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41話(2)

「ヒロくんヒロくん!明日からの休みで遊び行かない?」


「済まん。蔵元と宮本君とで遊ぶ約束してるから無理だ」


「そっかぁ、残念。どっちも?」


「蔵元の家に泊まるからどっちも予定埋まってるな」


「うぅ〜」


「因みに何処に?」


 本日の授業も終わり放課後。帰る支度を始めた俺の元へ朱音が駆け付け遊びの誘いをしてくれたが、朱音には申し訳ないが俺の休日は既に埋まってしまっている。


「一緒に服でも見に行かないかなって誘おうと思ったんだけど」


「それは女友達と……いや、佑と行けば良いんじゃん。ほら、男子からの忌憚なき意見を貰えるだろうし」


「勿論たすくんも誘うよ〜」


「いいですねぇ」


「え?」


「いや、何でも無い」


 服を見るなら同性で、と思いかけてから佑と行けばデートじゃん、と思い直し理由をつけて提案した俺だったが、朱音はやはり俺に言われずとも佑を誘うようだった。

 街中で歩く二人、お互いに服を着せ意見を出し合ったり、昼食は何で済ませようか、と寄り添いながら歩く風景を想像する。思わず感想が口から零れてしまったが反応した朱音には誤魔化しておく。

 しかし今、朱音は佑()と言ったので他の相手にも誘う可能性があるかもしれない。取り敢えず同性で一番仲が良いと思われる高垣には注意のメールをしておこう。

 そして佑にはまだ土日に予定を伝えていないのでこのまま秘密にしておこう。誘えば絶対にこっちに興味が向くからだ。済まん佑。こんな俺を恨んでも構わない。


『二人にデートしてもらいたい為、朱音のお誘いに注意!!』


『たすく〜ん』、と部活へ向かう準備をしていた佑の元へ朱音が向かうのを見届け、その隙に素早く高垣へと件のメールを送信。

 しかしマナーモードにしているのか俺からの着信に気付かないまま高垣は教室から出ていった。

 俺の目的を知る高垣の事だ。このメールだけである程度の事情は察し出来るだろう。俺はそう信じている。もし高垣が朱音と一緒に行きたかった、というのであれば無理強いはしないが。


 今日は何して時間潰しをしようか、と思考を切り替え取り敢えず何時もの古き良きベンチもといマイポジションへと移動することにした。


『断ればいいの?』


 数分後、帰ってきた返信は疑問の文とクエスチョンマークの付いたコミカルなキャラが載ったスタンプだった。

 伝わらなかったか、と少々悲しい気持ちを胸に詳しく伝える為に内容を送信。


『断る見返りに見たい映画あるから日曜日に時間空けなさい』


「は!?今週じゃないと駄目なの!?」


 すぐに返ってきた内容を見て俺は愕然とし疑問の言葉が出てしまった。周囲に居た生徒が数人何事かと俺は見てきたのでトイレに行くフリをする為その場を立った。


『前みたいに二人と鉢合わせたらまずいんですけど!!』


『ならアンタだとバレないような変装をしなさい。期待してるから』


 今度はよろしく、と描かれたこれまた同じキャラのスタンプを送られ、その後の俺の返信は全て既読無視を決め込んだ高垣。途中から既読が付かない所を見るに携帯すら見ないようにしたのだろうか。


 変装って………マスクとかサングラスとかニット帽で良いですかね高垣さん。


 ☆☆☆☆☆☆


「お邪魔しまーす」


「お、お邪魔します!」


「へいらっしゃい!早速だけど俺の部屋に荷物置きに行こうぜ」


 意外と楽しみにしていた土曜日。

 蔵元は野球部、宮本君は剣道部とそれぞれ部活員であるのと準備もあることから各自夕飯を済ませた後に蔵元の家へ集合となっていた。向かう途中で着替えが入っているであろうバッグを背負った宮本君と合流後、教えてもらっていた蔵元家へ。

 因みに家にあったちょっとお高めそうな茶菓子を母さんに許可を貰い持参してきた。


 インターホンを押せばすぐに蔵元本人が出てきて、促されるままに家の中へ。


「これ、蔵元の両親に渡したいんだけど」


「あ、言い忘れてたけど親父もお袋も外出してんだよ。前から予定してた県外の旅館に一泊するって。これ有り難く貰っとくよ」


「僕からも!はいこれ。それにしても蔵元君の両親は仲良いんだね〜」


「宮本もありがとな。帰ってきたら渡しとくよ。そしてお前ら……」


 蔵元は俺と宮本君からそれぞれ手土産を嬉しそうに受け取った後に、急に真剣な顔つきで俺達を見る。その様子に俺は何だろうか、と思っていたが隣の宮本君は蔵元の雰囲気に緊張しているのか唾をゴクリと聴こえるほどに飲み込み、続きを促していた。


「今夜は寝かせないぜ!!」


「部屋に案内してくれると有り難いな」


 バチコーン!と力強い擬音が付きそうなウィンクで俺達にそう宣う蔵元。そして無慈悲な一言で切り捨てた宮本君。


「新藤みたいな冷たい対応すんなよ宮本〜」


「は?俺もっと優しいだろうが」


「寝言は寝て言え」


「今日は寝ないから寝言は言えませーん」


 もし相手が俺達じゃなく、彼女若しくは仲の良い異性が相手であったのならば一夜の過ちを犯してしまいそうな絶好のチャンスとなっただろう。


 だが俺達は男なんだ蔵元。その言葉を俺達に言っても意味が無いんだ。済まない。


「何で可哀想な奴を見る目になってんだテメェ」

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