20話 遠征① 出立
遠征当日。
「よし、4人揃ったな。これから、前線都市シリウスへの実地演習を開始する。シリウスまでは2.3日の長旅となるが、今回は馬車での移動だ。直近の件もあるから、シリウスまでは俺も行く。それじゃあ、出発だ」と普段とは違い、真剣な表情でガイウスが合図を出す。
4人で馬車に乗り込み、ガイウスは御者の隣に座った。
「あんな事の後で呑気すぎるかもしれないけど、ちょっと楽しみだね」とアリサが楽しそうに笑いかける。
「そうだね。僕はあんまり村の外に出た事もないから、結構ワクワクしてるんだ」と僕も少し浮ついている気がしながら応えた。
レイナは僕達の会話を微笑ましそうに見守り、「お二人は昔からの知り合いのようですね。とっても仲が良くて羨ましいです。ねえ?フレッド?」と横に座ったフレッドに話を振る。
フレッドはバツが悪そうに視線を逸らしながら、「あ、ああ。そうだな…レイナも俺に対しての態度を改めてくれたら2人みたいに普通には…」と言った途端、視線を落とす。すると、レイナが静かにフレッドの足を踏んでいた。
レイナはフレッドの回答を無視し、「そういえば、お二人は学園で初めてお会いになられたのですか?もしかして私達のように幼馴染ですか?」とアイン達に話を戻す。
アインは首を横に振り、「学園の入学試験で同じペアになったのが初めて話した時かな。なんだかんだそこからずっと一緒にいるから、アリサとは特に仲がいいかもね」と知り合った経緯を話す。
レイナはふむふむと呟きながら観察するように二人を見つめ、「そうでしたか。私達は元々幼馴染ですが、お二人の間柄が羨ましく思います。お互いを信頼されているようで、私にもそんな縁が欲しいものです」と微笑む。
その言葉に反応するようにフレッドがレイナの方を向き、「おいレイナ。それは遠回しに俺は信頼できないって意味か?」とジト目で尋ねる。
レイナは首を傾げながら、「フレッドも信頼?していますよ?ただ、お二人のように特別な関係というわけではないでしょう。私たちは何というか、姉弟のような感じですかね」と何が不満なの?っと言わんばかりの回答を返す。
フレッドはその返答に不満そうな表情を見せ、「おい、絶対俺を下に見ただろ。昔は俺の事頼りにしてただろう…。昔のお前は、フレッドとけっこ…」と何かを言いだそうとする。
レイナはフレッドの言葉を無理やり遮り、「ワアーー!フレッド!それ以上言ったらその口を開けなくします!今ここで!今ここで!」と今にも手を出しそうに前のめりになる。
フレッドはその気迫に負け、「あ、なんでもない。なんでもない。ハ、ハハ」と話を流す。
そんな微笑ましいやり取りを見つめ、「2人も十分いい関係じゃないか」と笑ってしまう。
その時、アリサが思いつめた表情で「あの、レイナ?今さっき、特別な関係と言いました?それはどういう…?」と呟く。
レイナはその質問に不思議そうに首を傾げ、「ん?言葉の通りですよ?アリサ?貴方達はお付き合いをされてるんですよね?」と返す。
その返答を聞いた途端、アリサは顔を真っ赤にして首を横に振り、「お、お付き合い?!そ、そんなんじゃ!な、ないよ…?」と慌ただしく返答する。
アインも顎に手を当て、「も、もしかして皆にはそう見えてるのか…?僕達、距離近すぎる…?」と真剣な表情で悩む。
フレッドは何言ってんだこいつと言わんばかりに「おう。そうにしか見えん。」と淡々と答える。
続けて、レイナも同じように「ええ。違うという方が無理があるのではないですか?」と淡々と答える。
アリサは恥ずかしそうに顔を隠しながら、「もう、二人ともこの話はやめてー!話を拾った私が悪かったのー!もう許してーっ…。」と必死に話を止めようとする。
