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14話 2度目の演習と最強の力①

 演習当日


 「よし、今日が運命の演習の日だ!皆、本気で作戦を組んでたみたいだな。いい心がけだ。では、今回の演習のルールを説明する。3チーム別々の地点から演習はスタートする。チームのそれぞれの位置は初めに知らせておく。そして、チーム全員に、ビーコンという物を装備してもらう。数分に一度、全員に居場所を知らせるための大きな音と光を発生する魔法を上空に放つ専用の装備だ。チーム内で装備が稼働するのは一台だけ。つまり、位置が知らされ続けるのは1人だけだ。稼働している装置を装備した者が離脱すると、すぐにチーム内の誰かの装置が起動状態となる。つまり、人数が減ると不利にもなる。今回はチームとしての勝利が全てだ。個人でどこまで倒しても最後に自分のチームが残っていないなら敗北だ。逆に言うと最後まで残れれば何もしなくても勝ちだ。」

 「スタート地点は、アリサ班、南東の森林地帯の中央付近。レイナ班、北東の平原地帯。ロイド班、中央の平原地帯だ。遠いと時間がかかるから、全体的に東に寄せた配置となっている。スタート地点に一目散に走れば見つけられる可能性のある距離感だ。どうするか相談してからスタート地点につけ。最後にタイムリミットについて。日が暮れた場合、俺が出る。全員の装置も起動し、狩に行く俺もいる。10分も残れないと思え。だから、日が暮れるまでに決着をつけろ。運で勝敗が決まるなんて面白くないからな。これで説明を終える。最後に30分ほど相談してからスタート地点につけ。以上。解散!」



 僕達はスタート地点に向かいながら作戦を考えていた。


 「さて、どうしていこうか。」と僕が話を切り出す。ビーコンについては今日追加された情報だ。全員が作戦を練り直す必要がある。


 「ビーコンをどうするか、悩みどころですね。」


 「ああ、だがビーコンで撹乱を行うなら俺が引き受けた方が良さそうだな。この中で中距離帯を保ったり位置を身軽に変えられるのは俺だけだ。」とカールが立候補してくれる。


 「いや、それじゃだめかな。僕達3人は近距離戦がメインで位置を知られることは大きなデメリットにならない。でも、カールは援護が基本だし位置を変えつつ僕達の支援をしてもらう必要がある。だから、カールが位置を知られるのはよくない。仮にカールが撹乱で走り回るとしても、カールなしだったらどちらのチームと当たっても戦術的に不利だよ。」

 「一番妥当なのは僕達3人のいずれかがビーコン役を引き受ける事。そして、ビーコン役を中心にカールが援護を行っていく立ち回り。森林地帯なら地形を利用して分断や不意打ちなんかもやりやすいと思うよ。」


 「そうだね。俺たち3人はそこまで戦術の幅が広くない。だからこそ地形を活用した戦術とか分断してのタイマンでの戦闘なら有利を保てるかもしれない。」とノマールも賛成してくれる。


 「分かりました。では、私がビーコンになりましょう。どの道私は皆さんに注視されているので連続戦闘は避けられないでしょう。なら、私が中心で凌ぎつつ、アインやノマールさんが分断とかクリスタルの損壊を狙っていく戦術がいいと思います。」


 「いや、僕はそれが最善とは思えない。ビーコンは僕がやる。僕は唯一この中で守りにも使える心臓兵器を持っている。それと、このチームの要を釘付けにされてしまうと僕達はとても不利な状況になる。アリサが動けなくて僕やノマールが各個撃破されたら状況は最悪になる。だから、僕が凌ぐ役を引き受けるよ。」


 「え…?で、でもアインの心臓兵器は…」


 「大丈夫だよアリサ。僕が何とかするよ。君が鍛えてくれたんだ。もう大丈夫だよ」とアリサだけに伝える。


 「アインがそれでいいならそれで行こうぜ。まあ、俺もアリサもノマールも付いてる。上手く援護しあえば汎用性の高いこのチームならやれるさ」


 「分かった。じゃあ俺とアリサに遊撃は任せてくれ。カール君はアイン君の援護と出来るなら僕達も支援してくれると助かるよ。」


 「おう、任せとけ。上手くやってみせるさ」


 「分かりました。では、アインを中心にカールは援護、私とノマールさんは遊撃で行きましょう。私の事を早々に狙ってくることは想像がつきますので、スタートからすぐ戦闘になる可能性が高いと思います。なので、チームで分断はせず一定の距離感で4人で動きましょう」


