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6話

 当時二人へ突撃した俺は、兎に角考え無しで思った事は直ぐ行動に移してしまう、そんな子供だった。だから空回りを起こして友達も中々出来なかった。

 だから目的の二人を見つけたときは感動のあまり涙を流したし、その後の握手でも嬉しくて更に泣いた。それを目の前で見せられた二人は勿論大慌てになったし、騒ぎを聞きつけて先生が来るほどだった。


 先に知り合うという過程を飛ばしてしまった俺は二人がどんな子なのかを知るために、休憩時間を使って沢山話をした。


 好きな食べ物はなんですか、好きなスポーツは、好きな授業は...


 ふむふむと返事をしながら一つ一つを忘れない様に、メモを取りながら当たり障りの無い事を聞いていた。その姿を見て二人は変な奴を見るような目をしていたが。

 それから二人にも同じ内容で自分のアピールをして、次第に遠慮のない間柄になって。二人の伝で友達も増えていった。


 遊びに誘われた時は嬉しくて、二人の手を引きながらここの公園で遊ぼうぜ!と勢いよく連れ出して。何処にでもいる子供の様に、毎日遊ぶようになった。なんならこの頃に遊びに誘った時に二人の家がお隣同士なのを知った。

 流石にまだ小学生。漫画を見た程度で恋愛というものを把握出来るはずもなく、次第に目的を忘れ二人と遊ぶ日々が続いた。


 そして中学生にあがって、二人が今の容姿になり周囲に人集りが出来るようになった頃。

 友達伝で他クラスにカップルが出来たと話を聞いて放課後にその友達と一緒に見に行って。

 話したこともない同級生達であったが、その二人の表情や雰囲気が、とても儚くて美しい宝物の様に見えた。

 遅まきながらこの時にやっと恋愛という物を他人を介して知ることが出来た。


 この時に、ある光景を夢想した。

 あの物語の世界で結ばれた主人公とヒロインを、佑と朱音で置き換えて。


 そこで本来の目的を思い出した。

 俺は、その手助けとなるべくあの時に動いたのだと。

 そしてその時になって俺はようやく気付いたことがあった。


 俺、二人に引っ付きすぎじゃね、と。

 今までを振り返ると大体三人で居ることが多い。家族間の付き合いまではどうなのかは判断しかねるが、朝の登校時、昼休み時間、放課後と思い返すと殆ど三人でいる。


 こうしちゃいられねぇ!

 即断即決こそ我がポリシー。ちょっと距離を置いて二人を遠くから観察してみようとした。


 結果は、惨敗。わずか一週間の出来事だった。

 登校、休み時間、放課後に言い訳を作って二人きりになるよう仕組んだのだが……。

 いつもの時間より遅れて行けば俺が来るまで二人通路の端で待っている。早く行こうとしても何故か先に待っている。

 休み時間に机で寝た振りをしていれば逆に向こうからお喋りにやってきて。

 放課後は一人で帰ろうと準備をしていたら一緒に帰ろうと約束してくる。


 長年一緒にいたせいで思考を読まれているのか、と考えもしたが俺の夢を教えたことは一度も無いため、行動理由がバレることは無いはず。

 結局こうなった理由は聞いてもはぐらかされるのでそのうち考える事をやめた。


 定番のデートならば!

 俺は街へ服とか家具とか見に行こうと二人を誘い、当日ドタキャンをかました。我ながら二人にデートをさせるためにと最低な事をしたと思ったが背に腹は代えられない。どんなデートをするのやらと家で報告を待っていたが、昼過ぎに俺の家に訪れ二人からの額にちょっと強めのチョップを食らった。

 二人して昼時までは一緒に回っていたらしいが俺が居ないことに違和感を感じ、俺の母さんに連絡を取ったらしくここでドタキャンがバレた。結局俺の家で三人してゲームをする事に。ちょっとどんな感じで回ったのか聞きたかったが、その場では聞けなかった。

 後日、普通に服とか見て回ってご飯食べて終わり。という短い言葉のみのちょっと残念な報告。


 日常での変化が駄目ならば次は学校行事で勝負!

 文化祭では派手さは無かったもののバザーをするクラスもあったことで朱音に手を繋いで二人で回ってみればと提案したものの、俺の言われた通り手を取り合って回り始めたかと思えば、少しして二人が俺の元へと戻り強引に手を繋がれ引き摺られるかのようにして一緒に見回る羽目に。


 ならば体育祭で佑の格好いい所、朱音に見させてほの字にしてやろうじゃん!

 一番目立つリレーのアンカーになるよう佑にお願いし、快く引き受けてくれるかと思えば『俺はヒロにバトンを届けたいな』、と言われ目立たない所で参加しようとした目論見は外され挙句の果てに俺がアンカーになった。この時に何故か女子達は黄色い悲鳴を上げていたが。ちなみに皆の奮闘により無事一位になった。


 やっぱ相応しい場は修学旅行だよなぁ!

 これまた一緒の班になって自由時間の計画を立てるとき、俺は事前に旅行先をネットで調べ、綺麗な風景が映る場所を定めていたので此処に行こうと提案し決定。

 男女混合の四人班であったので佑と朱音、俺と残りの女子で二人二組で少し離れながら回ってみればいつの間にか四人肩を並べて綺麗な街並みを見て過ごした。結局は宿泊先とそのスポットは距離があったからこそっと行けるはずもなくこれは断念したけど。

 就寝前に俺と佑の二人部屋へ朱音が一人で訪れ内心キタコレ!と思いながら外の空気を吸いに行こうと三人で先生の目を掻い潜り。

 ある程度その日の話して眠いからと一人でその場を去りこっそりバレないように二人の元へ戻り見届けよう(変質者)としたり。

 結局関係が進むこともなく、何の成果も得られず。


 修学旅行以上に気が浮かれる場面ってある?と最終日はバスの中で呆然としていたのは今でもはっきりと記憶している。


 受験シーズンに入って、特に行きたい高校など無かった俺は結局二人の希望校と同じ所を選択。二人っきりで勉強させようと一人で勉強する様にしていたがある程度して佑が教えを請い、これまた少しして今度は朱音も。結局三人で勉強会を開く日々が続いた。


 終ぞ二人へ祝福を贈ることは無かった。


 人生上手くいかないことのほうが多いとは良く聞く話ではある。

 俺にとっては出来る限りの事はしようとしたのだが、二人の優しさが返って仇になってしまったな。

 ならば高校からが一世一代の大勝負。同じ轍を踏んではならない。


 是非とも二人には今以上に愛を育み、綺麗で美しく、周りがとても羨むようなラブラブカップルになってほしい。

 あと、結婚式とかに招待してくれたら親友冥利に尽きると思っている。

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