その様子を見て、レイナがニヤリと口角を上げ、「えーー?アリサとアインさんの話、聞かせてくださいよー!あの宿で、あんなことやこんな事、されていたのではないですかあ?」と飛びつくようにアリサの隣に座り、ニヤニヤと突く。
アリサは詰め寄るレイナを優しく離れさせながら、「レイナーーー!もう!からかわないでー!アインも何か言ってよー!」とアインに助けを求める。
アインはその光景を見守りながら、「あ、あはは…レイナ、アリサをいじめるのはやめてあげて、ね?宿では何もしてないよ…何も…うん」と静かに答える。
煮え切らない返事の仕方をしたアインの言葉にレイナがピクッと反応し、「何で少し濁したんですか!アイン、まさかアリサを…!?」とニヤニヤしながらアインの隣に移り、その話を詳しくと言わんばかりの顔で見つめてくる。
一部始終を見守っていたフレッドが立ち上がり、「いい加減にしろ。レイナ。」とレイナの頭にチョップを入れる。
レイナは大袈裟に「イターーイ!」と頭を抱えてうずくまる。
「悪いな。レイナはこういう話が好きみたいなんだ。全く…」とフレッドは申し訳なさそうにしながらレイナを元の席に連れて行く。
レイナは頭を押さえながら、「はしゃぎすぎました…ごめんなさい…」と反省してうずくまっている。
アインは困った表情を見せながら、「き、気にしないで…な、アリサ」とアリサに話を振る。
アリサも困った表情で頷き、「う、うん。私達は大丈夫だから…」と言ってから居心地が悪そうに外を見つめていた。
その後もわいわいとはしゃいだり、道中の村で休憩したりしていると、いつの間にかシリウスへ到着した。
馬車が止まり、「着いたぞ。お前ら。荷物を下ろして集まってくれ」とガイウスが召集をかける。
「四人とも揃ったな。ここが、前線都市シリウスだ。それと、今日から世話になる教官役、リックだ。俺と前線を共にした事がある優秀なやつだ。リック、自己紹介を」
ガイウスが手を向けた方向には、細身で長身の青年が立っており、「先輩は変わらないですね。紹介に預かりました。リックと申します。ガイウス先輩にバシバシ指導された被害者の一人だよ。シリウスでは僕ともう1人教官として指導させてもらうね。宜しくお願いします」と丁寧な挨拶をしてくる。
ガイウスは顔を引きつらせるように笑いながら、「おい、リック。この優しすぎるで有名な俺の指導の事をなんて言った?ああん?」とリックを見る。
リックはその表情を見て冗談っぽく怯えながら「先輩、そういうとこですよ。よく生徒の子たちも逃げ出さないで付いてきてくれましたね…。異名を教えてないんですか?鬼の…」と口を滑らせそうになる。
ガイウスはその言葉を聞くや否やリックの肩を持ち、「おい、リック。ちょっと用事ができた。お前にな。今すぐ来てくれるかー?」と笑顔で詰め寄る。
リックは全てを察したような表情を見せ、「あ、冗談です!はい!最高の先輩からの指導で!はい!最高でした!ハハハ!」とすぐさま訂正する。
ガイウスはご機嫌になり、「そうだろう?最初からそう言いなって」とリック教官の肩をバシバシ叩いていた。
リックは気を取り直し、「じゃ、じゃあ、君たちの拠点に案内するね。そこでもう1人の教官とも会えるはずだよ。ほら、先輩は帰るんでしょ!早く行ってください!」とガイウスの背中を押して馬車に押し込む。
ガイウスは馬車に詰め込まれ、「おい、リック!押すな!押すなって!お、おいー!」と断末魔を放ちながら行ってしまった。
リックは大きなため息を吐き、「はあ~~。もう、先輩は相変わらずだな…」と言った後に咳払いをして、「ごめんね。それじゃあ、行こっか」と案内を始めてくれる。
アインは道すがら、「教官はガイウス先生とどんな関係だったんですか?」とリックに訪ねてみる。