 「了解!」

 「はいよ」

 「分かった」


 と簡単に方針を決めて演習の開始を待った。



 演習開始の合図が鳴り、ビーコンを起動する。最初は話のとおり僕がビーコンを持つ。


 「では、行きましょう。この付近は森林地帯ですが、北東方面から流れる川と西に進みすぎると中央付近の大きく開けた丘についてしまいます。なので、森林地帯を抜けないように川を渡り、出来る限り森林地帯から出ない場所で待機しましょう。」


 「分かった。じゃあ、僕が先頭で進むね。囲まれないように多少距離を保ちつつ行こうか」


 「了解だ」

 「分かった」


 と順調に歩を進めた。他の班のビーコン反応に耳を澄ませると、北東方面からビーコンが近づいているように聞こえ、中央方面は東に進路をとっているように聞こえていた。森林地帯は視界が悪いためビーコンの光を見る事は叶わなかった。


 進み始めて数分経ち、出来る限り南寄りで森林地帯を抜けないように川を渡ろうとしていた。しかし、ビーコンの音がすぐ近くに聞こえていた。


 「そろそろ接敵しそうだね。注意していこう。川の付近は僕達の戦術的に不利だ。早めに渡り切って作戦通りに待機しよう」


 そう話した瞬間だった。僕の近くに立っていた木の根元部分が一瞬のうちに焼き切られたようで、大きな音を立てながらこちらに倒れてきた。


 僕は咄嗟に後ろに飛び退き、木の方向を見る。すると少し奥の川辺からフレッドが心臓兵器をこちらに構えていた。彼の大剣は上下に分かれ、その中央で闇属性の球がエネルギーを充填していた。


 「フレッドか…1人だけど様子が変だね。あれがアリサが言ってたレイナの加護か…」と思った事を口に出しながら心臓兵器を構える。


 フレッドは周囲を気にする素振りも見せず、地面を蹴り僕に突進してくる。

 僕の間合いに入る手前辺りで勢いを止め、そのまま照射状態にした球を刃先を延ばした剣のように扱い横凪にしてくる。

 僕は咄嗟に飛び上がり難を逃れたが僕達の作戦が崩壊した事に気づいた。


 「ま、まずいな。周辺の木が根こそぎ倒れてる…これじゃ分断も不意打ちも難しいぞ…」

 とそんな事を口にした瞬間、フレッドは剣を大剣に戻して僕に突撃してくる。

 上空にいた僕はフレッドの重たい一撃によって地面に叩きつけられた。間一髪でフレッドの攻撃を防げたので地面に落ちただけで済んだ。


 しかし、地面に落ちた後もすぐにフレッドは僕に怒涛の連撃を加えてくる。


 「お前、ここまで凌げたのか。まあ、どっちでもいい。潰すだけだな」


 「前の僕とは違う…!君とも戦えるはずなんだ…!」


 「それはない。時間の無駄だ、終わらせるぞ」とフレッドは飛び退きながら闇属性のエネルギーを充填し始める。


 そして、そのまま照射するのではなくそのエネルギーを剣に纏わせリーチを伸ばした。


 「行くぞ」とさっきよりも速いスピードでこちらに突進してくる。


 「大丈夫。僕はもう、負けない…っ」


 フレッドの攻撃はその重さを数倍上げていた。凌ぐのでやっとのレベルだ。連撃を避けて飛び退いても着地点にはエネルギーの照射も加わる。倒されるのは時間の問題かもしれない…でも、活路はある…!


 僕はわざと大袈裟に飛び退く。


 「終わりだ。そんな甘い動きで生き残れると思うな」とフレッドは先程のようにエネルギーの照射を行う体制となる。


 僕は着地点近くに残っていた木の残骸を力一杯蹴り、フレッドに急に仕掛けた。


 「な…!」とフレッドは急の転換に一瞬驚いたが、すぐに剣を元に戻して応戦しようとする。


 けど、遅い…!


