。そして、アリサはこの力を知らない。2人にこの力について話します。質問を受けられるほどの余裕がありませんので、心して聞いてください」と緊迫した様子で話し始める。

 「まず、アリサへ。貴方に与えられた力は、私が最期まで手放さなかった力。力の名はスピカ。これは、無限の力を放出する白き刃。私が最後まで所持した事で、この世を去った時にそれは失われました。アインの転生。セブンスの復活、私の子孫という稀有な立場。その偶然が重なり、失われていたスピカの力の一端が貴方に宿っています。私が所持していた頃とは違い、性能が最低限しか顕現していないようですが、必ず貴方の役に立つことでしょう。それと、アリサ。あなたはポラリスという星の子の仲介者という役割を担っています。セブンスとポラリスを繋ぐ託宣の巫女。これが、私。ミーティアの使命なのです。貴方は転生者ではありませんが、どうかこの使命を継いで、来る場所でポラリス様とこの世界を繋げてください…」

 「次に、アインへ。私があなたに譲渡したこの力は、あなたが内包した惑星の力を解き放つ物。私が譲渡した力の名はアトモスフィア。あなたが偶然手にした惑星の力「アステロイド」は、莫大な力をあなたに与えました。しかし、貴方はそれをうまく顕現できずにいた。ですが、あの日私と出会い、アトモスフィアという力と出会った。あなたは、自分が内包していた惑星の力を解き放つ事が出来るようになりました。ですがそれは…」とここまで話した所で、ミーティアの体が淡く輝き始める。

 「時間の様ですね…アイン…これだけはお伝えします。このアトモスフィアの力を…どうか…つか…くだ…」と途切れ途切れになりながら、ミーティアは最後に何かを言い残し、光となる。


 気がつくと、僕達はシリウスの前に戻っていた。


 「も、戻ってきた…の?」ともう何が起きてるのかわからないと言った表情のアリサ。


 僕も呆然と立ち尽くしながら、「うん…にしてもこれは…どうなってるんだ…」とミーティアから与えられた情報に戸惑っていた。


 そんな僕らの後ろから、数人の足音が響く。レイナ達が、「2人とも!大丈夫でしたか!?」と驚いた様子で駆け寄ってきてくれていた。


 三人が僕たちの側まで来ると、一番驚いた様子のミーシャが「君ら、何者だい!?シリウスは力を失っていると聞いていたが…?今、伝承の通りの輝きが…?」と目を丸くしている。


 続けてフレッドも、「おいおい、何があったんだ?お前達がその岩に触った瞬間、岩は光出してお前らを飲みこんでいったんだぞ!何事かと思ったぞ…。」と状況が掴めず驚いている様だ。


 しかし、この話を3人にしていいものか…。アリサと僕は顔を見合わせ、頷く。それは、僕たちの抱えた秘密を話してもいいという信頼の表れでもあった。


 「えっとね…今……え?」と話そうとした瞬間だった。


 天井が一部崩れ落ち、部屋の中に衝撃が響く。そしてその瓦礫の中央から、背中に6種類の武器を携えた男が歩いてきた。


 男はこちらを見るなり「目覚めたようだな…セブンス…お前達を…排除する」と言い放ち、肩に携えていた弓を構える。


 ミーシャは突然の事に驚き、「ま、待って!何の話?私達はここを取り戻したんだ!君もこちら側の人間なんだろう?どうして攻撃しようとするんだ?!」と声をかける。後ろ手にはミーシャの心臓兵器が握られていた。


 「黙れ。セブンスは最重要の排除対象だ。ポラリスは、必要のない人類進化を促した。ゾディアックの介入…戦争の勃発…どれほどの被害を出したと思っている…それは全て、ポラリスとセブンスに責任がある…俺たちは、お前たちを何度でも排除する…」と淡々と男は答える。


 フレッドも「何の話をしてんだ!セブンス?ポラリス?誰だよ!」と叫びつつ、剣を抜いて戦闘態勢となる。


 男は2人の声掛けに聞く耳を持たず、「黙れと言った。二度はない」と言い放ち、弓を射る。ミーシャは間一髪でそれを避け、矢のすぐ隣に座り込む。ミーシャは男を睨み、地面を蹴って反撃に転じようとした。その瞬間だった。ミーシャの隣に刺さった矢が震えだし、矢が爆発する。そして、とてつもない衝撃派を解き放った。