リックはそれを聞いて、えっとねえと話し始める。「さっきも言ってたけど、ガイウスさんは前線で一緒に戦ったんだよ。僕が後から来たから先輩って呼んでたんだ。ここでは、あの顔と実力が相まって恐れられてたんだ。指導も厳しかったからね。でも、不器用なだけで仲間想いの良い人なんだよ。なんだかんだで、僕はずっと先輩と一緒に戦ってたんだ。だけど、先輩はある日急に前線を離れるって言って消えちゃったんだ。数年後、こうやって生徒を連れてここに戻ってきた時、ノーツコア学園で教鞭を取っているって知ったんだ。まあ、そういう事で、あの人とは長年の付き合いなんだよ」と簡単に答えてくれる。
アインはそれを聞いて納得したように頷き、「そうなんですね。先生は前線経験者としか自分の事を話されなかったのであまり詳しくないんです。先生は凄い人だったんですか?」と続けて尋ねる。
「ああ。とっても偉大な人だったよ。鬼神の如き強さでここを守り続けた人だ。でも、あの人はそういう噂とか、人伝の話を好まなかったから知ってる人は多くてもあんまり話してくれないと思うよ。あの人に皆が気を遣ってるんだね」
アインは首を傾げ、「先生は過去に何かあったんですかね。そこまで昔の事を話して欲しくないなんて。活躍した事も多いでしょうに」と返す。
リックも首を傾げ、「どうかな。先輩は自分のことを話さないからね。気になるなら直接聞いてね。あんまり言い過ぎると後が怖いからね。ハハハ…」とバツが悪そうに笑う。
話がひと段落するとリックさんは立ち止まり、宿の方を指さして「さて、着いたよ。ここが君達の拠点の宿屋、星見亭だ」と紹介する。
「おおー!立派な場所ですね!こんなとこに滞在できるなんて!」
「綺麗な場所ですねー!」
「おお、こりゃまた。良さそうなとこだな。」と各々がワイワイと口を開く。
リックは微笑ましそうに見守り、「さあさ、入って」と宿の扉をくぐる。
「失礼します!」
星見亭に入ると、制服を身に纏った小柄な女性が「おおー?学生さん達!星見亭にようこそ!お待ちしておりました!」と嬉しそうに出迎えてくれる。
リックはジト目でその女性を見つめ、「あの、ミーシャさん。なんで制服を着ているんですか…」と呆れ顔で尋ねる。
小柄な女性はプクーっとむくれ、「ええー?何ですぐにバラしちゃうんだよー!星見亭の人として学生にお近づきになろうと思ったのにーーー」とリックに向かってポカポカと攻撃する。
リックはそのまま小柄な女性に手を向け、「はあ…この人はミーシャさん。僕の部隊の先輩メンバーの1人だよ。」と紹介する。
小柄な女性は腰に手を当てて、エッヘンと言わんばかりの態度を見せ、「ミーシャだ!宜しくね学生諸君!リックが失礼なことしてないかい?何かあったら私に言ってくれ!リックはボコボコにしてあげるから!」と自己紹介する。
リックは溜息を吐き、「ミーシャさん。余計なこと言ってないでこれからの事を説明してください」とミーシャに促す。
ミーシャはつまらなさそうに溜息を吐き、「リックはせっかちだな。全く。それじゃ、説明する前に、それぞれの部屋に荷物を置いてきてね。端から、アイン君。アリサちゃん。レイナちゃん。フレッド君ね。ほら、行って行って!」と二階を指さして皆を急がせる。
「ええ?は、はいー!」
「わかりましたー!」
と皆は強引に2階に連れて行かれてしまう。
皆で上がった後、「下で待ってるからなー!準備して降りてきてくれ!」と下からミーシャさんの声が響く。
アインは不安そうな表情を見せ、「変わった人だったな…大丈夫かなここ…」と呟いて部屋を出る
レイナが隣に付き、「面白そうな人でよかったじゃない。フレッドみたいな恐ーい人だったらどうしようかと思ってたところよ」とニコニコしながら話してくる。
