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12話 秘密の共有

 「ん…こ、ここは…」と目をゆっくりと開ける。僕すると近くに誰かがいる気配がした。ハッキリとは見えないけど、誰かが泣いているみたいだ。僕はどこかで横になっているようだ。


 「え…?ア、アイン!アイン!目が覚めたの!?」とその泣いていた声はとても喜んだ声になった。僕は、何をしていたんだったかな。


 「アイン!アイン!大丈夫?!大丈夫なの!」と僕に何度も声をかけてくれた。僕も意識がハッキリとしてきた。


 視界もハッキリしてきたので声の方を向くと、そこには泣きじゃくりながら座っているアリサの姿があった。


 「アリサ…僕はもう、だいじょ…ん」と言いかけた途端、アリサは僕にキスをした。


 長いようで短い、幸福な時間だった。頭がふわふわとして、永遠の幸福を感じたようだった。


 アリサはゆっくりと口を離し、「アイン…よかった…おかえりなさい」と目に涙を残しながら優しく微笑んでくれた。


 「うん。ただいま」と僕もアリサを抱きしめてそう答えた。




 目が覚めてから2日後、僕は倒れる前の特訓を少しずつ再開しようとしていた。アリサには止められたが、ここで鈍るわけにはいかない。形を変えた僕の心臓兵器。覚えのない記憶で託された言葉…。僕は、強くならないといけない…そんな気がして居ても立っても居られなくなった。


 僕は、新たな心臓兵器を試すために一度魔物を倒してみることにした。僕はアリサとの特訓を中止してもらい、入学試験の会場に向かった。あの場所は弱いながらも魔物が多少いるからだ。とりあえず力を確かめないといけない。


 「アイン。私もいく。アインだけじゃ絶対無理するもん。ダメって言っても行く。」とアリサも怒りながら付いてきてくれた。


 僕達は2人で探索を行った。すると、すぐに猪に似た魔物が何かを貪っているのを見つける。僕は大剣を取り出して魔物の元へ突撃した。


 しかし、取り出した大剣にはあの時のような緋い輝きはなく、鋭い黒岩の大剣となっていた。それでも、猪型の魔物はアインの一振りで簡単に二分され、地面に伏した。


 「これは…。今までの物とは全然…でも、あの光もあの時の熱も失われてる…。初めて僕があの岩剣を見出した時と同じ…。どういうことなんだろう…」とその場でボーっと考えを整理していく。


 この心臓兵器を引き抜いたときに見た記憶の断片…。彼の言葉…あの力…


 そんなことをグルグルと考えていると、アリサが近寄ってきて声をかけてきた。


 「ねえ、アイン?どうしてアインの大剣は形が変わったの?何か知ってる?」とさっきまで怒っていたアリサが不思議そうに近づいてきた。ずっと疑問に思っていたようだ。


 「うーん。僕にもあんまりよく分かってないんだ。ただ、ここ最近、誰かの記憶の断片・・・?を見るようになって。信用してもらえないかもだけど、聞いてくれる?」


 「う、うん。分かった。聞くね」


 「僕は、この世界の命運を握る存在だって。そう言われたんだ。夢だったかもしれないし、現実だったかもしれない。入学試験の日から見るようになった誰かの記憶と強くならないといけない使命感…。これは仮説なんだけどね。僕は誰かの生まれ変わりで、その人の成し遂げられなかった何かを達成するために生まれた存在なのかもしれないんだ」と今までの出来事からずっと考えていた仮説を口にしてみる。あまりにも馬鹿げた話で、到底信じてももらえない突拍子もない話だった。


 だけど、アリサは僕の話を笑うことなく、落ち着いた様子で「アインもあんまり分かってないんだよね。でも、私が見た事。アインの見た事。その話はただの突拍子のない話じゃないって、そんな気がするよ」と僕の話を受け止めてくれていた。


 「笑ったりしないんだね」


 「まあ、目の前で私もあんな光景を見ちゃったからね。案外そうかもって思っちゃうよ。大剣の…儀式?あんなの普通じゃありえない事だもんね」とアリサは苦笑いしていた。


 「でもさ、例え誰の生まれ変わりだったとしてもアインはアインだよね。だったら私は今までと何も変わらないよ。アインはアインだもん」


 「ありがとうアリサ…。アリサにこの話ができて本当に良かった。」と僕ら2人はその日、他の誰にもしない秘密の共有をした。

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