 ミーシャは至近距離で爆風に巻き込まれ、神殿の強固な柱を貫いて壁にめり込む。


 土煙が上がり、地面に叩きつけられたミーシャは「ガハッ…イッ…タ…」と辛うじて意識を保っていたが、明らかな重傷を負い、立ち上がれない様子であった。


 レイナはその様子をみて「ミーシャさん!」と叫び、心配そうに見つめる。


 男はその様子を一瞥し、「お前らもあいつのように死にたくなかったら邪魔をするな。次はないぞ…。用があるのはその岩の近くに立っている2人だ」と弓を肩に携え、今度はグレイブと大槍を両手に構えて歩を進め始める。


 「なんだか分かんねえが、こいつらを殺させるわけにはいかねえんだ…相手になるぜ」とフレッドは僕達の間に入る。咄嗟にレイナの加護も展開され、迎撃体制をとった。


 男はフレッドの様子に苛立った様子で睨みつけ、「次はないと言ったが…?」と言い放ち、姿を消す。次の瞬間には、男はフレッドが立っていた場所に立っており、フレッドは右側の壁に叩きつけられていた。


 壁に叩きつけられていたフレッドは「な、なにが…起き…」と驚きの表情を見せながら気を失い、地面に力なく倒れる。

 

 僕とアリサ、レイナの前に男が迫る。信じられない光景に呆然と立ち尽くしていた僕たちも剣を抜き、迎撃態勢を取る。


 男はその様子を待つように立ち尽くし、「お前達が覚醒しきる前に仕留める。これが任務だ。悪いが消えてもらう」そう言い放ちながら二本の武器を構える。


 男は僕たちが構えたのを確認した瞬間、「行くぞ。どこまでやれるか見せてみろ」と走り出す。

 急激に接近し、構えていた二本の武器のそれぞれを僕達2人に振り下ろし、同時に攻撃を仕掛けてくる。


 僕達は、その攻撃を受け止めた。はずだった…。次の瞬間には二つの武器が地面に転がる音が響いていた。僕たちの武器は、男によって軽々と吹き飛ばされていた。僕たちの武器を弾き飛ばした瞬間、男は荒々しく僕たちを蹴り飛ばす。僕とアリサは神殿奥の壁にそれぞれ吹き飛ばされる…。そして、レイナの障壁が砕ける音と共に、近くの地面が抉れた。


 ぼやける視界の中、僕はよろよろと立ち上がる。体の節々の痛みに声が漏れるが、無理やり体を動かして男の元に向かう。


 男はその様子に気づいて口角を上げ、「まだ意識があるか。なかなかやるじゃないか。まあいい、この岩の側で眠らせてやる」とその場で僕を待った。


 僕は、一歩…一歩と確実に敗北する相手に向かって歩き出す。ここで負けたら…アリサを…皆を殺されてしまう…。そんな最悪のビジョンが頭をよぎり続けていた。その結果にならないために、何としても…。

 そう心で念じ、目の前の敵を睨む。僕の手にはいつの間にか緋色の剣が握られていた。その剣は、シリウスと呼ばれていた岩が放った緋色そっくりで、今まで用いていたあの力の何倍もの輝きを内包していた。剣の中で呼吸をするように緋色が光、亀裂の入っていた部分からは溢れんばかりの力が血液のように走っていた。

 僕はその剣を一瞥し、両手で握る。懐かしい感触がした。鍛錬の際に使う訓練用の木の剣のように、何度も何度も使ってきたような、そんな馴染み方だった。


 僕のその変化を見て、「おいおい…覚醒前って話じゃなかったか…?」と男は驚きを見せる。そして、両手の武器に加え、携えていた槌と剣を浮遊させる。

 男の雰囲気が一変し、「行くぞ…お前だけは消す」と僕を明らかに敵視して突撃してくる。


 全く見えないはずの男の神速の動き。男は、瞬きもしない間に目の前に迫り、体を捻って大槍とグレイブを力一杯薙ぎ払おうとしていた。僕は、その動きを予見したように大剣を振り下ろし、軽々と二つの大型の武器を弾く。男は一瞬驚いた表情を見せるが、すぐに逆回転して蹴りを入れようとする。僕は何の焦りもなく体を仰け反らせてその攻撃を回避する。