フレッドはそれを聞いて「おい、俺を巻き込むな。後、俺は怖くない」と冷静にレイナの言葉を否定する。
レイナはフフフっと笑いながら「それはどうかなー?ねえアリサ?」とアリサに声をかける。
アリサは回答を避けるように「あはは…とりあえず早く下に戻りましょう?」と言ってそそくさとレイナを連れて階段を降り始める
フレッドはそれを見て「アリサ…その話題の変え方は結構傷つくんだが…」と片手で顔を覆って明らかに傷ついていた。
アインがすぐさまフレッドの元に駆け寄り、「大丈夫!怖くないよ!大丈夫!」と最大限慰めの言葉をかける。
フレッドは顔を上げ、「ああ…俺の味方はお前だけみたいだ…アイン…」と呟く。
下の階に戻ると、星見亭の店員の方も近くにいた。
明るい雰囲気の少女が、「あ、学生さんですね!星見亭の店主、コリンと申します!短い間ですが、困った事があれば相談してください!宜しくお願い致します!」と丁寧にお辞儀してくれる。
「お世話になります。宜しくお願い致します」
「宜しくお願い致します!」
「宜しくお願い致します!」
「お世話になります」
と一斉に挨拶を返す。
僕たちが戻ったのを確認してから、リックさんが話し始める。「さて、全員揃ったね。実地演習は初めてだよね?それじゃ、簡単に説明するよ。この演習では、僕達が出す課題を攻略してもらうんだ。課題は三つ。順は問わない」
「一つ目はシリウス北西に現れたという大型の魔物の討伐。見た目は大きな亀のようで、動きが俊敏。湖の付近で確認されています。それの討伐を頼みたいとの事」
「二つ目は、シリウスの南側で丘の上にのみ咲く花の回収。病院で寝ているある女の子の思い出の花だそうです。家族の方は取りに行く事ができず、娘にもう一度見せてあげたいとの事です」
「三つ目は、シリウスを祀った神殿の奪還です。この都市は、栄えているように見えますが実際はそうではありません。実のところ、シリウスはゆっくりと西へ西へと後退の歴史を刻み続けています。激化し続ける魔物の侵攻によって、ゆっくりと街の要所は魔物の手に落ち始めています。そして、最近制圧されたのが北東側に鎮座するこの街の象徴的存在、シリウスと呼ばれる大岩を祀った神殿です。神殿周辺は既に魔物が防備を固め始めており、迂闊に近寄ることは出来ない状態となっています。現在、そこの攻略を思案している最中ですが、人手が足りていません。このため、僕達と協力してシリウスを奪還してほしいのです」
「以上の三つが今回の遠征の依頼です。基本的には僕達は常にあなた方に付いて行けない状態です。シリウス東で防衛の任務があるもので。ですが、困った事があればコリンさんに声をおかけください。コリンさん経由で僕達も救援や助言をする事が可能です。」
「以上です。何か質問はありますか?」
皆の表情を伺い、特段聞きたいことはなさそうだったので、「大丈夫です。では、始めさせて頂きます」と伝える。
リックはその返事に頷き、「はい。宜しく頼みます。街では、傷を治す物資や任務の情報が聞けるかもしれませんよ。では、申し訳ないですが僕達は戻ります。くれぐれも無茶はしないでくださいよ!」と釘を刺す。
「おい、リック!私何も話してないぞ!もうちょっといさせろー!こらー!」とミーシャさんが抵抗していたが、サラッと担がれていった。
2人が去り、静かになった星見亭で、「さて、じゃあ何から始めようか」と僕が話を切り出す。すると、レイナが手を挙げる。
「まずは教官の言っていたように物資の調達と情報を集めるところから始めますか?」
