第7話 マザーとの邂逅
「こんなところまで連れてきて、いったい何があるって言うんですか?」
運命の日の前日。
祈達が寝静まった頃を見計らって、グレイに呼ばれ寝所を抜け出してきた葉一が同じエレベーターに乗るグレイに問い掛けた。
「キミが知りたかったものさ」
「え?」
チーン、という音がした。それは最下層に着いた事を示す鐘の音。ドアが左右に開き、グレイが外に出る。訝しげに思いながらも、葉一はグレイの後ろを付いて行く。
足元は無数のケーブルが敷き詰められており、非常に歩き辛い。足場の悪い中、スイスイと進んでいくグレイの足がある所で突然止まった。
「マザー、彼を連れて来ましたよ」
「……マザー?」
『グレイ、ご苦労様です。下がって良いですよ』
「承知しました。葉一君、用が済んだらエレベーターに乗って戻ってくるといい」
展開に頭が追い付いていない葉一を余所に、グレイはマザーに言われるがままその場を去っていく。
残されたのは、依然置いてけぼりの葉一と柱の機械マザー――否、マザーコンピューター。
「貴方は、何者ですか……?」
『その答えを、貴方は既に持っている筈』
マザーの言う通り、葉一はなんとなく解り始めていた。グレイの言動から目の前の存在が何者であるかを。
「〈アズグラッド共和国〉の影の権力者、ですよね」
『気付いていましたか』
「何故僕をここに連れて来たんですか?」
『そろそろ良い頃合いだと考えたからです。貴方が真実を知る事のね』
「っ」
マザーの合成音声か、それとも言動か。どちらかは分からなかったが、葉一にはどこか不気味な気配を感じ取っていた。
『私の起源は〈械鋼歴〉42年――今から八百年前に意思を持つスーパーコンピューターが共和国にて発掘されました。それこそが、この私なのですよ』
「〈械鋼歴〉42年……よんじゅう、にねん、だとっ⁉ まさか、そんな偶然が……⁉」
葉一に電流が走った。まるで点と点を結ぶように、マザーが口にした起源の年と葉一の記憶にあった年数が結合する。
『偶然ではないとしたら……?』
「まさか、まさか……そんな馬鹿なっ」
葉一の脳が今までにない程に回転し始める。脳の回路が焼き切れそうな程の熱さを覚え、突然視界がカッと弾けた瞬間、葉一はある答えに到達した。
「――……まさか、貴方と〈皇御国〉の精霊が同一の存在だって言うのか……?」
『そうです』
葉一は自分で言っていて、頭がおかしいと思った。
そんな馬鹿げた話があるのかと。しかし、そんな希望を否定するかのように肯定されてしまう。
『そして私は貴方の……』
続けて、畳み掛けるように合成音声が流れた。
『――○○○なのですよ』
「っ⁉」
その言葉を聞いた瞬間、ドクンッと心臓が鼓動した。
頭が真っ白になったかと思えば、突如として数え切れないほどの映像の数々が脳裏に蘇っていく。
「あの時思い出した僕の記憶……やっぱりそうだったのか。僕は、いや私は――――」
次回第3章エピローグ、明日(2/7)の18時に投稿します。