 「これで…!」と一瞬構えが遅れたフレッドに全力で斬りつける。想像以上の衝撃だったのだろう。こちらの攻撃を辛うじて防いだフレッドは一瞬よろめいた。

 「もらった!」とすかさずフレッドにもう一撃を加えようとしたその時だった。氷の障壁が目の前に顕現した…

 「く、くそ…っ!レイナ…っ!」と一度後退しながら周囲を見渡す。レイナはフレッドの数メートル後ろに立っていた。


 「フレッドが押されるとは思いませんでした。けれど、2体1ではアインさんに勝ち目はないはずです!」


 「さあ、フレッド。片をつけましょうか。アリサさんの班は後はアインさんだけですので…」


 「な…っ!?」そんな馬鹿な事があるのだろうか…あのアリサやカール、ノマールが居てそこまで簡単に倒されるものなのか…?いや、ブラフで動揺を誘ってるのかもしれない…今は目の前に集中するんだ…打開策は…


 「アイン。打開策は存在しないぞ。レイナの守りに俺の攻め、凌げる奴はいない」とフレッドは大剣を構え直し、突撃の姿勢をとった。


 そして、すぐにスッと地面を蹴ってこちらに近づいてくる。間合いに入った瞬間、勢いを乗せたまま大剣を振り下ろしてきた。


 僕は咄嗟にガードしたが、数メートルは吹き飛びそうだった。だが、少し吹き飛んだところで壁に当たった…


 「ガハ…ッ」と急な痛みに意識が飛びそうになる。そして、背中の冷気で全てを察した。レイナの障壁だ…そういう使い方もするのか…


 さらに、吹き飛んだ距離が短い事でフレッドの追撃は容易に届いた。


 「アイン、もう諦めろ。勝ち目はない。時間の無駄だ。」と連撃を加えながら淡々と話してくる。


 「いや、ダメだ…!僕は、誰よりも強くならなくちゃいけない…!皆よりも、誰よりも、もっと、もっとだ!」と力を込めて迎撃を続けていたその時だった。


 僕の大剣が、あの時のように緋く脈動し始めた。そして、急に軽々とフレッドの連撃をいなせるようになった。


 「な、なんだ…この力は…さっきとはまるで…」と動揺するフレッド。一度飛び退き、僕を観察する。


 僕はその隙を逃さない…さっきとはまるで違う音速とも呼べる速度でフレッドに斬りかかる。だが、とてつもないことにフレッドは僕の動きに反応していた。それでも僕は、彼の大剣を軽々と弾き飛ばす。


 「フレッド!落ち着きなさい!」とレイナが幾重もの障壁を展開し、僕の行方を遮る。


 だけど、そんなものは最早障壁ですらない。僕は立ち止まり大剣を横凪する。すると障壁はことごとく霧散し、範囲内だった地面は軽く燻っていた。


 「そ、そんな…」と驚きを隠せないでいるレイナ。

 「くっ…!」と苦い顔をしながら、氷の障壁を階段のように展開して上空に位置を変える。そして、何か合図をしていた。


 次の瞬間、木々をかき分けながら走る音が聞こえてきた。そして、その音の正体であるソーンがこちらに現れた。そして、ソーンが来た方角で大きな地面が割れる音が響いた。


 「ランド1人じゃ凌ぎきれないよ。緊急用の合図を簡単に使うってどういう状況…?」と困惑しながら周囲を確認するソーン。


 この反応から見れる選択肢は2つ。アリサ達はやはり離脱しておらず、あちらでソーン達に抑えられている。もしくは、アリサ達はもう離脱していて、ロイドの班を2人で止めていたか…


 ロイド班のビーコン反応を見たかったが、生憎ビーコンは起動した直後…数分は情報がない…

 どちらにしてもこの3人が僕を逃してくれるわけないし、戦うしかない…


 「ふーん。アイン、強くなったみたいだね。フレッドとレイナを押すとはやるじゃない。だけど、3体1。なんなら私とフレッドの2人の近接を凌ぐのは無理だろうね?痛い思いしたくないなら降参して離脱しなよ」と槍を構えながら告げてくる。