フレッドも「ああ。そこから始めるのが無難だろう。2人ずつに分かれて情報を集めよう。俺とレイナで亀の事と薬の調達。アインとアリサで病院の女の子とその家族から話を聞いてくれ」と付け加えて動き出しの案を固める。
レイナは頷いて立ち上がり、「分かったわ。それじゃあ、また星見亭で集合しましょう」と準備を始める。
アリサも立ち上がり、「それじゃあ、行きましょうか。アイン、ほら」とアインに声をかける。
アインも立ち上がり、「そうだね。じゃあ、2人とも宜しくね」と二人に声をかけて外を目指す。
フレッドは片手間に「まかせろ。後でな」と手を振って見送った。
星見亭を出て、道ゆく人に病院について尋ねる。星見亭から少し行ったところに病院があるとの事だった。
腕を組んで悩みながら、「どんな花なのかな。綺麗な花なんだろうね」とアリサが話してくる。
「そうだね。思い出の花って事だし、しっかりと届けてあげないとね」
街の人達から聞き取った情報と一致する建物が目に入り、「ここがその病院かな。入ろう」と言って二人で入っていく。
病院に入り、事情を説明して女の子の部屋を教えてもらう。部屋につき、ノックして入室する。すると、タイミングが良かったようで女の子とその母親が部屋にいた。
ベッドの側で静かに座っていた女性は首を傾げ、「貴方達は?病院の方ではなさそうですが…」と尋ねてくる。
アインは静かにお辞儀をしてから、「急な訪問で申し訳ありません。僕達はノーツコア学園の学生です。僕がアイン、隣がアリサです。リックさんから依頼を受け、話を聞きに参りました」と丁寧に伝える。
ベッドで体を起こしていた少女が「リックおじちゃんと話したのー!いいなー!」とリックの名前に反応して明るい表情を見せる。
女性は話に納得し、すぐに椅子を用意しながら「そうでしたか。わざわざありがとうございます。よかったらおかけください。」と手を向ける。
アインは一礼して腰掛け、「ありがとうございます。お名前をお聞かせいただけますか?」と尋ねる。
女性が頷き、「はい。私がナタネ。この子はリナと言います」と紹介してくれる。
「いいお名前ですね。リナちゃんが先ほどリックさんの名前に反応されたのは?」と続けて尋ねる。
「ああ、リックさんはよく病院に訪れてくださるんです。ここは、魔物達から受けた傷を癒す病院ですので、責任を感じておられるようです。それで、会っているうちにリックさんの事をこの子が気に入ってしまって」
アインは納得したように頷き、「そうでしたか。リックさん、色んな事をされてるんですね。それはそうと、依頼の話を聞かせていただけますか?ある丘にのみ咲く花をもう一度見たいとの話でしたが」と依頼について切り出す。
ナタネは頷き、「はい。その花というのは、スピネルという名前の赤い花です。一定の条件が合わないと咲かない花のようで、付近では南に少し下った地点にある丘でしか咲いていないそうです。あの花は夫がよく摘んできてくれていたのですが、夫は他界してしまいまして…その花は美しいだけでなく、痛みを和らげる効能もあるそうです。しかしながら、最近は魔物の動きも活発で商人の方も摘みに行けないのだそうです。ですので、今回依頼させていただいた次第です」と詳細を答える。
アインは簡単にメモを取り、「そんな花があるのですね。分かりました。必ず僕達が持ち帰ります。それまでもうしばらくお待ちください」と言って立ち上がる。
ナタネも立ち上がり、「ありがとうございます。宜しくお願い致します。」丁寧に頭を下げる。
2人の会話を見守っていた少女が、アイン達の帰りを察知するように口を開き、「お兄ちゃん達行っちゃうのー?お母さんとばっかり喋ってずるいーー!私も話したいのにー!ね、ね!お姉ちゃん!何かお話ししてー?ダメ?」とウルウルと瞳を濡らしながらねだってくる。