 顔を上げると男の姿はなく、背後から殺気が感じられた。僕は迷いもせずに大剣を構えて体を捻り、後方を薙ぎ払う。そこには、男の放っていた剣が迫っていた。僕の攻撃で剣は神殿の床に突き刺さる。

 僕は剣を体の前に持ち、おもむろに天に向かって薙ぎ払う。そこには、男がグレイブを構えており、僕を叩き切らんと振り下ろしていた。勢いのついた男の攻撃が僕の大剣と拮抗し、衝撃波が轟く。僕は力を込めてその攻撃を押し返そうとした。しかし、男が口角を上げ、肩にしまっていた大槍を浮遊させる。そして、僕めがけてその槍を放った。僕はすぐに回避行動に移り、その攻撃を回避する。僕がいた場所は、男のグレイブと大槍が差し込まれ、地面を深くえぐっていた。男は二つの武器を乱暴に抜き取り、僕を睨む。僕は、その一瞬を逃さずに地面を蹴る。いつもの数倍体が軽く感じ、僕の通った先には緋色の光が残った。その光は男を貫き、僕は男の背後に立っていた。男の胴体に深い傷が現れる。


 男は自分の体に視線を落とし、「ガアアア!なんだ、この火力は!だが…!まだだ!」と痛みに震えながら、僕のほうへ振り返る。そして、先ほどよりもさらに速く、速く連撃を重ねてくる。


 しかし、不思議なことに男の攻撃の全てが手に取るようにわかり、男の攻撃の全てに体が追いつく。そして、その剣戟を弾き返していく。

 男は、刻まれた痛みからか隙を見せるようになる。僕はその隙を逃さずに一太刀ずつ丁寧に男の体に切り込んでいった。男に加えられた傷口部分は焦げ付き、とても人間では生きていられない損傷に見えた。

 しかし、男は攻撃を止めずに狂ったようにこちらに挑み続けた。


 男は次第に理性を無くし始め、「クソ!クソ!どうなってやがる!ドウナッテ…アアアアァ」とリックさんのように変貌を始める…。

 男は攻め続ける姿勢を止め、入り口側に大きく飛び退く。そして、天を仰ぎながら「クソッタレガアアア」と叫び、全ての武器で自らの心臓を突き刺した。鮮血が迸り、男の体を赤く染める。僕から受けた傷とその心臓部分からの出血…。狂ったような表情。とても人とは言えない異形の見た目となった男は、一切の武器を見せずに天を仰ぎ、高笑いをしていた。

 そして、急に僕のほうへ顔を向け、「ハハハハハ!イクゾオオ!」と狂気的な声をあげて男は突進してくる。男の体には変化が生じていた。男が腕を振るたび、蹴りを入れるたび、その部位はさまざまな武器に変化して攻撃を入れてくるようになっていた。


 荒々しいながらも、圧倒的な連撃と格闘センス、さらなる速さの獲得により、男は数倍の力を獲得していた。先ほどまでは予見する余裕があったが、その感覚よりも早く至る所から致命的な攻撃が叩き込まれ、僕は防戦状態となる。

 周囲から見ると、緋色の剣戟と男の武器とが弾きあう音とその光のみが辛うじて視認できていた。その光景はまるで、鍛冶場で武器を鍛えているような、異様な光と熱に包まれていた。


 男の武器や皮膚は、僕の剣が発する熱や光で溶ける事がなかった。原理は不明だが、普通の大剣のように切り刻むしかないようだった。しかし、この圧倒的な攻撃に対して活路を見出すのが難しい…肘から繰り出される槍やグレイブ。前腕から繰り出される大剣。膝から出るナイフ。足から出る槌。この全てが一撃で人を葬る力を秘めていた。

 もはや人のそれではない狂気で満ちた男に対して、体力勝負では勝ち目がないのは明らかだった。埒が開かない…。打つ手のない現状に冷や汗が落ちた。そんな時だった。体が軽くなり、攻撃を受け切れるようになり始めたのは。


 聞きなれた声が僕の耳に届く。「アインさん…まだ…やれますよね…」と。レイナの声だった。男に吹き飛ばされて気を失っていたレイナが意識を取り戻し、僕に加護を展開してくれていた。