 「いや、君達に僕は負けない。全力で来てみなよ。すぐに終わらせる」と半分挑発を混ぜて煽ってみる。当然だ、アリサ達が倒れていないならここを切り抜けて合流すればかなり有利になる。


 「言うじゃねえか。ソーン、レイナ。一気に行くぞ。合わせろ」とフレッドも剣に闇属性を纏わせ、今にも飛びかかってきそうな形相になる。


 僕が剣を構えたと同時に、ソーンとフレッドが地面を蹴る。

 2人の一撃は重く、速いはずだった。だけど、僕には軽く感じられた。片手で簡単にソーンの槍をいなし、大剣でフレッドの攻撃を防いでしまった。そのまま勢いの残ったソーンを後方に吹き飛ばし、フレッドの大剣を勢いよく地面に叩きつける。


 フレッドの大剣は地面に深く突き刺さった。しかし、すぐに地面が紫色に光、地面ごと爆発する。


 僕は一度飛び退く。そして、体勢を立て直しこちらを見ているフレッドに向かって地面を蹴った。


 あまりにも速い速度にフレッドは付いて来れず、僕が切り抜けた後、フレッドは「ク、クソ…」とそのまま倒れる。


 クリスタルが割れ、フレッドは離脱となった。


 「フレッド!そんな…私の加護を受けていたのにそこまで簡単に…」と驚きを隠せないでいるレイナ。


 「何ぼさっとしてんのレイナ!私に加護を!私がアインを倒す!」とソーンが怒りを隠せないでいる。


 「アイン…どうやったか知らないけど、私には通用しない…!すぐに終わらせるよ…」とこちらを睨みつけている。


 「は、はい!ソーンさん、行きますよ!」とレイナが再び加護を展開する。ソーンに金色のオーラが纏った。


 「じゃあ、行くよ!」と先程とは比べ物にならない速度で僕に向かってきた。


 しかし、ソーンはフレッドよりも力が弱い。フレッドは出力型かつ力を込めた剣戟も得意にしていた。だけどソーンは安定型かつ連撃主体の戦闘スタイル。今の僕には通用しない。


 「ソーン、悪いね。」と簡単にソーンの槍を弾き飛ばし、ソーンを斬り飛ばそうとする。瞬時に加護の代わりに幾重もの障壁が展開されたが、レイナの氷と僕の滾る火では相性が悪い。簡単に貫いてソーンに一太刀入れる。


 「そ、そんな…アインは…どうして…」と驚きを隠せないで僕を見つめながら、膝から崩れ落ちる。そのまま意識を失い、クリスタルも損壊する。ソーンは離脱だ。


 「クッ…!」とその様子を見ていたレイナは後退した。


 僕はとりあえずこの状況を切り抜けた事に安堵した。だが、次の瞬間強烈な反動を受ける。

 力の使いすぎ…見に余る力の顕現…暴走か…


 「ウ、ウワアアア」と立ち尽くしながら痛みに悶絶した。大剣に力を吸われている感覚があった。不味い状きょ…とその時、視界が白くなった…



 気がつくと真っ白な世界に僕は立っていた。少し先に誰かがいるような気がする。どこかから声が聞こえてきた。


 「・・・ー!・・・力を使うのは・・・あなたの・・・を・・・彼の・・・」と途切れ途切れに聞こえてきた。


 僕はこの声に聞き覚えがあった。でも、何も思い出せない…何か大切な事を忘れている気がする…それに、力…?心臓兵器の事か…?僕に何か…彼?あの記憶の人か…?何を忘れたんだ…?


 そんな事を考えていると、次第と視界が開けていく。


 瞬きすると、僕はさっき戦っていた場所に立っていた。身体の痛みももうない。僕の大剣も緋い光を失っていた。


 「そ、そうだ。こんな事してる場合じゃない。レイナを追いかけないと」と僕はレイナが後退した方角へ急ぐ。

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