アリサはその様子を見て優しく笑い、「じゃあ、ちょっとだけだけど、お話ししよっか。何の話がいいかな」とリナの近くに座りなおす。
リナの表情がパッと明るくなり、「じゃあー。学校の話してー!私、行った事がないの!」とワクワクとした表情で話を待つ。
アリサは授業やマッチョコック、水泳部の話を楽しそうにリナちゃんに伝えた。
リナちゃんはどれも初めて聞く内容だったようで笑ったり身を乗り出したりと楽しそうに話を聞いてくれていた。
まだまだ話し足りないといった様子で身を乗り出していたリナだったが、「それでそれで?!もっと聞かせ…イッタ…」と急に胸を抱える。
アリサは驚きながらリナの背中を支え、「ど、どうしたの!リナちゃん!」と形相を変えて声をかける。
リナは苦痛の表情を浮かべながら無理に笑い、「だ、大丈夫…はしゃぎすぎたみたい…お姉ちゃんありがとう。ちょっと休むね…またお話聞かせてね」と言いながらベッドに横になる。
ナタネがスッと側に付き、「すみません。この子の傷は特殊なようで、こうやって急な激痛と疲れが発作的に出てしまうのです。安静にしていると頻度は多くないのですが、原因がわからず緩和治療しか出来ていないのです。アリサさんには非はありませんので、どうかお気になさらないでください。お時間をいただいてありがとうございました」とリナを心配しながらこちらに感謝してくれる。
アリサはバツが悪そうに俯き、「すみません…リナちゃんの事を気遣うことが出来ていませんでした」と申し訳なさそうに頭を下げる。
ナタネは「いえいえ」と首を横に振り、「この子がこんなにも楽しそうだったのは久しぶりです。いつも寂しそうに窓の外を眺めているものですから。むしろ感謝しています。ありがとうございます」と言って優しく笑い、「お時間は大丈夫でしょうか?この子は私が見ておりますので、お二人はやるべき事をなさってください」と言って送り出してくれる。
アイン達は立ち上がり、「ありがとうございます。長い時間居座ってしまいすみませんでした。では、僕達は失礼します」と言って部屋を後にし、星見亭に急ぐ。
星見亭に着くと、フレッドとレイナが待ってくれていた。
こちらの帰りに気づいたフレッドが、「お、戻ったか。首尾はどうだ?」と声をかけてくる。
「バッチリだよ。これで二つ目の任務は始められるよ。そっちはどうだった?」
レイナも2人の帰りを歓迎し、「こちらも同様です。物資も必要そうな物は揃えました。では、情報共有といきましょう」と言って席に促す。
レイナとフレッドは一つ目の任務目標について色々と聞いてきてくれた。
亀は湖周辺によく姿を現す。甲羅に無数の棘を持ち、それを放つ攻撃が強力なのだという。俊敏に動き、その体躯を活かした戦法も得意とするとの事だ。棘による裂傷などに注意が必要だという。
「こんなところですね。危険な魔物のようで、都市に近づく前に討伐して欲しいとの事でした。アインさん達の話も聞いていいですか?」とレイナはアイン達に主導権を譲る。
僕はシリウス南にある丘の上でのみ咲く赤い花、スピネルを回収する事が任務である事。最近の魔物の動きから回収に行ける人がいない状態である事を共有した。
レイナは腕を組み、「そうですか…どちらも優先度は高そうですね。ですが、難易度から見るとお花の回収の方が先でしょうか。体を慣らして、岩の亀とシリウスの奪還という順で行きませんか?」と今後の方針を提案する。
アインは頷き、「そうだね。それでいこう。任務は1日1つで3日に分けて決行する。万全の状態で確実にこなそう。とりあえず、明日から順番にやっていこう。今日はそれぞれ調子を整えてね。」と付け加える。
それぞれが方針に賛成し、解散する。