 僕を包む金色の光のおかげで、拮抗していた剣戟に力の差が出るようになり、男に多少の隙が生まれる。その小さな隙は、僕が有利になるには十分だった。

 ナイフの攻撃を受け止め、すぐさまもう一方の足から来る槌の薙ぎ払いを見切る。男は回転して着地し、すぐに地面を蹴って剣を押し付けてくる。そして、もう一方の腕から槍を突き込んでくる。このタイミングだ。


 僕は間一髪のところで槍を躱し、男の槍と大剣を同時に斬りあげる。男は両手を上に打ち上げられ、一瞬動きが止まる。僕は体を捻って横薙ぎの一閃を加える。

 しかし、確実に捉えたはずのその攻撃は空を切る。感触が感じられず、僕は視線を男の方へ向けようとした。

 僕の腹部に痛みが走った。下を向くと、僕の両脇腹に血が滴っていた。僕が前を向く前に、そのまま蹴り飛ばされる。


 男は腕を上げられた瞬間、その勢いを利用してバク転をした。僕の横薙ぎを避け、すぐさま突進。前腕の剣を僕の両脇腹に差し込む。すぐさま剣を引き抜き、僕を蹴り飛ばしてその場に立っていた。


 地面を擦りながら数メートル投げ飛ばされ、無様にゴロゴロと回転し、シリウスに軽く当たり、勢いが止まる。痛みに耐えながら、すぐさま剣を杖代わりにして膝をつく。痛みで苦痛の声が漏れるが、後ろの岩に手を当てながら辛うじて立ち上がる。その時だった。


 「アイン…こんなところで死んではなりません…この岩に残された力で…貴方を。サポートします。」とミーティアの声が脳内に響く。


 僕はその声を聴いた瞬間、何故か口角が上がり、「助かるよ…!ミーティア!」とおもむろに男に向かって走り出した。すると、緋色の大剣は緋い光の中に白い光を纏い始める。僕は、金色のオーラと純白のオーラの二重を纏い、男に迫る。


 男は、その様子に驚く様子も見せず、すぐさまこちらに突進する。すぐに畳みかけてくる。しかし、戦い始めた直後のように、僕にはその一つ一つの攻撃が止まっているように見えた。男の荒々しい攻撃の全てを難なく弾き、回避しながら、隙を探す。そして、訪れた一瞬のスキを逃さず、攻勢に転じる。男の攻撃を弾き飛ばしながら、あらゆる全ての部位を切り刻む。攻撃に弾き飛ばされ、力なく倒れそうになる男に対し、勢いを落とさずに突進して渾身の力を込めながら切り抜ける。


 大剣の熱を払うように、勢いよく振る。その瞬間、辛うじて立っていた男の体に緋色と白の混じった奇跡が斜めに現れ、男の存在を崩壊させ始める。

 男は「ハハハハハハアーハハッハハ」と笑いながら、天を仰ぐ。そして、天からの光に包まれ始める。光は男を囲い、天まで円柱状に延びていた。ゆっくりとその光が収縮していき、一本の線となり、完全に消える。そこには男の姿はなく、何も残されていなかった。


 その様子を見届けた瞬間、ミーティアとレイナの加護が失われ、無理をした自分の体が悲鳴を上げる。圧倒的な苦痛と傷ついた場所からの多量の出血。到底耐えられる状態ではなく、僕は膝をついて大剣を地面に突き刺す。気がつくと大剣は光を失い、いつもの姿に戻っていた。


 「アイン!大丈夫?!」と遠くからアリサの声が聞こえる。


 振り返ると、頭を押さえながらフラフラとアリサがこちらに近寄ってくるのが見える。僕も応じようとしたが、体が全く動かなかった。


 「大丈夫…ちょっと無理しすぎたみたい…」と届くかもわからないか細い声を振り絞って答える。


 そして、金髪の少女の方へ視線を向け、「レイナ…助かったよ…ありがとうね…」とうつ伏せで動けなくなりながら、心配そうにこちらを見つめるレイナに礼を述べる。


 「いえ…お役に立てたなら何よりです…」と苦しそうな顔をしながら微笑んでくれた。


 視界が揺らぎ、その場に倒れる。意識が消える寸前、聞きなれた皆の声が途切れ途切れに聞こえた気がした。


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